上半身の自重トレーニング種目を紹介します。上半身は下半身に比べると日常生活での必要性は低くなりますが、ものを取ったり、持ち上げたり、パソコン作業をしたり、大小様々に使われています。上半身のトレーニングをすることで、日常生活をより快活に行えるように目指しましょう。

上半身のトレーニングは必要か?

私たちの身体は全身のバランスが整って普段の機能を発揮しています。例えばものを持ち上げるときなど、上半身で対象物を持ち上げながらも下半身で身体が傾かないよう支えています。逆に階段を登るときなど、下半身を中心に活動をしていても、前傾した大勢を上半身が支えています。このように日常の機能において下半身と上半身は連動しているため、上半身と下半身のバランスを取りながらトレーニングを進める必要があります。女性であれば下半身中心のトレーニング、男性であれば上半身中心のトレーニングになりがちなのですが、トレーニングレベルが向上したときに、どちらかが弱ければそれ以上筋力を伸ばすことが難しくなります。いずれバーベルスクワットをした際に脚力では問題なく持ち上がりそうだが、しゃがんだときに腹筋と背筋でバーベルの重さをキープすることが出来ずうまくしゃがめないといった現象がよくある例です。

このように、私たちの身体の根本的な機能として上半身と下半身どちらもバランス良く向上することが必要であり、美の観点から見たときも「美は機能の先にあるもの」であるために、まずは私たちが幼少期の頃に持っていた基本的な運動機能を取り戻し、日常生活において不便がないよう高めていき、機能を高めた先に美しさがあります。もしもあなたが幼少期に100mを走ることが出来ていたとして、現在病気や何らかの疾患がなく、健康であるにも関わらず100mを全力で走ることが出来ないとしたら、それは走る機能を失っていると言えます。ですが、もしもそうだったとしても悲観をする必要はありません。ほとんどの大人がそうであり、子供の運動会で急に全力を出して怪我をしてしまう大人というのは定番で、便利な現代に生きるからこその代償ですが、大人になっても充分な運動機能を持っている人は圧倒的に少数です。しかしながら、美は機能の先にあるものです。大人になって身体のプロポーションが整っている人がごく少数であるのは、大人になって充分な運動機能を持っている人が少数であることと理由は同じです。

上半身を鍛えるとゴツゴツするのではないか?

女性にとって下半身のトレーニングをすることは受け入れやすいものですが、どうしてもダンベルトレーニングや腕立て伏せなどの上半身のトレーニングは男性がするものといったイメージがあり、なかには上半身のトレーニングを敬遠する人もいます。また、筋骨隆々な人が腕立て伏せを好んで行う世間のイメージも相まって、なんだかそういった上半身のトレーニングをすると、自分自身もごつごつとしたマッチョになってしまうのでないかという心配も上半身のトレーニングを敬遠しがちになる理由かもしれません。ですが安心して下さい。対象とした筋肉を大きくするためには、自分が発揮できる限界筋力に限りなく近いトレーニングや徹底した食事管理など難易度が高いものなので、どんなに筋肉が付きやすい遺伝子を持っていたとしても細くなっていくのが自然です。

自重での上半身のトレーニングは運動能力の回復を主に意図しており、日常的な動作が難なくこなせるようになることで、姿勢が良くなったり、首がスラットまっすぐになったり、肩こりや腰痛と無縁の生活になることを目指しています。苦手意識のある方も少なくないので前置きが長くなりましたが、上半身トレーニングのメリットをお伝え出来たところで、具体的なトレーニングメニューをご紹介します。

上半身の種目①プランク

上半身の種目(別種目)として、最初にオススメしたいのが「プランク」です。いわゆる体幹部のトレーニングであり日常のあらゆる動作が安定して行えるようになります。やり方は、うつ伏せの状態で、前腕と肘、つま先を地面につけて、体を浮かせた状態でキープします。

最初は細かなことは気にせずに、ただこの体勢を取っていればOKです。30秒ほどを目標にやってみましょう。

実際にやってみると、だんだんお尻が下がってきたり、膝がさがってきたりとバランスを崩していき、どのポジションが正解なのだろうかと思うはずです。そうしたときには、まず一番自分がちからの入りやすい姿勢や角度を探してみて下さい。腕のベストはおそらく上腕が垂直に床に向かっているときで、そのまま身体を一直線にキープして足のつま先を若干曲げ着足し、足の位置は腕と同じ幅からやや広めにすると安定し、広すぎても疲れます。お腹が下がると腰に負荷が掛かり、腰が痛くなりやすいので、お腹は下げないようにキープし、疲れてきたときには下げるよりもお尻をあげてしまうほうが案外楽で身体にも優しいです。最初は数秒でノックアウトしたとしても続けていくうちに長く出来るようになります。腰を痛めないためにも無理なく続けていくことが重要です。いずれ3分から5分程度出来るようになると良いでしょう。余談ですが、プランクの世界記録は9時間30分で28歳の腕に複合性局所疼痛症候群(CRPS)という疾患のある男性で、その前任は8時間15分でなんと62歳で樹立したそう。すごい人もいるものですね。

このトレーニングは床でやってみると手が痛くなるので、ヨガマット(フィットネスマット)を購入することをオススメします。タオルでも代用出来ますが、滑ったり使い勝手がいまいちなので、長い目で見て購入したほうが良いです。オススメは幅広タイプ60cm〜程度で厚み10mm以上あるものが使いやすいです。どうしても狭いと他の種目の際に足が出てしまったりすることが多く、厚みが薄いとやはり手が痛くなったりします。

上半身の種目②プッシュアップ

次に紹介する種目は「プッシュアップ」いわゆる腕立て伏せです。この種目は、現在どのレベルまで出来るかによって意識するポイントが変わってくるので、小さなステップから順を追って説明します。読んでみて「この部分は出来るぞ」と感じた所は軽く読み触っていただければ充分です。

STEP 01 ボトムポジション

はじめに、プッシュアップの下げきった状態のポジションを作ります。立った状態で手のひらを正面に向けます。そのまま肘を引いて手のひらが最も後ろに下がる位置を探して下さい。次に壁や冷蔵庫などを使って、立ったまま手のひらと胸を同時に付けてみましょう。手のひらと胸を同時に付けようとすると、肩甲骨を寄せる必要があることが分かります。その手の位置や身体の使い方を覚えておきましょう。

このボトムポジションは床面においても練習することが出来ます。まずはうつぶせで寝てしまいましょう。その状態から腕立て伏せのボトムポジションのように、手のひらを床に付けます。このとき手の中指が正面かやや外側に開くかのどちらかとして、自分の手のひらが無理なく自然と床に付けられる角度を探します。そして前腕を床に対して垂直になるように肘を張っていきます。壁面で行うよりもこちらの床面でボトムポジションを取るほうが前腕の角度が正確に垂直になるように探しやすいです。こちらでも先ほどと同じように、ポジションを取ろうとするとき自然と肩甲骨を寄せる必要があります。ポジションが出来たら軽くあごを引いてこの位置と身体の感覚を覚えておきましょう。イメージとしてはトップポジションに上げたあとは、今覚えたボトムポジションに向かって降りていくイメージです。ボトムポジションの形は忘れがちなので、崩れないように何度か練習しておくと良いでしょう。

ボトムポジションは、つまり物を思い切り腕で押す動作と同じです。最もちからの入る手の高さは胸とへその真ん中くらいで、ちょうど「小さく前にならえ」をしたときの手の位置と似ています。よく間違われやすいポイントとして、手の位置が肩と平行になるほどに上げて腕立て伏せをするフォームを初級者において特に見られます。腕立て伏せの際に手の位置を高くするほどに、肩の三角筋や首の僧帽筋にちからを代償運動させて行うことになるので確かに身体は持ち上げやすくなりますが、腕の筋肉をねじりながら全力で床を押す形となるために回数を重ねたときや、負荷を大きくしたときに肩や肘、手首の関節に負担が掛かってしまいます。充分な筋力がないと正確なフォームでボトムポジションに降りることが出来ませんが、腕立て伏せが出来ることよりも、腕立て伏せの運動を通じてボディラインが整うことが重要ですので、出来ないからと肩を上げて無理に代償して腕立て伏せを行おうとせずに、順を追って正しいフォームで出来る基礎筋力を身に着けていくことをオススメします。

STEP 02 膝つきプッシュアップ

まずは膝を着いた状態でプッシュアップしてみましょう。プランクの姿勢から膝を付き、先程のボトムポジションを思い出してその位置に身体を降ろしていきます。意識として腕だけで支えないように背中と腕で負荷を分散しましょう。前腕と上腕が90度に曲がったときからさらに下げるときには、肩甲骨周りの背中の筋肉を寄せることで体重を受けるように練習します。そしてあげる際には反対に、肩甲骨周りの背中の筋肉を動かしてから、徐々に腕にちからを入れて状態を起こします。この腕が曲がっていく局面から支えられない方は多く、それは筋力というより背中を上手に使う感覚が分からないことにあるので、ボトムポジションでは肩甲骨がぐっと寄っていたことを思い出して、徐々に背中に負荷を分散して降ろしていきます。

この膝つきプッシュアップが出来ない方は、まずは膝つきプランクの体勢からボトムポジションに向かって出来るだけゆっくりと身体を降ろし、そのまま床に倒れ込みましょう。ゆっくりと身体を降ろす際に背中や胸や腕などの必要な部位に負荷が乗るので、まずは倒れ込みから練習しても繰り返すうちに上げられるようになります。

ちからの流れをイメージしてみましょう。プッシュアップはつまり床を押しているわけなのですが私たちがものを押すとき、例えば立った状態でのことをイメージしてみましょう。私たちの腕の起始部(筋肉のはじまり)は、背中の肩甲骨からはじまっています。腕で押すイメージを肩の下からと考える人は多いのですが、腕は背中の肩甲骨の近くからあるイメージを持って下さい。ものを押すという行為は、まず背中の肩甲骨まわりの筋肉を押し、次に上腕を押し、前腕を押し、最終的には手にちからが伝わります。この背中からプッシュするイメージが上手に出来るようになるとプッシュアップの習得は早くなります。少々余談になりますが、このちからのイメージはいずれ習得するプル動作(ものを引く)際にも同じことが言え、ものを引き持ち上げる際には腕だけでなく背中から動かすと楽に持ち上げられるようになります。

STEP 03 傾斜つきプッシュアップ

ベンチや台など傾斜をつけてプッシュアップをします。膝つきよりも軽く上がるので、動きのタイミングやプッシュアップの感覚を養うのに効果的です。手をつく部分は台が動かず安定しているか、手が滑ってしまわないか充分に安全を確認してから慎重に行いましょう。ジムに行ったときにはトレーニングベンチなどを利用するのが安全です。

STEP 04 プッシュアップ

実際に膝を立ててプッシュアップをしてみます。ボトムポジションでは顎を引いて床に身体を近付けます。背中が落ちないように一直線にキープして、プランクの時と同様に疲れた際には、降ろすよりもあげてしまいましょう。肘を伸ばしたときには完全に伸ばしてしまうと関節を痛めやすいので垂直の少し手前で85度くらいのイメージを頂点にします。もし腕立て伏せが1回出来れば、日々繰り返すうちに2回、3回・・・10回と出来る回数が増えていきます。

プランクの状態をイメージすると分かるのですが、プッシュアップは腕や胸だけでなく、足や背中まで使う全身運動です。下半身においてスクワットが基本となるように、上半身においてプッシュアップが基本となります。最初は出来なくても続けていけば必ず出来るようになるので、地道に取り組み続けることが重要です。肘や腰を傷めないように焦らずじっくりと進めましょう。

OTHER プッシュアップバー

日々、プッシュアップを推進しているとだんだんと手首が痛くなってくることがあります。女性であれば体重が軽いので男性に比べると少ないものですが、それでも長期的に見るとトレーニングはほとんどの種目で手首を使うので、出来るだけ安静にしておくことも大切です。そういった観点からプッシュアップバーを使うことも検討してみましょう。ちょっとトレーニングに興味があるという方はまずは床で問題ありませんが、本格的にトレーニングをしてボディメイクを長期的に考えている方は、必須で持っておきましょう。一度手首を痛めると上半身のトレーニングのほとんどが完治するまでストップします。高価なものでないので、ひとつ持っておけば安心です。プッシュアップバーを選ぶ際には、壊れやすいプラスチック製のものでなく、鉄製や強度のある安定したものを選びましょう。また、傾斜のあるタイプとないタイプがありますが、傾斜があるとのちのち使いにくくなるので、傾斜のないタイプがオススメです。

ボディメイクの心構え

世を見回してみると、「たった◎◎分で痩せる」「これさえ食べていればOKサプリメント」など、簡単で手間なく、手軽にはじめられるもので溢れています。それらを否定するつもりはありませんが、それらはどこかの会社のマーケティングの一旦であり、誰かの利益の為に歌われていることは知っておきましょう。そしてそれらがどれだけあなたの身体に合っているかは、もしくは合っていない、それとも効果が一時的、ないものであるかは、これまでのあなたの人生を通じて掴んできているものだと思います。

人生で本当に実現したいことがあるときには、それに対して正当な時間と労力が必要です。ことボディメイクは食事、運動、睡眠(回復)の積み重ねでしかなく近道はありません。少し手間が掛かりますがサプリメントやドリンクよりも出来る限りリアルな食事を中心とするべきでしょう。食事を抜くダイエットに頼るのでなく、トレーニングをしてエネルギーを消費しながら快活にアプローチすれば、ビタミンやミネラルが不足することもありません。それら食事法と運動法を活かすために適切な睡眠も重要です。あなたの献身、努力、時間はあなたの積み重ねとなり、汗や涙は決してあなたを裏切りません。ボディメイクにおいて「継続力」こそがすべてであり、だからこそ美は尊いのです。もしかするとあなたの理論や方法に何か意見を言う人はいるかもしれませんが、あなたの積み重ねた経験を否定することは誰にも出来ないものです。あなたの歩んだプロセスを信じ、プロセスを通じて自分を信じて、あなたの理想の実現に邁進しましょう。人生の魔法は、努力を避けることでなく、その努力を楽しむことです。

まとめ

全身の筋力をバランス良く成長させるのが大切

全自重トレーニングで過度に筋肉質になることはない

プランクで体幹を安定させよう

プッシュアップは段階を追って習得するといい

ボトムポジションを作りその位置に降りていく

繰り返すうち出来るようになるから焦らなくてOK!