大殿筋は人体最大の筋肉で機能とともに見た目に与える影響も大きいものです。丸みのあるお尻は佇まいから色気を演出し、お尻を鍛えれば男女ともモテると言われるほど色気にも貢献しています。お尻について詳しく知っていきながら理想のヒップラインをつくる方法を探っていきましょう。

お尻の解剖学

お尻は人体最大の筋肉で、代表的なものは「大殿筋」です。中殿筋や小殿筋といった筋肉やその他いくつもの筋肉で構成されており「臀筋群」と呼ばれています。トレーニングとして主に狙っていくのはお尻全体に跨ぐ「大殿筋」と、側面の張り出しを担う「中殿筋」です。まずは臀筋群の解剖学から知っていきましょう。

大殿筋について

大殿筋の起始部は、骨盤の皿をなす骨である腸骨稜から仙骨の腸骨近くの後面、腰背筋膜に起始しています。停止部は、大腿骨の殿筋粗面、腸脛靭帯に停止しています。大殿筋の主な働きは、股関節の伸展、股関節の外旋、股関節の内転の補助、骨盤の後傾です。神経支配は下殿神経(L5、S1・2)が司っています。

筋肉の起始停止について

起始部、停止部について簡単に解説すると、筋肉は関節を跨いで骨に着いています。そのため筋肉が縮むことによって関節はてこの原理でちからが伝わり、動いています。このうち筋肉の動かない側を起始部、反対に縮む側を停止部といいます。関節が動く作用は、筋肉の停止部が起始部に向かって縮むちからによって実現されています。

また、トレーニングを行うにあたって詳しい起始停止や神経支配などを丸暗記する必要性はありませんが、どこからどこに向かって着いている筋肉なのかをイメージすることで、インターナルフォーカスで意識する位置が分かったり、起始停止の場所から推測し筋繊維の向きに沿った動作にすることでトレーニング効果をアップさせたり、狙った筋肉の主な働きとなる動きに負荷の方向性を合わせることでトレーニング効果をアップさせたりと色々と応用が効くようになります。

中殿筋について

次に中殿筋を見ていきましょう。中殿筋はの起始部は腸骨稜後面にあり、大腿骨大転子の外側面に停止しています。中殿筋の主な働きは、股関節の外転と、股関節の外転位に伴う股関節の外旋の際に働いています。神経支配は上殿神経(L4・5、S1)が司っています。

小殿筋について

小殿筋は、腸骨の外側、中殿筋の起始のすぐ下に起始し、大腿骨大転子の前面に停止しています。小殿筋の主な働きは、股関節の外転と、股関節の外転位に伴う股関節の内旋です。神経支配は上殿神経(L4・5、S1)が司っています。

臀筋群の姿勢への貢献

お尻の筋肉は美しい姿勢を保つために重要な役割を担っています。姿勢といえば背中と思われがちですが、実のところ重要なのはお尻の筋肉です。

人間と似通った骨格筋を持つ、サル、ゴリラ、チンパンジー等は皆猫背で活動しています。人間のように完全に直立することも可能ですが、長時間その姿勢を維持することは出来ません。人間と比べてサルなどは、大殿筋をはじめとするお尻の骨格筋が小さいからです。大殿筋が大きく発達しているのは、直立を基本とする人間だけで、これはお尻の筋肉が直立姿勢に最も重要な要素であることを示しています。

パーソナルトレーニングの現場でも、お尻のトレーニングをしてお尻がしっかりと活動するようになると自然と姿勢が良くなることは多々あります。ちょっとした雑学ですが美しい姿勢づくりにお尻は欠かせないということですね。

大殿筋はどの局面で働くか?

殿筋群の最も大きな筋肉である大殿筋は、どのような動作の局面ではたらくのでしょうか。2001年にアメリカのネブラスカ大学で行われた研究によると、様々な股関節角度(股関節つまりお腹と脚の角度)において、大殿筋の活動を測定したところ、股関節角度が90度のときには全体の荷重の60%ほど、そこから60度になると80%で股関節角度が0度に近づくに連れて、大殿筋の活動が最大化しました。これは、先の直立時に大臀筋が大きく関わることと同じ結果です。

下半身のトレーニングで代表的なスクワットでは、重力と動きの関係で股関節角度が90度に近い屈曲位で負荷が最大化し、そこから直立に向けて負荷がかからない状態になっていきます。しかしながら、ヒップスラストでは動作の最初から最後まで重力の方向と大殿筋に負荷が掛かる方向が一致しているため、ヒップスラストがお尻に効くと言われる所以でしょう。お尻を最優先でトレーニングする場合には、ヒップスラストの優先順位は高いと言えます。

ヒップスラストの解説

ここから大臀筋のトレーニング方法を見ていきましょう。ヒップスラストに代表される股関節の伸展動作では、脚を30度程度開いたときに大臀筋の活動が最大化したことが確認されています。そして脚の開く角度が15度から0度(閉じる)に向かっていくに連れて、大殿筋の活動は低下し反対にハムストリングスの活動が高まっていきました。これは筋繊維の向きに起因する可能性が高く、大殿筋は腰の上部から脚の外側に向かって斜めに着いているため、脚をある程度開くことで動作の向きと筋繊維の向きが揃い活動が活発になると考えられます。逆にハムストリングスは身体に対してまっすぐであるために、脚を閉じていくとハムストリングスの筋繊維と動作の向きが揃うことでハムストリングスの活動が高まっていきます。ですので、ヒップスラストでお尻を狙う場合には脚を開き、ハムストリングスを狙う場合には脚を閉じるようにすると良いでしょう。

ヒップスラストは上の写真のようなトレーニングです。まずバーベルにプレートを設置します。するとバーと床との間に隙間が出来ます。その隙間に身体を潜り込ませてベンチ台など安定して動かない台に背中の肩甲骨あたりを載せます。脚が動かないよう踏ん張りを確認したら、股関節の伸展動作で重さを持ち上げます。床にバーベルをおいて行う「床引き」が最も可動域が広く効果が高いですが、準備が簡単なパワーラックやスミスマシンなどで行う人が多いです。ヒップスラストでは収縮時に負荷が最大になる種目です。足やお尻のトレーニングで代表的なスクワット系トレーニングはストレッチ時に負荷が最大になるので、収縮の負荷とストレッチの負荷どちらも得るようにすると良いでしょう。

上の写真左図(スマホ版は1番目)がパワーラックで、右図(スマホ版は2番目)がスミスマシンです。パワーラックは左右のセーフティーバーの高さが変えられるため、もし重くなって挙げられなくなっても左右のセーフティーバーにバーベルが乗るため安全です。スミスマシンは左右のセーフティーバーを引っ掛けることでバーがそれ以上下がらないようにすることが出来ます。さらにバーがラックと一体になっており、上下の軌道は縦の支柱でガイドされているためにバランスを取る必要がありません。最初はもっとも動作が簡単なスミスマシンからはじめると良いでしょう。しかしながらジムに設置されているスミスマシンによってはセーフティーバーの下限位置が高い器具もあり、どれだけセーフティーバーを下げてもバーがお腹まで下げられず、ヒップスラストが出来ないパターンがあります。その際には、諦めてパワーラックで行うようにしましょう。

お尻を狙ったスクワット

次にお尻を狙った場合のスクワットについて見ていきましょう。先程のヒップスラストでの脚を開く法則はスクワットにおいても同様で、足を閉じずある程度開いている方が大臀筋に有効です。さらに、スクワット動作を安定させるという意味で30度よりも大きく45度や60度あたりまで脚を開く人もいます。このあたりは、股関節の柔軟性によってちょうど良い角度に個人差があるので、脚を開きながらも自分がもっとも踏ん張りやすいちからの出る足幅を探してみて下さい。限界少し手前まで脚を開くいわゆる「スモウスクワット」では、股の付け根にある内転筋が優位になってしまうため、お尻を狙う際には過度に開きすぎないようにしましょう。

パワーラックでスクワットをする際には、バーにウェイトをセットして背中に担ぎ、ゆっくりと2歩後ろに下がります。そしてお尻を後ろに引きながら太ももが床と平行になるまでお尻を床に近付けていきます。動作に慣れるまではバーだけで行いましょう。しゃがむ際のポイントとして、膝を前に出すようにしゃがむと膝関節や前腿に負荷が集中してしまいます。お尻に負荷を乗せるためには、出来る限りお尻を後ろに引きながらしゃがみます。すると、お尻の筋肉が引っ張られながら負荷がしっかりとお尻に乗ります。スクワットでしゃがむ深さは、本来であればしゃがみきれるところまでしゃがむ「フルスクワット」が動作として正しいのですが、トレーニング初期の頃では完全にしゃがんでしまうと骨盤がくるりと後傾してしまうことがあります。骨盤が前傾のまま保てる方は大丈夫ですが、骨盤が後継してしまう方はその手前までの深さにするようにしましょう。骨盤が後傾するとお尻の負荷が抜けてしまいます。お尻に負荷が最大限乗った位置で止めることが大切です。

また、スミスマシンで行う際には、脚を大きく前に出して体重をスミスマシンに預けた状態で行ういわゆる「ハックスクワット」にすると、前腿の関与が減少するため、お尻への効きが向上します。脚を大きく前に出す特性から地面を斜めに押すこととなるため、あまり大きな重さを持てる動作ではありません。よって通常のスクワットと合わせ別メニューとして行うようにすると良いでしょう。

ブルガリアンスクワットの解説

大殿筋には片足立ちの際に働きやすい特性があります。両足の種目と合わせて片足種目を取り入れるとしっかりとお尻に負荷を掛けることが出来ます。代表的な種目がブルガリアンスクワットです。写真のようにまずはベンチや動きにくい台などを準備します。次に片足をベンチの上に乗せて、もう一方の脚を太ももとふくらはぎが90度になる程度の位置まで離します。上半身が前傾すると膝に負荷が集中してしまうため、お尻に負荷が乗るよう上体を後ろに反らし続けるイメージで前傾しないように注意します。そのままお尻を床に近付けていき、フォームが崩れない範囲で最も低い位置まで下げ、折り返してもとの高さまで上げ戻ります。ベンチにあげる脚の向きは、最初は脚の裏をベンチに乗せるとバランスが取りやすいため良いでしょう。動作に慣れてきたら脚の甲を乗せて行うようにしましょう。

自重でのブルガリアンスクワットが出来るようになったら、両手にダンベルを持って負荷を調整します。ダンベルだと片手10kg〜15kgも持つとバランスが取れなくなって来るので、最終的にはスミスマシンでバーを担いでブルガリアンスクワットを行います。スミスマシンであれば自分に合った負荷を調整出来ますし、バーが安定しているために自重よりもバランスが取りやすいメリットがあります。片足ずつ行うためもう片足は休んでいられます。比較的テンポよく進められる種目です。

お尻上部の厚みをつくる

ここまでは臀筋群全体へのアプローチでしたが、ここからは細かくお尻の部位別に鍛え分けを見ていきましょう。まずはお尻上部の厚みをつくるための、バックエクステンションです。写真のようにバックエクステンション用の台に身体をセットし、お尻のちからを意識しながら上半身を持ち上げます。負荷の調整にはプレートやダンベルを抱えて行います。お尻のトレーニング初期の頃は、大殿筋への神経伝達が未熟なためにお尻を使って身体を持ち上げる感覚が分からず、背中や腰ばかり疲労してしまうこともあります。その際には、バックエクステンションのトレーニングであまり追い込み過ぎずに、大殿筋全体へのトレーニングを続けていくことで、神経が発達し自然とお尻上部を使って身体を持ち上げる感覚が習得できます。

お尻上部を鍛えることが出来るオススメ種目がもうひとつ「ケーブルキックバック」です。写真のようにケーブルマシンを活用します。ケーブルマシンは、ケーブルの持ち手側を引っ張ることで、もう一端の重りが持ち上がって負荷を与えることが出来るマシンで、多くのジムに置いてある定番のトレーニングマシンです。このケーブルマシンは普段は手で引っ張るようになっているのですが、手の部分を外し足首にぐるりと巻き付けるアタッチメントが置いてあります。そちらに付け替えて足首にセットします。

写真のように片足でバランスを取る準備をして、マシンのどこか安定する場所を掴んで身体を支えます。その状態から、負荷の付いた脚を後ろに高く蹴り上げます。動作に慣れるまでは軽いウェイトで行い、転ばないように気を付けて行いましょう。後ろ足を高く持ち上げ、水平面以上になった局面からお尻上部に効きはじめます。ですので、安全な範囲で脚を高く持ち上げようとすると効果があります。無理に脚を上げようとすると身体が横向きに開いてしまうため、あくまで正面を向いたまま、脚を高く持ち上げていきます。片足立ちの特性上、あまり重いウェイトを付けられないので、10〜20回と回数を多めに行い、最後のレップまで丁寧に後ろ足を蹴り上げるようにすると、お尻上部にしっかりと効く感覚が分かるでしょう。

お尻下部の引き締めとヒップアップ

お尻下部の引き締めには、まずルーマニアンデッドリフトが代表的です。写真のように、バーにウェイトを付けて持ち上げる「デッドリフト」というトレーニング種目のなかでも「ルーマニアンデッドリフト」は膝を軽く曲げた状態をキープしたまま、お尻と腿裏のちからでバーを持ち上げていきます。お尻下部への貢献が最も高いトレーニングではありますが、間違ったフォームで行うと腰を怪我するおそれがあります。デッドリフト種目を行う際には、最初は必ずトレーナーにフォームを細かくチェックしてもらいながら行うようにしましょう。慣れてくれば、お尻下部の最強種目です。

その他にもお尻下部にオススメの種目があります。まずは「レッグプレス」です。レッグプレスは、レッグプレスマシンを用いて行います。ウェイトを乗せた台に脚を乗せて、膝が胸に付いた状態から一気に脚を蹴り上げて台を上に持ち上げます。レッグプレスマシンには2種類のタイプがあり、写真のように下から上に持ち上げるタイプと、水平に押し出すタイプのレッグプレスマシンがあります。

下から上に押し出すレッグプレスマシンは、プレートを台に設置された棒(シャフト)に設置して行います。重いプレートを何枚も付け外す必要があり準備が大変です。一方で、水平方向に蹴り出すマシンはスタックと呼ばれる「ピン」を重りに抜き差しするだけで重さの変更が出来るため、ほとんどのジムで水平方向のレッグプレスマシンが採用されています。しかしながら、お尻を鍛えようと思ったときには、より股関節が屈曲してお尻がストレッチされる下から上に押し出すレッグプレスマシンが圧倒的に優位です。そのため、この下から上に押し出すレッグプレスマシンを求めて、女性トレーニー達が本格レッグプレスマシンのあるジムを探し回る現象が多発しています。もしお近くのジムにあればラッキーですね。

水平方向のレッグプレスマシンでも少しコツをつかめば、お尻下部に効かせることが出来るのでその方法をご紹介します。まずは台に乗せる脚の位置を高い位置で脚の幅を大きく開くように脚を置きます。このときつま先は外側に開いているようにしましょう。そして通常のレッグプレスと同様に重さを蹴り上げます。蹴り上げる際にはどうしても大腿四頭筋中心になってしまいがちなのですが、意識としてなるべくお尻のちからを動員するように意識しましょう。そして、蹴った脚を戻して胸に付けるまでが本番です。この戻す側の動きであるネガティブの動きの際に、出来るだけ負荷が抜けないようにゆっくりと耐えながら脚を胸に近付けていくことで、お尻がストレッチされながら負荷がかかります。つまりは、水平レッグプレスの際には、脚を高い位置にセットすることで、ネガティブ時にお尻下部に刺激を与えることが出来るということです。中上級のテクニックなので、これをやっている方がいたらトレーニングに慣れていて、お尻を重視しているのだと分かります。

また、先に紹介したヒップスラストを片足で行う「シングルレッグヒップスラスト」もお尻下部に刺激を与えることが出来ます。こちらは、自宅でも出来るトレーニングなので重宝します。負荷の調整には、バーベルだとバランスが取れないので、ダンベルやプレートなどをお腹の上に置いて行います。こちらも大きな負荷が掛けられる種目ではないため、10〜20回と回数を多めに行うようにしましょう。

お尻側面の張り出しをつくる

次にお尻側面部の張り出しについて考えていきましょう。お尻側面を担っているのは中殿筋や小殿筋で、主に中殿筋を狙ってトレーニングをしていきます。まずは「ヒップアブダクション」です。これは、ヒップアブダクションマシンで行います。まずはマシンに座りスタックピンのウェイトをセットします。骨盤を前傾させて上体を前に倒しながら背中を反ります。こうすることでお尻をしっかりと張り出した姿勢になります。その状態からお尻のちからで脚を開き、しっかりと広げてゆっくりと閉じます。開く際と閉じる切り返しのときに、お尻の負荷が抜けないよう意識して行いましょう。

また、ケーブルマシンを使った「ケーブルアブダクション」もお尻側部をトレーニングすることが出来ます。基本的なやり方は、ケーブルキックバックと同じです。アンクルアタッチメントを足首にセットして、片足立ちになりバランスを取れるようマシンを掴んで、身体に対して真横にキックするか、もしくは状態を倒し気味にして少しだけ後ろにキックすると、しっかりと脚をあげきることが出来ます。

まとめ

お尻は人体最大の筋肉ということもあり、鍛えるとすぐにヒップラインが変化することも多いのでモチベーション高く取り組むことが出来る部位です。エネルギーの消費も最大であるため、トレーニング前の食事とトレーニング後の食事をしっかり取って休むことを忘れないようにしましょう。無理なく続けていき、理想のヒップラインを目指していきましょう。

お尻は身体を直立にするときに使われる為ヒップスラストが有効

お尻は部位別に鍛え分けることで形をデザインする

お尻上部にはバックエクステンションやケーブルキックバック

お尻下部にはレッグプレスやシングルレッグヒップスラスト

お尻側部はヒップアブダクションやケーブルアブダクション