トレーニングをどんな順序で行うべきか。ジムにいくと少し考えてしまうものです。最初に行う種目では高いパフォーマンスを発揮できますがトレーニング後半になると疲れてパフォーマンスがあがらなくなって来るものです。いつも同じトレーニングメニューでなく、全身バランス良く高いパフォーマンスを発揮するために、トレーニング部位の「分割法」についてご紹介します。

分割法とは?

分割法とは、身体の部位を「胸」「肩」「背中」「腕」「足」など、いくつかの部位ごとに分けてトレーニングをする方法です。トレーニングルーティンは大きく分けて2つの種類に分けられます。一日で全身を鍛える「全身法」と日によって特定の部位を分けて鍛える「分割法」があります。

全身法でトレーニングする場合には、ジムに行くと身体のすべての部位をトレーニングします。マシンのバリエーションも付けやすく、飽きずに続けやすいですし、ひとつの部位あたりで見たときのトレーニング頻度が高く保てるために、トレーニング初心者には全身法をオススメします。トレーニングはじめたての頃は筋力の向上よりも、繰り返される動作による神経の発達が身体の変化に対して大きく寄与するために、神経成長の観点からも週に何度も刺激を与えられる全身法が適しています。

分割法には、様々なバリエーションがありますが、基本的に一日に1つもしくは2つの部位を鍛えていきます。別名「Bro split」とも呼ばれ、一日のなかで「胸」2日目は「背中」などと分割して、狙った部位だけをトレーニングします。トレーニング初心者以降は多くの場合でこの方法が用いられています。その理由は、トレーニング時間を短くすることが出来るからです。

以前の「ボリューム」の解説時に、トレーニング時間が長くなり過ぎるとトレーニング効果が減少するために、効果が最大化するピークがあることをお伝えしました。例えば、1時間半以内を目安にトレーニングをした場合、セットに1分、インターバルに3分、3セットごとにマシンの準備や移動などの平均4分程度を考慮した時、どんなにテキパキとトレーニングをこなしても全身で20セット程度のトレーニングとなり、5部位で考えると1部位あたり4セットです。トレーニング初期では問題ないボリュームですが、ウォーミングアップも含めて4セットだとメインセットは1セットしかないなんて状態になります。しっかりトレーニングしようとするとトレーニングが長時間になってしまうため今日は「足の日」などとトレーニング部位を分割する発想になります。

上半身下半身法

分割法も様々あり、そのひとつが上半身下半身法です。1日目に上半身、2日目に下半身、3日目は休みなどと適宜休養を挟みながら行います。上半身の日には、胸、背中、肩、腕、腹筋など、上半身のすべての部位をトレーニングします。下半身の日には、お尻、前腿、後ろ腿、ふくらはぎなど、下半身のすべての部位をトレーニングします。この方法だと、各部位を3日ごとにトレーニングすることが出来て、1週間に2〜3回程度の高頻度を維持することが出来ます。

様々な研究結果を見ても、1週間に1回よりも2回の頻度が筋力の向上を促進することが確認されていて、例えば各部位あたりのトレーニングボリュームが全く同じだったとしても、週2回の「頻度」による効果向上が期待できる可能性があります。トレーニング初期の頃ではこの上半身下半身法はトレーニングメニューが分かりやすく、全身法の次に取り組むものとして良さそうです。

しかしこの方法にはデメリットもあります。それはトレーニングの部位が4〜5部位と多いことで、中級者以上になると充分にトレーニングするのが難しいことです。筋力の成長に必要なボリュームを行おうとすると、例えば、胸のトレーニングでベンチプレス3セット、ダンベルプレス(フライ)3セットしたとします。一部位あたり3セット×2種目行ったとすると5部位では1日で30セット行う計算になり、トレーニング時間は長期化し帰る頃には疲労困憊になっていることでしょう。現実的にはトレーニングの途中で疲れて帰ることで、あまりトレーニングをしていない部位が出来てしまいやすいのが難点です。

プッシュプル法

次にプッシュプル法では、1日目に胸、腹筋、肩、上腕三頭筋などのプッシュ(押す)種目を、2日目に背中、上腕二頭筋などのプル(引く)種目を、3日目に足を行い、適度休みを挟んで続けていきます。この方法であれば、3日ごとに1日休みを挟んでも8日で2周出来るため、1週間に2回程度の頻度を守ることが出来ます。

デメリットは、プッシュの日のトレーニングボリュームが多くなってしまうことと、大きな筋肉から鍛えていくことで効率が高まることを考えると腕は最後の種目になるので、常に疲労した状態から行われることでパフォーマンスが下がり腕の成長が遅れる可能性があります。

複数の手法を組み合わせる

それぞれの弱点を補い合う方法として、複数の手法を組み合わせる方法があります。例えば、1日目にプッシュ(胸・肩・上腕三頭筋)2日目にプル(背中、上腕二頭筋)3日目に脚をトレーニングし、4日目は休み、5日目からは上半身下半身法に切り替えて、上半身(胸・肩・腕・背中)6日目に下半身(お尻と脚)をトレーニングします。

あるいは、4日目まではプッシュプル法を行い、より発達させたい部位だけ5,6日目はBro split法で特定の部位をトレーニングします。このようにすることで、種目の多い日には部位あたり軽めのトレーニングとなり、種目の少ない日には部位あたりしっかりとトレーニング出来るなどとメリハリを付けることが出来て、全身満遍なく発達させることが出来ます。

トレーニングはある程度継続してくると身体の反応が悪くなっていきます。そのため、負荷の大きい日と小さい日などを組み合わせることや、いつもはベンチプレスやスクワットなどプレス系種目(押す種目)からはじめていたものを、ダンベルフライやレッグカールなどストレッチ系(ネガティブ時に負荷が掛かる種目)からはじめるなどで、トレーニングメニューの身体の慣れを防止して効果をより高い状態でキープ出来ることが分かっています。同じメニューや同じルーティンは、本人としては簡単ですが効果としてはイマイチなようです。

個人的にオススメの方法

ここまで色々なトレーニングメニューの手法を紹介してきましたが、最後に個人的に私がオススメの方法を紹介します。それは、トレーニングの部位の組み合わせと順番だけを決めておくことです。大まかに説明すると、「胸」「肩」「背中」「腕」「足」などの順番だけを決めておき、ジムに行った際には前回の次の部位のトレーニングを行います。多くの人が何曜日はどの部位の日などと曜日と部位を連動させている方が多いのですが、そうすると予定が入ったときにトレーニングルーティンが崩れやすいものです。流れだけを決めておくことで急な予定や体調が思わしくないとにもトレーニングを休み、次回はその続きから行うといった具合に行います。

更に、人によってボディメイクの仕上がりの理想は様々です。女性でよくある例として、お尻のトップとボトム、サイド(外側)とイン(内側)を鍛え分ける人も多いため、お尻の日と脚の日に分けている人もいますし、スクワット系種目(前腿と大殿筋)ヒンジ系種目(大殿筋と脊柱起立筋)ヒップスラスト等を分けている人もいます。これら細かな要望を含めると、1日のなかでどの部位をやるのか組み合わせを決め、例えば、1日目に「胸と腹筋」2日目に「肩と腕」3日目に「背中と大殿筋上部」などとします。このように日ごとの組み合わせとその順番を決めておき、ジムにいくと前回のトレーニングから見て次の組み合わせをするといった具合で行います。すると、概ね4〜5日程度で全身を一周して、急な予定があれば休むことが可能で、予定がないときには連日トレーニングをしてもOKです。自分の理想のトレーニングメニューをストレスなく続けられて、「今日はこの部位をトレーニングしなければいけない」等の分割に関するストレスから開放されるためオススメです。

最終的には、完全オリジナルになってしまいがちなトレーニングメニューですが、初期のあいだは全身バランス良くトレーニングすることが大切です。つい、肩やふくらはぎ、前腕などあまりしない部位も出てきてしまうものですが、中級者になってくるとその弱点部位によってトレーニングのレベルが向上しなくなったりすることもあります。頻度が少ない部位は意識的に、セット数を多めにするなどして調整すると良いでしょう。

まとめ

分割法には色々な種類がある

複数の分割法を組み合わせると良い

同じボリュームでも週2回の頻度が尚良い

トレーニングの組み合わせと順番だけ決めておく手もある