トレーニングは継続することで効果を発揮します。これまで自重トレーニングのエクササイズをお伝えしてきましたが、この記事では、実際に生活に落とし込み継続する際の成長の方法やコツについて解説します。最初は本当に伸びていくので楽しみながら取り組んでいきましょう。

これまで扱った自重トレーニング

これまでに扱ってきた自重トレーニングのメニューは、スクワット、カーフレイズ、レッグレイズ、ヒップリフト、プランク、プッシュアップといった種目でした。少し前の項ではストレッチやランニング、食事法について触れていたことも覚えているでしょうか。ここまでの内容を読みながら少しずつ進めてきたあなたであれば、徐々に自分の身体が安定し、動きに活力が出て、日常生活のなかでも変化を感じているかもしれません。これからも食事や睡眠を適切に取りながらトレーニングを続けていけば、どんどん出来る回数は増えていきますし、成長も実感できることでしょう。しかしながら楽しくなるとつい、のめり込み過ぎてしまうのも私たちの性質です。ときどきはオフDAYを作りながら、焦らずゆっくりと体調を見ながら進めていくことを心掛けましょう。

効果的な成長の手順を解説

自重トレーニングはただ毎日、回数やルーティンをこなすよりも、小さく目標を定めて挑戦しながら取り組むほうが成長が早いものです。そして記録の成長とともに体も変化していきます。それではどのように、目標立てていけば成長が早いのか。オススメの目標のステップを紹介します。

  1. 1セット20回連続で出来ることを目指す

    最初の目標は1セットだけ、20回連続で行うことです。※プッシュアップは半分の10回でOK!それぞれのエクササイズをはじめたなかりの頃は、3回だけで疲れてしまうかもしれませんし、種目によっては1回も出来ないかもしれません。まずは1回、丁寧なフォームで出来るようになることが大切ですが、それが出来るようになったら、丁寧なフォームのまま連続して何回も出来ることを目指しましょう。目標は20回です。私たちが学生だった頃には、トレーニングをせずとも出来たかもしれませんが、運動から離れていれば再習得には時間が掛かります。1週間で出来るようになるかもしれないし、1ヶ月以上掛かるかもしれません。ですが、良い食事や睡眠とともに焦らず丁寧に続けていれば、誰しも必ず20回連続で出来るようになります。トレーニングを続けて、生活の新たな習慣に落とし込むこと。それが最初のステップと言えるかもしれません。言い忘れましたが、プランクは回数という概念がないので、1セット3分を目標にしましょう。

  2. 2セット目、3セット目を目指す

    1セット20回出来るようになったら、次は2セット目に挑戦してみましょう。1セット20回が限界ギリギリなときには、少し休んで2セット目に挑戦すると10回ほどで限界になるかもしれません。2セット目は、多少休んだとはいえ疲労のある状態からスタートするので1セット目と同じように行うのは難しく、またフォームも崩れがちです。動きが雑になってしまうと、体が歪んでしまう原因になるので出来るだけフォームはブラさないことを念頭に置きながら2セット目に挑戦しましょう。これまた期間が掛かるかもしれませんが、2セット、3セット目まで出来ることを目指しましょう。20回3セット出来る頃には、体もかなり安定していることが実感できるはずです。

  3. インターバル時間を1分に固定する

    丁寧なフォームのまま20回3セットが出来るようになったら、今度はセット間のインターバル(休憩)時間を1分に固定して行ってみましょう。スマートフォンのタイマー機能や時計の秒針を見ると分かりやすいです。3セットギリギリな方は特に、インターバル中に集中して休憩しないと3セット目まで完遂出来なくなるのが実感できると思います。この「休憩」に「集中する」といった行為は日常生活では行うことがないので、トレーニング以外にも仕事や趣味などで集中と休息の質を高める、新しいエクササイズになると思います。やってみると分かるのですが、最終的に回復の目安は「心拍数」になります。1分間で完全に平常時心拍数に戻すのは難しいものですが、集中して休憩することに慣れていくと、何も意識しないときよりもずっと早く呼吸や心拍を整えることが出来るようになります。そうして、インターバル時間を1分にしたまま、フォームが崩れずに20回3セット出来るようになれば、自重トレーニングは一旦クリアしてるといえるレベルにあるでしょう。実際に、しゃがんだり、走ったり、飛んだりといった動作が軽やかに出来るはずです。

1週間のトレーニングメニュー

全種目を毎日トレーニングすると、かえって成長の効率が悪くなります。ですのでトレーニング部位は日々変える方が望ましく、1週間のなかでメニューを組んでおくのが現実的な落とし所でしょう。この1週間のメニューは人それぞれベストが違います。あなたに合ったベストを探すには、あなたが実際に実践して、トレーニングやトレーニング前後の体感を感じたり、日常生活の元気度合いを見たりと、試行錯誤をしながら自分にとってのベストを見つけることが大切です。また、一度ベストが決まっても日々調子や習慣は変わっていくものですし、試行錯誤や模索が続きます。まずはメニュー例をご紹介しますので、試し体感して、折り合いを見つけていきましょう。

  1. 上半身、下半身法

    あまり深く考えずに、上半身と下半身を分けて行います。1日目は、スクワット、カーフレイズ、レッグレイズ、ヒップリフトの中から種目を選び、2日目は、プランク、プッシュアップどちらかを行い、これを繰り返し1週間のなかで概ねトレーニング内容が偏らないようにだけ気を付けます。疲労で前日のトレーニング箇所が分かるので、管理が簡単です。

  2. メイン種目、補助種目法

    月曜日にスクワットをして、火曜日にカーフレイズ、レッグレイズ、ヒップリフトをします。水曜日は休暇として、木曜日にプッシュアップ、金曜日にプランクをします。土曜日や休暇として、日曜日は苦手な種目を練習したり、好きな種目をしたりします。スクワットの翌日にカーフレイズなど、同じ箇所でメイン種目の翌日に補助種目を行うようになっているので、筋肉痛や予備疲労がある状態でトレーニングを行うこととなり、トレーニング効果は高いのですが少し疲労が残りやすいので、休暇日にはストレッチを入念に行いたいところです。

刺激を変化させるテクニック

もしもあなたが大人になってランニングに取り組んだことがあるならこんな経験があるかもしれません。「ランニング初日から翌日にかけて非常に強い筋肉痛を味わったが、走り続けているとだんだんと筋肉痛にならなくなっていく」といったもの。ランニングの成長とは筋肉の成長であり、筋肉の成長には筋肉痛を伴うものですが、ランニングを続けていても筋肉痛にならなくなっていきます。これは筋肉が慣れた刺激に強い特性があり、トレーニングにおいては筋肉を破壊する必要があるので、「刺激を変化させる」というテクニックが大切です。つまり、毎日決まったトレーニングルーティンをこなすのでは成長しにくくなるため、トレーニングの内容を日々変えることが効果的だということです。そこで、筋肉に与える4種類のテクニックを紹介します。

ポジティブ動作とネガテイブ動作

本題に入る前にちょっとおらさい「運動のポジティブ動作とネガティブ動作」についてです。ものを押したり、持ち上げたりといったポジティブ動作に対して、身体を物体に近付けたり、物を持ち下げる(降ろす)たりするネガティブ動作があります。プッシュアップでいえば、床を押すことがポジティブであり、床に身体を近付ける動きをネガティブと表現します。スクワットでは床を足で押す動作がポジティブであり、腰を降ろしていく動作がネガティブです。ダンベルでは持ち上げる動作がポジティブで、降ろす動作がネガティブです。

このポジティブとネガティブの概念は重要なので、ここで覚えておきましょう。トレーニング全般において大切ですが、特に運動初期においてはその重要度はとても高く、運動初期の成長においてはネガティブ動作が特に効果を発揮していると言われています。実際にジムでトレーニングをしている人たちを見ても、男性に多いのですが勢いよくダンベルを持ち上げてアームカールというトレーニングをしている際に、ダンベルを降ろすスピードが重力に任せてしまっており、あげる際にちからを入れて降ろす際に脱力して休んでいる状態になっている方は、長く見てもあまり変化していないパターンが多いです。反対に成長している人たちは必ずネガティブの動作を丁寧に行っています。実際に海外で検証された研究結果においても、筋肉の運動はポジティブ局面だけの場合よりも、ネガティブ局面を含む運動の方が圧倒的に筋肉の成長が大きい結果が出ています。これは前述した、腕立て伏せを習得する際には押すことを練習するよりも出来るだけ耐えながら倒れ込むことで腕立て伏せが習得できることとも一致しています。ネガティブ運動の重要性とともにトレーニング初心者が見落としがちな点として知っておきましょう。少々先の話ではありますが、同じ原理でチンニング(懸垂)を習得する際にも身体を持ち上げるより、高い位置までジャンプして身体を持ち上げて出来るだけ耐えながら懸垂を降りていくこと(ネガティブ)を繰り返すといずれは持ち上げること(ポジティブ)が出来るようになります。スクワットを習得する際に台等を掴んで行う動作も同じ原理ですね。長くなりましたが刺激を変化させる本題に入りましょう。

  1. スタンダード

    2秒間掛けてネガティブ動作を行い、1秒でポジティブ動作を行います。これが通常のトレーニングの動作のタイミングの基本です。スクワットでいえば、2秒掛けて腰を降ろして、1秒で腰を持ち上げます。イメージとしては降ろす際だけゆっくり降ろすことを心掛けるイメージです。ゆっくりとネガティブの動作では対象とする筋肉は緩む方向に動くので、これをゆっくりと行うことで20回の連続運動の間に、負荷が抜ける瞬間がないことを意図しています。負荷が抜けてしまうと1回ごとに休んでいることになるので運動効果は落ちてしまいます。ネガティブを丁寧に、決めた回数までは出来るだけ緊張を解かないように練習しましょう。

  2. TUT(TimeUnderTension)トレーニング

    3秒間掛けてネガティブ動作を行い、また3秒掛けてでポジティブ動作を行います。同じ回数をしたときにトレーニングの時間が長くなる(負荷が掛かり続ける時間が長くなる)ため、血液や成長ホルモンの分泌がより多く行われると考えられています。基本の1秒間で一気に持ち上げた方が筋繊維の破損は大きいためトレーニング効果は高くなりやすいのですが、こちらのTUTトレーニングも変化球として取り入れると筋肉への刺激が変わって効果的です。20回終えるまでの時間がおよそ2倍程度伸びるため、筋力よりも心臓の酸素運搬能力が追いつかず息苦しくなることがあります。心臓の酸素運搬能力は以前ランニングの解説で紹介したインターバルトレーニング等のラン種目で能力を向上させることが出来るので、息苦しさを感じたらラン種目を取り入れることも一考の余地があるかもしれません。

  3. ハイレップトレーニング

    ネガティブからポジティブまでの一連の動作を1秒以内に行います。イメージとしてはネガティブで負荷が抜けない範囲で、出来るだけ素早くテンポよく動作を行うトレーニングです。血液が一気にトレーニング部位に集まり、血液とともに栄養素も送られるため、筋肉の成長に役立ちます。トレーニング時間そのものは短く、筋肉の損傷も小さいため、スタンダードやTUTに比べると効果として見劣りする部分もあるのですが、まずはスタンダードな方法で筋肉を損傷させて、後半でハイレップを行い対象箇所に血液と栄養を送るという組み合わせ技で使われることが多いです。とはいえ、最初に行ったとしても予備疲労法という事前に疲れた状態にしてからトレーニングを行うトレーニング法という概念の有効性もメジャーではあるため、初手に行うトレーニングの変化球としても充分使える方法です。スタンダードに行うよりも回数多くこなすことが出来る方法なので、20回到達して余力があれば30回を目指してみましょう。あくまでもフォームは丁寧に、ネガティブで負荷が抜けないことだけ忘れないようにしましょう。

  4. アイソメトリックトレーニング

    ネガティブ局面の最もキツイところで60秒間静止します。スクワットで言えば腰を降ろした頂点のほんの少し手前で、プッシュアップあれば身体が最も床に近付いたときです。実はプランクはこのアイソメトリック運動に入る運動で、ちからを掛けた状態で静止している運動をこのように呼びます。スクワットやプッシュアップで行えば運動強度が非常に高く、キツさ、息苦しさは圧倒的トップです。60秒間ちからを掛け続けるという特性から息苦しさを克服することは出来ないので、そういうものだと考えておきましょう。関節を動かさないために、準備運動として優れていて、30秒程度で行うと身体が程よく解れます。よくトレーニングに使われるパターンとして、自分が行う最終セット(例えば3セット目)の最終レップ(ここで言う20回目)を最もキツイところで60秒間静止して、最後にポジティブで持ち上げて終了とするパターンです。最終セットの最終レップは自分の限界ギリギリで行われるために、限界ギリギリのちからを込めた状態を60秒間キープすることによって、全力の先の全力を出すために、成長ホルモンが一気に分泌されます。筋肉の損傷、血液(栄養)、ホルモンは身体が成長するために欠かせない3要素なので、有用なトレーニング方法です。負荷が大きいため、毎日行うには向いていませんが、40秒程度で行うことで筋肉への刺激を変化させたりと柔軟に取り入れていきましょう。

まとめ

自重トレーニングを生活に落とし込もう

焦ることはない。地道に続けていけばOK!

20回3セット1分インターバルが一旦のゴール

トレーニングメニューは1週間のなかでバランス良く組む

トレーニング初期はネガティブ動作を丁寧に

筋肉への刺激を変化させ続ける