美と健康における運動の重要性は誰もが知るところですが、適度な運動習慣を続けている人は少ないものです。主な理由として「運動が苦手」「運動は辛い」といった運動初期の躓きがほとんどではないでしょうか。言い換えれば、初期の頃の不慣れさに対して上手に向き合うことが出来れば、継続することで自然とと運動能力は向上し、その恩恵を日常生活に活かし、快活に過ごすことが出来るようになります。運動の苦手感や運動のツラさとは一体何なのか、ここで考えてみましょう。

運動が苦手と感じる理由

運動への苦手感が形成されるのは「学校」が主なところでしょう。学校では、運動をすることはあっても、運動能力を向上させるための練習をすることはあまりないので、「そのままの状態でその運動に適しているか?」を問われます。適切に練習をした上で技術の向上がままならないのであれば「苦手」と感じるのも分かりますが、素の状態で他者と自分を比べて得意不得意を考えるのは、少し時期尚早にも感じます。運動への苦手感についてもう少し事象を含めて考えてみます。

例えば、「ボールを強く投げる」という運動をするとき、体幹の筋肉量とともに、ある程度の関節の「固さ」があるほどボールを上手に投げることが出来ます。「早く走る」という運動においても同じで、上半身のバランスを取る体幹とともに、脚の各部の筋肉量と関節の多少の「固さ」があると初期においては有利です。これは、地面を踏みしめたちからを足首や膝、股関節などの各関節を通して前に進む推進力に変換する際に、力が逃げにくい利点があります。人間の各関節をジョイント部としてイメージした際に、そこが極端に柔らかい状態で地面を蹴ろうとすると、ちからが抜けるイメージが出来るのではないでしょうか。学校の体育における「球技」においては、筋量と関節の固さが有利にはたらくケースが多いものです。

ですが球技を得意とする人が、「ダンス」など細かな動きを求められた際に、滑らかに動けずロボットのようにカクカクとしてしまうことは多いものです。これは各関節の固さ(剛性)と更に筋肉の固さがダンスにおいては、細かな神経伝達を阻害するため不利に働くからです。例えば、日常的に足の指の第一関節と第二関節を分けて考えてバランスを取ることはダンサーにとっては自然なことですが、一般的には脚の指関節は「にぎる」「ひらく」など大きく捉えているものです。これも神経伝達の慣れのひとつです。

つまり、「筋肉」「関節の可動」「神経伝達」などの身体組成の違いによって、どの動き(運動)を得意だと感じるかも変わるということです。端的に表現するならば、運動が苦手だということはないのです。どの動きやどの局面に適しているかがあるだけなので、もしもご自身の運動能力に不安がある方がいらっしゃれば、気にし過ぎないようにして下さいませ。あなたに適した種目は必ずあり、それと巡り合うことを諦める必要はないのです。また、お好きな運動があれば、適した身体づくりを丁寧にはじめれば良いだけなのです。

運動のツラさとは何か

次に運動をはじめたときに「辛い」と感じる現象について触れていきます。これは特に初期段階に強く感じやすく、慣れてくると「きつい」「つらい」と感じる局面は少なくなってきます。爽快感があったり、身体の調子が良くなっていくのを感じることの方が多いので、上手に取り組めば運動は気持ちの良いものであり、逆に見るとあまりに辛さを感じる際には、「この運動は適正なのか」と感じるきっかけにしても良いでしょう。この辛さを「疲労」と呼びますが、次にこの疲労とは何なのかより深く触れていきます。

筋肉疲労の蓄積

どんな運動をしても必ず筋肉が収縮します。この筋肉の伸び縮みする作用によって、人間の身体は動くのです。筋肉が伸び縮みすると、筋肉に蓄えられているグリコーゲンというエネルギー物質が使われ、同時に乳酸が作られます。また、筋肉の繊維は拡大して見ると細かな鉤爪状になっていて、それぞれの筋肉が擦れ合うことでより多くの筋繊維を動かし、同じ作用で傷が付くこともあります。筋肉疲労や筋肉痛の正確なメカニズムは最先端の科学でも明確にはされておらず、まだまだ未開発な分野ではあるのですが、体感として筋肉を伸び縮みさせると「疲れます」。例えば、あなたの手をグーとパーを交互に何度も握ってみて下さい。だんだんと手の筋肉が疲れてダルくなっていくのが分かると思います。これが「筋肉疲労」の状態です。運動で辛いといえば、筋肉が疲れて辛いと思われがちですが、筋肉疲労そのものはグーパー運動でも分かるように、さほどのキツさはないのではないでしょうか。

心臓の酸素供給能力

運動においては「筋肉疲労」と同時に「息苦しさ」が重なることがあります。グーパー運動で息苦しさを感じることはあまりありませんが、スクワットやランニングをすると息苦しくなりやすいものです。これは筋肉がエネルギーを発揮する際に酸素を消費するため筋肉内が酸素欠乏状態になります。すると、血管を通じて心臓から酸素が運ばれて供給されます。一定量の心拍の上昇は辛くありませんが、酸素供給が追い付かなくなってくると呼吸のための酸素供給もままならなくなるため、息苦しい、心臓が苦しい、筋肉の対象部がダルい状態になります。

この三重奏状態が運動が嫌われる要因として大きく、心臓が追いついておらず過負荷な状態にあります。これを解決するために、筋肉の運動とは別に心拍コントロールのためのトレーニングをすることで、心臓の酸素供給能力を高めることが出来ます。スクワット(大殿筋など大きな筋肉)やランニング(全身運動)などの動かす筋肉がより大きくより広範囲になるほど、大量の酸素が必要となり時折追いつかなくなることもありますが、心拍コントロールのトレーニングに慣れると、心臓が苦しくて辛い状況にはならなくなります。

体内の酸性化やホルモンバランス

運動をすると、お腹の奥に気持ち悪さを感じることもあります、同様にお腹にちからを入れると気分が悪くなったり、段々と頭痛がするようになって来ることがあります。これらは体内の酸性化による影響が大きく、人体は通常pH7.4の弱アルカリ性になっていて、それが0.1変化するだけでも体調不良を起こしてしまいます。そのため、体内は絶えずpH値の調整をしており、代謝において常に生成される酸を尿として排出します。運動時にはこの代謝活動が急激に高まるため、運動をするとトイレが近くなる等の現象がこれにあたります。そのとき、肝臓は血中に重炭酸イオン(アルカリ性物質)を排出することで全身のpHを調整しますが、肝臓が疲労してきたり、肝臓の疲労によって酸の濃度が高くなると、体調が悪くのです。体力がどうこうの話ではないので、気分が悪くなってきた際にはしっかりと休むことが大切です。また、その際には水分を多く摂ることで体調の回復が早くなるので、気分が戻ってきたら運動を再開しても問題ありませんが、あまりに気分が悪い際には内臓のコンディションがいまいちな状態になっているかもしれませんので、当日は運動を辞めて体調を整え、翌日また挑戦しなおす等のアプローチをした方が一年を通して総合運動量や総合運動質が向上するかもしれませんので、休むことも重要です。

動きの不慣れさと筋代償

運動をはじめたばかりの初期段階では、その動きに身体が慣れておらず筋肉と関節の動きが固くなります。動きが固いままに強いちからを出そうとすると、通常よりも大きなちからが必要なばかりでなく、本来使用するべき「小さな筋肉」や「インナーマッスル」などが力みによって硬直し、大きく得意な筋肉で変わりの動きを成す「筋代償」になりがちです。プロスポーツ選手でも正確な筋肉の使い方をするのは難しく、初心者は必ずといっていいほど筋代償をするものではあるのですが、そのまま勢いに任せて細かな筋肉を使わないままでいると、運動効率も悪く怪我のリスクも高くなるので、運動初期段階においてはちからを抜いて正確な動きを練習する期間が必要です。

特に男性に多いのですが、この「負荷を掛けず動きに慣れる段階」を経ないために、何年もジムに通っていても勢いでダンベルを振り上げるばかりで、一向に身体が変わらない方もいらっしゃいます。女性においても、最初から負荷が大きすぎると関節を痛めるリスクも高くなり、炎症が長引く方も少なくありません。大切なことなので、ぜひこのフィーリング期間を忘れないでおきましょう。初期段階においては、無負荷から低負荷の状態で、まず自分が行う動きに慣れるためだけの期間を持ちましょう。その期間は個人差も大きく、目安として2週間程度は取りたいところですが、動きに慣れてくると筋肉の伸び縮が滑らかになり、歩くのと同じように軽やかに行えるようにもなってきますので、そのフィーリングを目安に徐々に負荷を掛けても良いでしょう。

運動を一関節単位で見たとき、その成長は「動きに慣れる」→「関節の可動域を高める」→「筋肉の柔軟性を高め」→「発揮筋力を高める」→「筋肉量を増やし安定させる」と一関節あたりでもこれだけの手順を踏みますが、それもまた後の項で詳しく解説していきます。最近の研究では、ボディラインに関係する筋肉や代謝の向上は、運動時間が(90分間をピークに)長時間になるほど効果が低下していくため、総合運動量でなく、日々の運動強度に依存するという結果が多数報告されています。つまり、ボディラインは運動量でなく、運動能力に合わせて作られるので、高いレベルのボディメイクにおいては、同等の身体能力が求められると解釈することができます。ですので、ボディメイクは短期間でなく、より長期間をイメージして少しずつ身体を変えていこうとする着実な姿勢がとても大切です。

まとめ

誰しも得意な種目や運動が必ずある

疲労には筋肉疲労と内臓疲労がある

最初は動きに慣れるフィーリング期間が必要

正確なフォーム(動き)が美しい身体を作る