「運動が身体にいいと分かっていても、中々やる気が起きない」という方もいるでしょう。ジムに通ったり、汗をかくような運動をせずとも、簡単なウォーキングで十分にストレスを解消する効果があります。ストレスは様々な不調の元。今回はウォーキングが心身に与える影響についてお話します。

私たちの身体には運動が必要

ある実験で旧石器時代に近い狩猟採集生活を送るハッザ族の運動量を調査しました。心拍数とGPSで日中の活動量を計った上で、血圧や体内の炎症レベルをチェックしたのです。狩猟採集民の活動量は、想像をはるかに超えるものでした。彼らは1日に75分のMVPA(中高強度身体活動)を行い、そのレベルは先進国平均の14.8倍。60歳を超えた初老のメンバーも18歳の若者と同じくらい体を動かしており、コレステロールや炎症に悩む者も確認されませんでした。MVPAは、早歩きからランニング程度の運動レベルを指します。多くの先進国は「健康維持のためには1週間に250分のMVPAを行うこと」とのガイドラインを設定していますが、その基準をハッザ族はたった2日でクリアしている計算です。すべての部族が同じ活動量だとは限りませんが、人類が長時間の運動に適したは間違いありません。私たちの身体は筋肉や骨や心臓は、旧石器時代とほぼ同じ構造です。私たちの身体も運動に適したつくりとなっており、現代の運動不足が様々な病気の引き金である考えられます。

運動が脳のパフォーマンスを上げる

ここ数年で運動のメリットを示すデータを激増しており、2016年にはキャンベラ大学が信頼度の高いメタ分析を出しています。過去に出した「運動と脳」に関する論文から質が良い36件を選び、エクササイズでどれだけ私たちのパフォーマンスが上がるのかを調べたものです。まずはわかったのは、どんな運動でも、ある程度の負荷があれば脳には良い影響があるという事実です。筋トレでもランニングでも水泳でもジャンルは何でも構いません。とりあえず体動かしておけば、脳機能は確実にアップします。運動で脳のパフォーマンスが上がる最低ラインは次の通りです。

  • 1回のセッションで45〜60分位の運動するとストレスが改善し、認知機能も向上しやすくなる
  • 「週に2回の運動」と「週に4回の運動」を比べた場合、両者に大きな差は無い
  • 運動のレベルは「軽く息が上がるくらい」から「ヘトヘトになるぐらい」までの範囲で行うのが効果的

基本的には「1回45分の少しキツイ運動を週2回」のペースで行うのが、脳機能のアップが見込める最低のラインです。

軽いウォーキングでストレスが減る

「1回45分の少しキツイ運動を週2回」のペースで行うのが、脳機能のアップが見込める最低のラインです。ただし、ストレス対策だけ目的をすれば、そこまで運動に時間を割く必要はありません。ある実験では1回30〜60分の軽いウォーキングを週2回だけ行った学生は、何の運動もしなかったグループに比べてストレスが減り、テストの成績も有意に向上しています。研究チームは、多くの人がウォーキングの力を過小評価していると言います。「ウォーキングを行うとコレステロールや血圧が下がり体重も減る。しかし、それらのメリットを合わせてもウォーキングが心疾患に効く理由の59%しか説明できない。残りの41%は、ウォーキングがストレス反応を改善してくれるからだろう。」一般のイメージよりもウォーキングは強力なパワーを持っています。生活の合間に数分の散歩するだけでも、あなたのストレスは激減するのです。

運動がストレスに効く理由

運動がストレスに効く理由は諸説ありますが、最も有力されているのは「エクササイズが体のストレス対策システムを鍛えてくれる」と言う考え方です。私たちの循環器系や筋肉は脳の神経とつながっており、普段から相互にやりとりをしています。ところが、運動していないと脳神経と身体のつながりが弱まり、連携がとれなくなってしまうのです。人間のストレス対策システムは、脳から臓器への連絡をスムーズにできないと上手く働きません。つまり、運動には脳と身体のつながりを取り戻す作用があります。

まとめ

脳と身体のつながりを取り戻し、ストレスを和らげるには、ある程度の負荷があればどんな運動でも構わないので、週に2〜3回ずつ続けられるもの選んでください。最低でも12分の早歩きで、脳のパフォーマンスを確実にアップします。