健康で美しい身体づくりのために日々の食生活は大切です。摂取した食べ物がどのようにエネルギーに変わっていくのか知っておくことで、ボディメイクの増量と減量どちらにおいても体重と体脂肪のコントロールが出来るようになります。カロリー、代謝、GI値について理解しましょう。
カロリーについて
カロリーとは熱量(エネルギー)を表す単位の1つです。1kcalは、水1Lを1気圧のもとで1℃上昇させるのに必要な熱量のことを指します。人間は生きていくために常にエネルギーが必要で、栄養学における生理的熱量であるカロリー(エネルギー)は私達たちの身体が基礎代謝、もしくは運動の際に必要とするエネルギーの源です。食品もしくは飲料から摂取する必要があり、主にエネルギー源として利用できるのは、たんぱく質、脂質、炭水化物の3大栄養素です。
ボディメイクにおいてカロリーが話題に上がるのは、例えば100kcalのエネルギーを持つ食べ物を食べても、摂取食品分のエネルギーを消費する運動をすれば食べた分のエネルギーは消費され、からだの中には残りません。しかし食べたエネルギーを全て消費しきれずエネルギーが余って残った場合、そのエネルギーは、「脂肪」に変えられエネルギーを貯蔵します。この仕組みによってオーバーカロリー状態が続くと体脂肪も増えるために、カロリーが意識されています。
カロリーの算出方法と現状
食品に含まれるカロリーによって私たちの身体は活動することが出来ますが、表記されているカロリーと実際に身体が使うエネルギーとは若干ニュアンスが違っており、摂取カロリーと消費カロリーは厳密には同じになりません。この仕組みはカロリーがどのように算出されているかを知ることで見えてきますので、カロリーが算出されている方法の代表を紹介します。
アトウォーター係数によるカロリー計算
19世紀後半から20世紀初頭ごろアトウォーターという学者の研究により開発された、食物の利用可能なエネルギーを計算するための手法にアトウォーター係数があります。体で利用できるエネルギーの値は、1gあたり炭水化物4kcal、脂質9kcal、タンパク質4kcalほどであるしており、食品の炭水化物、脂質、タンパク質それぞれの含有量を調べて、このアトウォーター係数(1gあたり炭水化物4kcal、脂質9kcal、タンパク質4kcal)を乗算し、足し合わせることで食品全体の保有カロリーを計算します。
爆発カロリー計測器によるカロリー計算
乾燥粉末にした食べ物を、酸素を充填した密閉容器に入れて、水槽に沈めて爆発させるというもの。その熱によって上昇した水温を測定するのです。ゆっくり燃やしていると熱が逃げてしまうため、瞬間的に燃焼、つまり爆燃させたあとの水槽の内の水温の温度上昇を調べます。簡単に言うと食品を燃やして、温度上昇を見るのです。
日本食品標準成分表から算出
文部科学省が発表する「日本食品標準成分表」を参考に、使用する食材や調理法などからカロリーを概算します。こちらの「日本食品標準成分表」は毎年、発行されており、最新の成分表をもとに企業はカロリーを算出しています。「日本食品標準成分表」⇒https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
いかがでしょうか。カロリーの算出には、食品を燃焼させて発生熱を測定したり、食品の燃焼熱と人間の糞尿の燃焼熱、呼吸熱などの差し引きによって、食品の持つエネルギーであるカロリー計算が成されていますが、実際に私たちの消化器官で分解されて、細胞内で発生するエネルギーを直接測定することは出来ないために、その前後の「熱」に着目してエネルギー量を模擬しているのです。
熱そのものが代謝エネルギーでないことや、食品ごとの個体差は加味されていない、消化器官の健康状態等の個人差による吸収率の差、食べ合わせによってエネルギー代謝が変わる(例えば、ごはんを食べるとき、食物繊維を多く含む食品を同時に摂取することで、血糖値の上昇がゆるやかになり、栄養の吸収率が一時的に降下する)など様々な変数を考えると、食品を燃やしたときの熱量がそのまま私たちの身体で使われるエネルギーと正確に言い表すには、少々目が荒いのが分かるでしょうか。ですので、カロリー表記はざっくりとした目安としては活用しても、数カロリー〜数十カロリーまで正確に計算してもしょうがないというのが現実的な落とし所です。例えば、「お米100g◎◎カロリー」と決められていたとしても、品種や産地、収穫時期によって、内包する糖の成分量に違いが出るのはイメージに容易いですよね。「カロリーは大まかに見るもの」と覚えておきましょう。
代謝について
代謝の考え方は広く、私たちが生命を維持するために、食べた食品や飲料から取り入れた栄養や身体内部で生成した物質を用いて、身体に必要な物質を再生成するための一連のエネルギーの流れを指します。細胞単位で見たときの代謝では、食品などから得た栄養素を、酵素によって分解・変換し、遺伝子の情報にしたがって体に必要な成分へと再生成する活動を言いますが、ボディメイクにおける代謝の単位は、エネルギー(カロリー)の収支であり、基礎代謝と活動代謝を合わせた総代謝のことを言います。
基礎代謝とは、私たちが何も活動しなくとも、心臓などの内臓が生命を維持するために使われるエネルギーのことで、活動代謝とは運動時や筋肉が動く際に使われるエネルギーのこと、それらを合わせて総代謝といいます。細胞レベルの新陳代謝(代謝)まで理解すると果てしなくなりますが、基礎代謝と活動代謝を合わせて総代謝であることは、ボディメイクにおいてよく話題に上がるので、これを期に覚えておきましょう。
体脂肪を減らすカロリーを概算
応用として、体内に貯蔵されている脂肪1kg(1,000g)を代謝(消費)するにはどれだけのカロリーが必要になるのでしょうか?
アトウォーター係数をもとに考えると、脂肪1gは9kcalなので、1kgの脂肪を消費するにはざっと9000kcalのアンダーカロリーであると見積もることが出来ます。※カロリーの性質上「概算」であることはご理解下さい。人間の脂肪は「脂肪細胞」として蓄えられていて、全てが純粋な脂肪というわけではありません。脂肪細胞の約8割は脂質ですが、残り2割ほどは水分や細胞を形成するさまざまな物質で構成されています。
これを踏まえて計算すると脂肪1kgを消費するのに必要なエネルギー(カロリー)は、9kcal×1000g×80%=約7200kcal 程になります。 つまり、仮に1カ月で1kgの脂肪を減らすために消費すべきエネルギーは、7200÷30=240kcalとなり1日あたり240kcalになります。通常の生活の総代謝が仮に2000kcalであったならば、毎日240kcal分の運動代謝を得る(運動する)、もしくは摂取を抑えられれば1カ月で1kgの脂肪を減らすことが出来るということです。
あくまで参考です。私たちは毎日全く同じ生活をしている訳ではありませんし、再三にお伝えしているとおりカロリーの性質上ざっくりと概算以上の計算は出来ませんので、240kcal分の運動はどの程度だろう?と運動負荷や量のイメージを付ける参考にはなると考えましょう。
イメージを深めるために以前にもお伝えしたカロリーの収支の簡易モデルをご紹介します。
・摂取カロリー>総代謝(基礎代謝+活動代謝)=オーバーカロリー(体脂肪が増える)
・摂取カロリー<総代謝(基礎代謝+活動代謝)=アンダーカロリー(体脂肪が減る)
推定基礎代謝の参考値
あなたの基礎代謝はどのくらいの消費カロリーでしょうか。それを知るには体組織計などを用いて測定ができますが、厚生労働省より毎年策定されている、日本人の食事摂取基準「1日の推定エネルギー必要量」というデータを見ると、ざっくりとした身体活動レベル(生活の中の運動具合)によって、基礎代謝を参考にすることが出来ます。
表の中の年齢、性別、身体活動レベルから、現在の自分の体や生活スタイルにおいてのエネルギー必要量を確認してみましょう。個人差もあるのでざっくりとではありますが、私(筆者)自身、現在33歳で活動レベルⅢだと見るとデータ上3,050kcalに対し、実際の測定値2,950kcalなので、ある程度は参考に出来そうなフィーリングかもしれません。ボディメイク等で正確に測定したい方はスポーツジムなどにある、体組織計で基礎代謝を測定できます。
推定エネルギー必要量(kcal/日)
性別 | 男性 | 女性 | ||||
身体活動レベル | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
15〜17歳 | 2,500 | 2,800 | 3,150 | 2,050 | 2,300 | 2,550 |
18〜29歳 | 2,300 | 2,650 | 3,050 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
30〜49歳 | 2,300 | 2,700 | 3,050 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
50〜64歳 | 2,200 | 2,500 | 2,950 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
65〜74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 | 1,550 | 1,850 | 2,210 |
75歳以上 | 1,800 | 2,100 | – | 1,400 | 1,650 | – |
身体活動レベル
Ⅰ(低い) | 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心 |
Ⅱ(普通) | 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客など、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツのいずれかを含む |
Ⅲ(高い) | 移動や立位の多い仕事への従事者、あるいはスポーツなど余暇における活発な運動習慣を持っている |
GI値について
GIとは食後血糖値の上昇を示す指標、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、「GI」「GI値」など称されます。
GIは、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったものです。グルコース(ブドウ糖)を基準(100)とした場合、GIが70以上の食品を高GI食品、56~69の間の食品を中GI食品、55以下の食品を低GI食品と定義されています。
体内での血糖値上昇のメカニズム
ごはんやパンに代表される炭水化物が多い食べ物が口から入ると、食道を通り、胃や十二指腸で消化され小腸から吸収されます。吸収された糖質(グルコース)は血管内に取り込まれ、次のような流れで体内に取り込まれます。
1.食べ物の中の糖分が血中に取り込まれ、肝臓に運ばれ、余剰分が血中に流れ全身に送られる【血糖値があがる】
2.血中の当濃度が高くなることで、すい臓からインスリンが分泌される
3.インスリンによって糖分は肝臓や筋肉、脂肪組織に取り込まれる【血糖値が下がる】
グルコースとグリコーゲンの関係
食品から摂取されたグルコース(ブドウ糖)はグリコシド結合(糖と別の有機化合物が脱水結合)によって連なり重合し、グリコーゲンという高分子(大きな分子)に変化します。グリコーゲンは肝臓と筋肉で主に合成され、余剰のグルコースを一時的に貯蔵しておく意義ががあります。グルコースとグリコーゲンの関係はボディメイクにおいては重要なので、イメージだけでも掴んでおくと良いでしょう。グリコーゲンは私たちが活動するためのエネルギーそのものであることや、脳の活動でも主として使われることから、筋肉量が増えるとグリコーゲン保有量が増えるため、体力(活動量)が増えたり、脳活動が活発になったりなどの効果が期待でき、人生の充実と密接に関わっています。
血糖値は食べるたびに上昇する
食事や間食をすると、その直後から血糖値が上がります。その後、健康な状態であればインスリンが十分に働いて、食後2時間もすると食べる前と同じ値まで戻ります。食べ過ぎ・アルコール過多・ストレス・運動不足などによってすい臓の働きが弱くなるとインスリンの反応が悪くなるので、エネルギーを運ぶ重要なホルモンであるインスリンが健全に活動するためにも、普段の生活習慣が大切です。
GI値の活用方法
GIが高い食品は、一気に血糖値を上昇させるため、血液中の糖を処理するために多量のインスリンが分泌されたり、分泌が追いつかなくなるということが起こります。多量のインスリンが分泌されるとインスリンは肝臓や筋肉だけでなく、脂肪細胞にもエネルギーを送ってしまうため、高GI食品には少し注意が必要です。
しかしながら一概に高GIを避ければ良いというわけでもないようです。例えば、素早く栄養を補給したい朝や血中のタンパク質濃度を高くしておきたいトレーニング前など、タンパク質や各種栄養素は炭水化物と同時に摂取することで吸収が活発になるため、トレーニング前に高GI食品で高炭水化物状態にしておくなど、上手に活用することで、健康の維持、回復、筋合成などを高める効果があります。トレーニング視点で炭水化物を見たときには、タンパク質を吸収するために、トレーニングの前・中・後で炭水化物の重要性が高いことを知っておきましょう。
また、日中の食事においても、例えば高GIの白米と食物繊維等を多く含む野菜を同時に摂取することで、インスリン反応をゆるやかにする効果があります。これはフルーツ単体でも同じ現象が起きていて、本来フルーツの糖質は身体に吸収されやすく高GI食品に分類されるべきですが、フルーツは同時に食物繊維を多く含むので吸収反応をゆるやかにして低〜中GI食品に分類されています。「自然界において、糖質のあるところには食物繊維あり」という言葉があるほど、糖質と食物繊維はバランスを取って良い関係を築いていますが、加工された食品の多い現代では、この自然のバランスが人工的に断ち切られているため、私たちは学び、意識して食品を取る必要があります。
まとめ
カロリーは大まかに参考にする
ボディメイクにおける代謝はエネルギーの収支でOK
基礎代謝+活動代謝=総代謝
すい臓からのインスリンが糖をはこぶ
GI値を上手に活用しよう