ここから本格的にトレーニングについて解説していきます。まずは自重トレーニングつまり、自分の体重を使った運動について触れます。自重トレーニングからはじめる目的は、自分の身体を自分の思うように動かせるようになることです。私たちは多くの場合において、子供の頃に出来た動きを、大人になるに連れて出来なくなっていきます。現代はあらゆる場面で便利で効率が良いためです。ここではまずは自重トレーニングからはじめて、私たちが本来持っている、走る、しゃがむ、ジャンプするなどの機能を取り戻すことからはじめましょう。

なぜ、自重トレーニングからはじめるか

先にもお伝えしたとおり、自重トレーニングからはじめる目的は自分の身体を自分の思うように動かせるようになるためです。もしかすると、ジムなどでマシンを使ったり、ウェイトトレーニングをすることをイメージしていた方には少し拍子抜けするように感じるかもしれません。しかしながら私たちは多くの場合において、子供の頃に出来た動きを大人になるに連れて出来なくなってなっていきます。

私たちが子供の頃には、砂場で遊んだり、木に登ったり、走ったり、ジャンプしたりといった動作を、誰に教わるでもなく自然と習得します。それは人間という動物が本来、本能的に習得する基本的な運動機能のひとつです。ですが便利すぎる現代社会においては、長距離を走って通勤する必要も、移動をする際に木に登る必要もありません。私たちの身体は、同じ動きを何度も練習すれば可能性は無限に成長しますが、一方使わなければ幼少期よりも低下します。自分の身体を自分の思うように、しゃがみ、走り、ジャンプさせる、こういった基本的な機能の再習得のあとで本格的なマシントレーニングに入っても遅くありません。

そればかりかジムなどにある高機能でおしゃれなマシンでは、決まった動きを安定して行うことが簡単に出来るために、全身の動きが上手に使えなくともトレーニングが出来てしまいます。そのため基本的な機能である、走る、ジャンプするなどが出来ない方でも高いレベルの筋力発揮が可能となります。それは良い面もありますが、アンバランスさを強調することにもなるため、肩や腕が異常に発達しているが足は細くお腹が出ている人や、無理に高重量を全身の勢いで扱ってしまい怪我をする人など、アンバランスで不自然な体型になったり、怪我をしたりしてしまう人もいます。反対に、走る、しゃがむ、ジャンプする、登るといった基本的な機能を習得し発展させながら、トレーニングを行う人たちはバランスの良い肉体になっていきます。

最終的なボディラインの仕上がりは、個人の価値観によるところもありますが、まず初期においては、自分の身体を自分の思うように動かし、日常的に不便なく、快活に機能する身体を取り戻すことは、今度どのようなトレーニングにおいてもプラスに働きます。まずは自重トレーニングから入り、あなたが子供の頃に出来た動きを取り戻すことからはじめましょう。私たちは機能を追求すれば、自ずと美にたどり着くものなのです。

最初のオススメは自重スクワットから

前置きが長くなりましたが、まずはやってみましょう。その場でしゃがんでみて下さい。しゃがむことが出来たら今度はそのまま立ってみましょう。最初はあれこれと考え過ぎず、機能として行うことが最も自然に動きを習得するコツです。そのため、足の幅や手の位置もまずはやりやすいようにやってみましょう。最終的には効率的なフォームというものもあり、YouTubeなどでそれらのハイレベルな情報を入手することも出来ますが、私たちは本来、自分に合ったやり方を、自分の身体が本能的に習得します。そのため、まずは機能としてただ、しゃがむ、立つという動作から入ることで、より自然でバランス良く動きを習得出来ます。

適度に休憩したところでトレーニングに戻りましょう。次にしゃがんで立つということを数度連続して行ってみましょう。このとき左右のバランスが崩れないことだけ気をつけてみて下さい。どうでしょうか?よほどスポーツを続けていた人でない限り、しゃがんで立つということを繰り返すだけでも、安定して行うことが出来ません。フラフラしたり、疲れてきます。

今度は呼吸を整えて、前後左右に身体が揺れないことを気を付けて、ゆっくりとしゃがんで立つことを10回繰り返してみてください。ふらついてしまい安定して行うことが難しいときには、どこかに軽く手を添えたり掴まってやると安定します。足首が硬く、深くしゃがむとかかとが浮いてしまう方は、踵が浮かない深さまでしゃがむようにしましょう。どうでしょうか。大変だったでしょうか、簡単だったでしょうか。これが自重スクワットというトレーニングの基本動作です。トレーニング全般に言えることですが、現在どこまで出来るか、他人と比べて自分のレベルがどうかは全く問題でないので、焦らず無理はしないようにしましょう。

最初にオススメするのは、この「自重スクワット」です。下半身が中心の全身運動であり、私たちが日常的行う、立つ、歩く、といった動作を安定して行うことが出来るようになります。トレーニング種目の取り組む順番としてどうあるべきか、人それぞれではありますが個人的には動物の持っている基本的な機能である「歩く」という下半身の強化からはじめるのが、全身の機能の回復に効果的だと考えています。

自重スクワットへの心構え

また、さきほど効率的なフォームについて少し触れましたが、少しだけフォームの方向性についても解説します。しゃがんで立つということを連続して行う際には、膝や腰など一部分に負荷が集中するよりも、全身に均一に負荷が分散した方が安定して連続で同じ動作をすることが出来るようになります。腰の負荷を分散させるためには、少し上半身を前傾しながらも胸を張り、背中をまるめないようにする方が楽になります。膝の負荷を分散させるためには、ゆっくり腰を落としながら、お尻やハムストリングス(後ろ腿)で体重を受け止めて、完全に膝を折りたたむほんの手前で腰を持ち上げはじめます。また、上げきった局面でも膝を伸ばしきるほんの手前で腰を落とす方が膝関節への負担は小さく、連続して行っても膝や腰が痛くならない状態で出来ます。このように、フォームを習得する際にはちからを入れて理想のフォームにしようとするよりも、ちからを抜いてより楽に自然に行うことを心掛けた結果辿り着くものだとイメージすると正解に近いものです。また、身体が硬い状態だとやりづらさを感じやすい種目なので、柔軟やストレッチは並行して推進しましょう。

最初はこの自重スクワットを、3〜10回を目安に一日1セットだけやってみて下さい。30秒ほどで終了するので、一日に必要なトレーニングがたったコレだけだと思うと非常に少なく感じるかもしれませんが、運動初期においては1日1セットで充分です。焦ると怪我のリスクが高まりますが、ゆっくりである場合に困ることは何もありません。人によっては10年以上、運動から離れていた方もいらっしゃると思います。10年来のブランクといった観点や健康は一生ものであることを思えば、ごくはじめの時期を無理して進む必要はないのです。慣れてきたら無理のない範囲で回数やセット数を徐々に増やしていきます。

インターナルフォーカスの効果

自重スクワットに慣れてくると、動きのどの部分に集中するかによって動かしやすさが変わってくることが実感できます。実際にやってみると効果を体感できるのでイメージしやすいでしょう。まずはしゃがむことを意識してスクワットを数度してみましょう。次に、ハムストリングスの収縮に意識を集中させてスクワットを数度してみましょう。最後に、お尻を上下させることに集中してスクワットを数度してみて下さい。やってみると、どの部分に意識を集中するかで、動きの滑らかさや安定感に違いが出ることが分かります。これをインターナルフォーカスといいます。人それぞれにどうインターナルフォーカスすれば、動きが安定するかは違うので、実践しながら集中しやすいポイントを探ってみると、スクワットひとつ奥深く面白いものです。

自重トレーニング段階での食事法

自重トレーニングをする際には、食事法やサプリメントの摂取はどうしたらいいか。プロテインは飲んだ方がいいかなど、トレーニングと食事の関係を考えれば疑問が湧くこともあるかもしれません。プロテインなどのサプリメントは個人の価値観によるところも賛否もあるものですが、個人的にオススメしたい方法として、自重トレーニング段階においてはプロテインは摂取しないことをオススメします。

まず普段の食事の中にもプロテイン、つまりタンパク質は含まれています。炭水化物の代表である白米にもお茶碗一杯(150g)あたり4g程度のタンパク質が含まれており、鶏肉(胸肉)100gにも24g程度のタンパク質があります。その他、様々な食品において大小タンパク質が含まれていることを考えると、運動初期の自重トレーニング段階で、あえてプロテインを摂らずとも充分にカバーできるものであるためです。もしも疲れを感じたときには、運動直後にりんごやバナナなどの果物を食べると回復が早くなるので良いでしょう。

そう言わず、プロテインは多く取れば不足することもないのだから、多いに越したことはないのでは?と感じる方もいるかもしれませんが、タンパク質の人体の貯蔵量には限界があり、その量も人それぞれ、そして日によっても違います。多少過不可が前後する分には問題ありませんが、プロテインの過剰摂取によってある一定の栄養素が身体のなかに蓄積されると、その栄養素が毒素を出したり、別の栄養素を身体から排出してしまうなどの作用もあります。プロテインの過剰摂取による、カルシウムやミネラルの排出がよくある例です。

この過剰摂取による健康害のリスクと、運動初期のタンパク質の微量の不足分を天秤にかけると、プロテインをわざわざ摂取する必要もないように感じています。また、今後長くトレーニングをしていく際には、今自分の身体がどういう状態なのかを本能的に察知する能力が大切になってきます。例えば、トレーニングが上達してウェイトトレーニングなどで扱う重量が増えたとき、「今日の調子はなんだかいまいちだ」「このフォームは腰や膝を痛めるかもしれない」などの微細な感覚を本能的に察知することが非常に重要です。長期的に考えると怪我のリスクがあるときにはトレーニングを中止することの方がトレーニングすること以上に大切な能力なのです。この察知する直感力は、動物としての本能的な機能であり、人工的に調理調味された食事よりも、より調理過程の少ない自然食や生活習慣によって養われる能力です。そういったことを踏まえると、トレーニングをするほとんどの人が摂取するプロテインではありますが、運動初期においてはわざわざ摂取せず、本格的に必要なタンパク質を食品だけで摂ることが難しくなったときや、必要性を改めて感じた際に摂取を検討すれば充分だというのが、私個人の見解です。自然食でまかなえる領域においては、出来る限り自然食であるべきです。

まとめ

自重トレーニングからはじめる

機能を追求すればおのずと美にたどり着く

最初の種目は自重スクワットがオススメ

フォーカスを意識すると動きやすくなる

人工プロセスの少ない自然な食事を心掛けよう