CHAPTER 05 ビジネスに独自性を生み出す

 

顧客はどうしてあなたから商品、サービスを買うのだろうか?何故、数ある会社、ビジネスの中から、あなたの商品を手に取るのだろうか?おそらく、あなたが選ばれる理由は、あなたでなければならないからだろう。あなたの商品が選ばれる理由は、あなたの商品でなければならないからだろう。そうでなければ、もっと有名で、もっとみんなが知っている、もっと安価な別の会社の類似商品がきっとあるはずだ。マイクロビジネスであるあなたの商品が売れる理由があるとしたら、それはあなたでなければなかないからに他ならない。

 

あなたの商品が売れる理由は、あなたでなければならないから

 

独自性の確立と認知

つまり、マイクロビジネスが選ばれるためには、あなただけの独自性が必要なのだ。広く多くの人に愛される商品ではなく、まずこの人達なら誰よりも大満足させることが出来る、この人達へのサービスなら誰にも負けない、ごく限られた人たち向けの商品やサービスを生み出さなければならない。そうでなければ、大企業の安く大量生産された商品や、チームで効率化されたサービスで良くなってしまう。起業をして収益が軌道に乗るまでの最初の課題は、この独自性の確立と認知とも言えるでしょう。

 

あなたのビジネスだけの独自性が必要になる

 

ファンに向けて全精力を注ごう

ティム・クックのインタビューによると、Apple社には2つの重要な信念がある。ひとつはユーザの生活を変えてしまうほどの最高の商品を創ること。もうひとつは、ユーザーにとって本当に大切なことは何かを考え抜くことだと言う。彼らには強い信念があって、その信念によって製品が出来ている。ユーザーはその製品を心待ちにしているが、すべての人がApple社のファンというわけではない。Appleが自らの信念を語り、多くの製品をリリースするごとにファンは増えていくが、同時に反対派も増える。

大切なのは、あなた自身の信念や哲学を否定する人ではなく、あなたを受け入れて愛してくれる人たちに向けて、時間と思考を注ぐことだ。反対派へ注ぐ時間ほど無駄なものはない。思考や時間を費やせば費やすほど、反対派は増えていく。重ねて言うけれど、あなたの信念を愛してくれる人を喜ばせることに集中しよう。

 

信念を否定する人ではなく
信念を受け入れ愛してくれる人に精力を注ぐ

 

ロイヤルカスタマーを優先する

地球上全員にマッチングする製品やサービスを考えても不毛だ。日本中の人全員に愛されるサービスを考えても不可能なんだ。全員に合わせようとすれば、誰の心も打つことは出来ない。あなただけの独立したビジネスパーソナリティーとあなたからなる独自の市場を作り出し、そこにいる人たちにあなただけの信念や哲学を発信し続け、本当のファンとの信頼関係を作り出すことではじめて、あなたのビジネスは軌道に乗る。大衆化やパブリッシングは、その後成長した後での話で、最初は独自のサービスで独自の市場を作ること。そこからはじめよう。

 

あなただけ信念や哲学を受け入れていくれる
強固なファンと信頼関係を築くこと

 

弱点を逆手に取る

企業の魅力とは、人の魅力に似ていて、完璧であることが愛される条件というわけではない。例えば、自分に苦手なところがある人やコンプレックスがある人がそれを明るく笑い飛ばせば、魅力に変わるように、企業の魅力も同じだ。あなたのビジネスにおける弱点は、隠すよりも開け広げてしまったほうが魅力的に写る。明らかな怠慢は話にならないが、誠実な努力の上での至らない点は弱点にはなり得ない。むしろ、より人間らしさを増し、ユーザーは愛着を持って接してくれて、補おうとさえしてくれることもある。

「ご依頼に答えたいのは山々なのですが、ありがたい事に予約がいっぱいでいまは対応しきれないのです。来月お受けさせていただきたいので、予約をして頂けませんか?」そう言われて、よほど緊急な案件でもない限り悪い気はしないだろう。むしろ、そんなに人気なのかとサービスを心待ちにさえしたくなる。筆者である僕自身も、自分がアトピーであることや、乾燥した日の肌荒れも、僕の個性だと思っているよ。

 

弱点は隠そうとしなければ個性になる

 

ノーと言う勇気

陥りやすい起業失敗スタイルの典型に『なんでもします。売れるなら』がある。どうしても売上が欲しいあまりにあれもこれもと誰とも構わず勧めて、自分も相手も本当に大切で有用なものは何なのかを見失っている状態だ。上手くいくためには、責任を引き受けなければいけない。それは自分の経済性への責任だ。顧客はあなたをリッチにしたり、収入を安定させるために、あなたの商品やサービスを買うわけじゃない。顧客はただ、その商品が欲しいだけなのだ。

あなたは勇気を持って、自分のビジネスに本当に相手が合っているのかを精査しなければいけない。あなたが本当に最大限価値を発揮できる相手でないのなら「ノー」を提示すること。実際、「ノー」ということには勇気がいる。売上も逃すし、相手も「どうして客なのに断られるのだろう」と怪訝に感じるかもしれない。だけれど、マッチングしていない人にはっきりと「ノー」と言えない限り、本当にマッチングした素晴らしい顧客に、「是非、あなたにはおすすめだよ」と心から言うことは出来ない。

こちらのわがままで顧客を選ぶわけじゃない。最高の価値を提供できる顧客像を明確にし、そこにあまりに外れていれば、他社を紹介するなり、別に行ってもらうなりするほうが、相手にとっても誠実なのだ。あなたが中途半端にサービスを提供することで、相手が本当にマッチングの良い企業と出会う機会を奪ってはいけない。

 

「ノー」と言う勇気が
真の顧客にサービスを勧める自信になる

 

哲学から生み出されるポリシー

実際、「ノー」のパワーは長期的であるほどに強くなる。いつまで経っても理想の顧客に出逢えていかない企業や起業家に共通するのは、誰彼構わず商品を売っているからだ。類は友を呼ぶとはよく言ったもので、一度クライアントとして引き入れると、その人の紹介や、その人のSNS経由であなたの元にやって来る人も似たような人が集まる。あなたにとってベストでない1人を受け入れるということは、その向こう先の20人を受け入れるということでもある。

ここまで言えば、「ノー」の大切さがおわかり頂けただろうか。闇雲に断るのはなく、あなたがビジネスに対して、信念や哲学を持って接し、信頼関係を築くべき人たちと丁寧に接しながら、最終的にあなたのビジネスへクライアントとして参加することには、あなたの理想とする人たちだけになっているようにする。それはあなたの経営者としての学ぶべき手腕なのだ。

 

明確な基準やポリシーを定めて自分自身で堅持することで
素晴らしい顧客と出会えるようになる。

 

一流とは「人」である

高級なレストランやホテル。一流と呼ばれるものたちと、そうでないものの違いとは何だろう。内装が豪華絢爛なことだろうか?評価サイトのレビューが良いことだろうか?色々な要因がある中でも取り分け変えが効かないのは、「人材」「人」にある。どんなに豪華なレストランで食事をしても、スタッフの対応が粗雑であれば、また来ようとは思えない。その反対に、インテリアは庶民的だけれど、なんとも感じの良いお店には、また行きたくなる魅力があるものだ。

あなたのビジネスのすべての顧客接点を振り返ってみよう。特にマイクロビジネスだと、あなたの忙しさは尋常ではないかもしれない。だが、その忙しさを顧客に悟らせたら、あなたのお店の魔法は消えてしまう。「なんか良いな」「素敵だな」と思えるその心地良さは、すべてが調和してはじめて出来るもの。サービスの瞬間だけ丁寧だけれど、申し込みの返信は粗雑だとか、アフターサービスに愛情や配慮が掛けられなければ、充分だとは言えない。スタッフがいる場合も同様だ、あなたのかける情熱に匹敵するほど、ビジネスと顧客を大切にして、それでやっと感動のスタートラインに立つ。

 

忙しさはうちに秘めて、すべての接点で顧客をVIPのように扱おう

 

他と違って構わない

あなたのビジネスにおいて他社と違う点はどこだろう?あなたが運営していること以外には、どんな独自性があるだろう?ラグジュアリーであれば良いというわけではなく、優れていることよりも大切なのは違いがあるということだ。どんな些細なことでもいい。一日に数件のエステ予約が慣例なら、一日1組限定にしてもいい。内装にこだわりがあって、ヨーロッパの製品で統一しているとか、食材はどこから仕入れているだとか、顧客にとって有用なことであればどんな点でも構わない。他社にはない些細な違いがたくさん集まると、あなたビジネスだけの独自性になる。そうしてあなたからその商品やサービスを受ける理由が生まれる。

流行やトレンドに逆らっていても良い。業界よりも値段が高くてもいい。伝統がなくとも、柔軟性を売りにしてもいい。時間単位での請求が慣例なら、一日単位や月額制度にしても良い。入会や解約を簡単にするだけでも良いし、お申込みフォームが可愛くデザインされていることでもいい。あなたビジネスだけの独自性が業界や他社からあなたの存在を切り離し、あなたのビジネスに参加する理由になる。大切なのは、成功者やパイオニアの真似をするのではなく、あなたのビジネスらしさを突き詰めて、様々な要素が総合的にあなたのビジネスを演出し、あなたのビジネスの価値を鋭利に際立たせるようにすることだ。

 

他社と同じように勝負する必要はない

 

<この章のまとめ>

  • あなたの商品が売れる理由は、あなたでなければならないから
  • あなたのビジネスだけの独自性が必要になる
  • 信念を否定する人ではなく信念を受け入れ愛してくれる人に精力を注ぐ
  • あなただけ信念や哲学を受け入れていくれる強固なファンと信頼関係を築くこと
  • 弱点は隠そうとしなければ個性になる
  • 「ノー」と言う勇気が真の顧客にサービスを勧める自信になる
  • 明確な基準やポリシーを定めて自分自身で堅持することで素晴らしい顧客と出会えるようになる
  • 忙しさはうちに秘めて、すべての接点で顧客をVIPのように扱おう
  • 他社と同じように勝負する必要はない