CHAPTER 12 プロフェッショナルブランド

 

マーケティングのちからを存分に行使すればどんな商品でも売れてしまう。だがずっと愛され続けるビジネスで在るためには、顧客の手に届いた商品やサービスが飛び抜けて素晴らしいもので在ることが欠かせない。

人は素晴らしい体験も残念な体験も、誰かと共有するものだ。あなたの商品が素晴らしいならば、いまやSNSやウェブメディアで拡散され一気に広まる。だがその反対にマーケティングや肩書きに頼って、あまりに大したことのない商品や配慮の行き届かないサービスを行使してしまえば、その評価も一瞬で広まり、Googleに残って永くビジネスを苦しめることもある。

 

プロフェッショナルをデザインする

あなたの商品が素晴らしいならば、それだけで広告費は必要なくなる。あなたが雑誌やメディアに広告を出さなくとも、あなたの商品を買った顧客があなたに変わって友人に感動を共有する。その広告費はゼロだが、効果は一般的な広告よりも圧倒的に信頼される。あなたの商品、サービスが飛び抜けて素晴らしいことの効果は計り知れない。よく売れる商品は顧客の心を掴む商品だが、一瞬で売り切れてしまう商品は、飛び抜けて素晴らしい感動を与えた商品なのだ。

 

飛び抜けて素晴らしい商品やサービスそのものが広告塔

 

永続的な口コミ

あなたの顧客はあなたのビジネスについて前向きに話をしているだろうか。友人に体験をシェアしたり、ストーリーを共有したりしているだろうか。あなたのウェブサイトは紹介され続けているだろうか。パンフレットやリーフレットをもっと欲しいと言われているだろうか。あなたのビジネスについて、SNSに投稿したり、話題に上がり続けているだろうか。あなたの顧客があなたのビジネスについて前向きに語り続けているなら、あなたのビジネスは永く愛され続けていくことだろう。

ビジネスを盤石にするためには、ほぼすべての顧客があなたのビジネスについて前向きに語るようにならなくてはならない。そのためにも、ペルソナ設定を明確にしSNSファンとのマッチングを良くしたり、顧客と素晴らしい関係を築いたり、前向きな話題に上がり続けるようサービスの各所やフォローに抜かりがないかチェックをしよう。

 

前向きな話題にあがり続けるビジネスであること

 

あらゆるタッチポイントで飛び抜ける

ここまでのシステムを構築すれば、あなたのもとには半自動的にお客さまがやって来るようになっている。ファーストタッチポイントから商品の提供までのシステムすべてをここでもう一度評価して欲しい。SNSの投稿から、ウェブサイト、パンフレット、案内メール、申込みフォーム、商品やサービス、店舗のデザインや心地、アフターサービスなどすべての接点を振り返る。

以前すべてのタッチポイントを振り返りロスを減らすという話をしたが、ここでのポイントはそのひとつひとつのタッチポイントが、他社と比べて、社会的に見て、客観的に見てどの程度素晴らしいのかを評価しよう。デザインひとつとっても、手作り感出てしまっているものではなく(意図しているなら問題ない)、そのひとつひとつが社会的に素晴らしいものであることで、商品やサービスの素晴らしさも際立ち、より心に響くようになるだろう。

顧客の立場に立って想像してみよう。あなたが特別な日に一流ホテルを予約したとする。部屋は素晴らしい景観だったとしてもホテルマンの対応がいまいちだったら?食事が期待した程ではなかったら?掃除がほんの少し甘かったら?素晴らしいビジネスには期待も高まる。メインの商品にちからを入れていても、周辺で残念なポイントがあればビジネスごと興冷めすることもある。

タッチポイントの細部に渡ってこだわりを持とう。商品やサービスに加えて、その周辺にも素晴らしさを付加して考えるのだ。あなたが飛び抜けた商品やサービスを提供すれば、市場は感動する。そして更に周辺のタッチポイントすべてにまでその世界観が及んだならば、誰もあなたの進撃を止めることはできない。そのシステム作りが難しく大変だからこそ、構築すれば他社は追いつかない。意思決定の速さや、ハンドリングのクイックネスはマイクロビジネスだからこその強みであり、大企業が何日も掛けて稟議する内容を、あなたの心ひとつで決めてしまえばいい。

 

すべての接点で飛び抜けて素晴らしくする

 

実益と付加価値

ここまでで「飛び抜けて素晴らしい商品やサービス」に触れてきたが、「素晴らしい」とはどういう状態だろうか。この点を履き違えると、顧客とビジネスとの間に乖離が生まれる。「どれだけ頑張っても顧客が評価してくれない、私達の製品は素晴らしいのに」そう嘆くお門違いなビジネスオーナーは実際に多い。改めて「素晴らしい製品やサービス」について確認しておこう。

 

利益をもたらす

その製品やサービスはビジネス側に利益をもたらすものだろうか。単商品で利益をあげなくとも、別のコンテンツとの連携や相乗によって総合的に利益が出るものであれば良い。まずはビジネス側にとって有益であるコンテンツであることが大前提だ。

 

顧客への実益

ビジネス側が謳っている、効果効能や利点を指す。レストランで言えば美味しい食事を提供することであり、コンサルタントで言えば顧客のキャッシュが増えることだ。ビジネス側の意図するところであり、この点で顧客側との相違があることはほぼ無いだろう。

 

感情的効果

最も注意してほしいのはこの点である。人は感情で動く生き物だ。いくらそんなことはないと豪語しようとも、その原理からは逃れられない。だが精神構造が人それぞれであるために、感情がどう動くのかも個人差がある。ビジネス側が意図するメリットがすべて顧客の感動に繋がっているとは限らない。顧客に利益が出たとしても顧客が気分を害していれば、その取引は失敗している。顧客に実益をもたらすのは基本的なことだが、合わせて顧客を感動させることも意図すること。「実益があり顧客が感動している」その状態ではじめて取引は成功している。顧客の精神構造とあなた(ビジネス側)の精神構造は違うので、あなたが感動するであろうことを準備しているだけでは足りない。目の前の顧客ひとりひとりの挙動に気を配り、感動しているかを確認しながらビジネスを進めよう。人があなたのビジネスについて前向きに話すのは、あなた(ビジネス)が顧客の気持ちを「高揚」させているときなのだ。

 

実益とともに顧客を感動させたとき、あなたのビジネスはシェアされる

 

素晴らしい感動のギフト

顧客を感動させるためのポイントは「期待以上の満足」を与えることだ。言い変えればサプライズをすることであり、そのためには手の内を隠しておく必要がある。顧客と契約を結んだとき、申込みフォームや契約書のなかに「契約頂いた方には花束を贈呈いたします」と明記されていたら、花束を受け取っても大した感動にはならない。ところが不意に花が届くと、今度はぐっと心を動かされる。この製品は翌日お届けしますと言われて、3日後に届いたらイライラする。一方で納品予定が4週間先でも1週間で届いたら素晴らしい気分になる。

相手を感動させる鍵は、自分の出す手札について、わかっていても黙っておくことが大切だ。切り札は相手を驚かせるためにとっておこう。商品やサービスを売り出す際には、ビジネス側の提供できる限界いっぱいまで話してはいけない。提供しようとしていることの60%か70%に留めておいて、実際にサービスを提供するときに期待以上のものを残すようにしよう。相手に喜んでもらうために、サプライズの花は常に隠しておくことだ。

 

友人にプレゼントを贈るように感動をギフトする

 

システムに精通する

WEBやIT業界の進化は目覚ましく、その速度はこれからも加速していくことだろう。その恩恵は無視できない。台帳をめくる作業をIT化すれば1秒で検索できる。以前は1日かかっていたことが1分になり、賢い人が成果を出し続ける。最新のIT技術に触れ続けていよう。苦手だと感じるなら少しずつ慣れていこう。iPhoneやMacの使い方ひとつでも、賢い人とそうでない人とでは圧倒的に差が出る。10秒、20秒の積み重ねが数時間になり、より早い人に淘汰される。それほど「時間」とは大きな意味を持ち、「サービスの質」でなく単なるスピードで差がつくシーンは存外多いものだ。

あなたのビジネスチームにひとりはITに強い人を置いたり、信頼できる仲間に迎えてもいい。ビジネスを運営していれば時間が足りないと感じるシーンは飽きるほどあるだろう。だが忙しいから遅くなっていても、誰もフォローはしてくれない。あなたのビジネスの1時間を1秒にする可能性を秘めているITスキルについて常に触れていこう。

 

最新のITスキルに触れておく

 

プロフェッショナルとは?

本章を通じて、あなたのビジネスがプロフェッショナルの品質を手にすることを意図している。上段から順に言い換えると「素晴らしい製品とサービス」「素晴らしいと噂になる」「すべての接点でデザインともに一流である」「感動を与える」「オンラインでも圧倒的である」これらすべてが一夜にして成せるわけではないが、たゆまぬ努力と研鑽を続け、御社の成長と成功を目指して欲しい。ビジネス世界の明瞭さを端的にあらわすならば「頑張っている」ことは考慮に入らない。顧客や市場の心理を汲めば「最も実力がある会社」が勝つ。成長の時間をゼロには出来ないが、スピーディーに理想の実力に到達するために、到達点を意識し続けよう。

 

プロフェッショナルブランド到達点の要件を取る

 

<この章のまとめ>

  • 飛び抜けて素晴らしい商品やサービスそのものが広告塔になる
  • 前向きな話題にあがり続けるビジネスであること
  • すべての接点で飛び抜けて素晴らしくする
  • 実益とともに顧客を感動させたとき、あなたのビジネスはシェアされる
  • 友人にプレゼントを贈るように感動をギフトする
  • 最新のITスキルに触れておく
  • プロフェッショナルブランド到達点の要件を取る