CHAPTER 02 独自のビジネスパーソナリティーを確立する

 

世の中には、一般的な市場価格であるサービスもあれば、市場価格の10倍、100倍の価格のサービスもある。カット1万円の美容師もいれば、10万円の美容師もいる。年間契約を10万円で結ぶパーソナルスタイリストもいれば、100万円以上の価格でも予約が耐えないパーソナルスタイリストもいる。1000円のスパークリングワインもあれば、100万円以上で製品になる前から予約が完売する、シャンパーニュ地方のワインもある。

特別な存在である彼らは顧客とっても特別であり、価格によって他社と比べられることはない。「こちらの方がお安いわ」という価格競争とは別の次元にあり、顧客のほうから彼らの製品やサービスを心待ちにしているのだ。彼らは一般の市場から独立し、独自のビジネスパーソナリティを築いている。

 

独自のビジネスパーソナリティー

マイクロビジネス成功の鍵は、独自のビジネスパーソナリティの確立に他ならない。あなたの顧客があなたの製品やサービスを心待ちにしカートオープンとともにこぞって予約をする。買った顧客は、満足感や感動に満ち、周囲に誇り高く周囲に話をし、買い逃した顧客は次のカートオープンを今か今かと待ち望んでいる。そんな状況が普通なのだと感覚を調整しよう。それが独自のビジネスパーソナリティーを築くということなのだ。

反対に、競合他社やライバルたちと一般市場のなかであなたが勝負をしたのなら、たちまちに既存のビッグモンスター(大手資本企業)に淘汰されてしまう。大きな資産がある会社やたくさんの顧客やファンを抱えていて人気の人たちは強い。彼らはチームや集団、独自の工場やコミュニティにより、仕事を効率化させて様々な企画を打ち出して来る。WEBサイトの更新ひとつとっても数人や数十人で分担し、素晴らしい作品をアップロードする。

対してあなたは一人もしくは数名で、企画の立案から、SNSやHPの更新、果ては会計処理や、法令の確認、在庫管理やありとあらゆる仕事をこなしながらも、サービスを提供する時間を捻出しなければならない。女性起業の場合、さらに家庭や育児まで時間と愛情を注ぐことも不可欠になるだろう。その大変さのなか他社と比べられて値引きや安売り合戦を仕掛けられたなら、たまったもんじゃない。気付けば仕事に追われ、どんなに頑張っても一日中仕事をしているはずなのに、家計は火の車になってしまう。「なぜ、こんなにも努力しているのに豊かになれないのか?」そう考える経営者は少なくない。つまり、独自のビジネスパーソナリティを築き、顧客の方からあなたを選んでもらう以外に、最初から勝ち目はないのだ。

 

マイクロビジネスの成功は独自のビジネスパーソナリティの確立にある

 

マーケットからの独立

あなたがビジネスを保有しているなら、一度自分のビジネスを振り返ってみよう。顧客は何故あなたの製品やサービスを購入したのだろうか?もしもこれからビジネスを立ち上げる場合であっても、同じことを問いかけてみよう。競合他社や似たサービスの先人たちがいるなかで、何故あなたの製品やサービスを選ぶのだろうか。あなたのビジネスでなければならないその要素をひとつひとつ理解し洗練させていく必要がる。

例えばNetflix社の成功は、動画コンテンツの会員制視聴という新しい文化を確立し、ユーザーを大切にし続け、オリジナルの作品を制作し、更にファンを喜ばせ続けているからだ。iPhoneがここまで浸透したのは、Appleの製品を持つことがステータスになるという顧客心理を、崩さずに守り続けてきたからだ。守り洗練させ続けていかなければならない独自性があるということを意識しよう。ビジネスは立ち止まった瞬間から後退します。あなたのビジネスやサービスが進化を続けなければ継続的な循環さえ難しいのです。何を尖らせていくのか?この自問を折に触れて絶えず続けていこう。

あなたが顧客から選ばれる理由は、あなたでなければならないからだ。たとえ似たような製品サービスがあろうと「あなたの製品を購入したい」「あなたからサービスを受けたい」「あなたがプロデュースする企画に参加したい」その思われてはじめてビジネスは発展の兆しに触れます。そうなり得るためには、ビジネスのビジョンや哲学に対して特別なファンを生み出していくこと。他の製品やサービスに目もくれず、一般の市場から引き離し、ビジネスの特別な一員に招待すること。ビジネスの繁栄は製品やサービスを売ることではなく、まずあなたがファンに特別に接することからはじまるのです。

 

マーケットから独立するには特別なファンを生み出すこと

 

大勢をターゲットにする必要はない

ビジネスのスタートアップに100万人や1000万人、日本中を視野に入れる必要はない。そもそも全員があなたの製品やサービスを買ってしまったら、ビジネスがたちまちに手が回らなくなってしまうだろう。多くの社長たちが「もっとたくさん売れて欲しい」と思いながらも、実際には「多く売れてしまっては困る」状況にあることに気付いておらず、「売れたい」「売れたくない」どちらのアクションも無意識に取ってしまっている。あなたのビジネスでは顧客に最高のサービスを提供するキャパシティーを予め決めておこう。そうすれば、前進することに躊躇する必要がない。

実際には、あなたのビジネスを知っていて、あなたを応援したいと思っている人は、多くても数千人いればOK。そのなかからビジネスに合わせて、特別なファンや特別な顧客が数人から数十人いれば、充分にビジネスを繁栄させていくことが出来るだろう。あなたが丁寧に対応できる数は思っているよりも多くないのだ。

ですので、あなたがもしもビッグモンスターや大きな企業、有名人や著名や先駆者のマネをして大人数向けのアプローチしまったら、最初から死路だ。何故なら、多くの人に愛されるスタンスは、誰にとっても本当の特別には、なり得ないから。あなたはあなたのことを愛する熱心なファンにとって特別であるからこそ選ばれるのだから、最初から意図や発信を広く取る必要はない。あなたのことを信頼し、愛する人に向けて言葉を発し、あなたとあなたのビジネスの器量や経験の充実とともに、徐々に特別に大切に出来る人数を増やしていくこと。そうしていつしかあなたが成長し、大きなコミュニティになってはじめて、大きな視野やマーケットにアプローチすれば良いのだ。

 

大勢を相手にする必要はない
あなたが最高のサービスを提供できる数人から数十人の顧客がいればいい

 

市場価格からの脱却

独自のビジネスパーソナリティーを築けば、価格は一般の市場価格から切り離される。一般的なビジネスでは、『顧客』と『競合他社』と『あなたのビジネス』とで、価格を調整する。他社の類似商品やサービスと価格競争をして、少しでも安くと、効果効能や性能や価格を他社と比較する。あなたもテレビやパソコンを買う時に、どこで買えば安いか一度は調べたことがあるのではないだろうか。

独自のビジネスパーソナリティーを築けば、他社との価格競争とは無縁になる。顧客はあなたの製品やサービスを求めていて、あなたから価値を受け取りたいと考えている。同時にあなた自身も顧客のことを深く理解しており、彼らが認識しているWant(望みや欲求)も認識していないWantも熟知していて、どうすれば喜んでもらえるのか、圧倒的に手厚くサービスをすることが出来る。あなたが特別に大切に出来る人を明確にし、特別にしたい人たちを特別に大切にするからこそ、顧客から特別視されるのだ。

 

顧客をロイヤルカスタマーに絞って価値を提供すれば価格競争をする必要はない

 

特別な存在であるための顧客理解

顧客からビジネスを特別に感じてもらうためには、まずあなたの方から顧客を特別に扱うこと。顧客という関係性のはじまりはお金の支払い後の関係性に限らず、”あなたがサービスを提供したい理想の顧客(見込み顧客)”が、あなたの商品やサービスを見つけた段階から含めて考えると購買の可能性は大きく広がる。

他社では広く多くの人を想定しているので、見込み顧客の数が多く、決済後でなければ対応しきれないこと多いはずだ。しかしながらあなたのビジネスではロイヤルカスタマーを想定しているので、そもそも見込み顧客の数が少なく、大手には出来ない深い配慮が可能になる。あなたのビジネスに参加し最高の体験を味わってもらうために、あなたのビジネスとの出会いの瞬間からサービスを演出していきましょう。そのためにも、あなたは誰よりも顧客のことを理解することに努めよう。

 

年齢/性別/性格/職業/生活時間/趣味/価値観(何に喜怒哀楽を感じているか?ものごとの優先順位は?etc…)/ライフスタイル/生活水準/収入水準/パートナーの有無/好きな雑誌/響くワード/何を望んでいるか?(潜在的欲求と顕在的欲求)/どう扱われると嬉しいか?etc…

 

ビジネスの認知を広める

あなたのビジネスは日本中を見込み客として相手にする必要はない。ではどれくらいの人があなたのビジネスを知り、信頼していれば良いのだろうか。ビジネスの内容や性質にもよって想定される見込み顧客の数は違うけれど、マイクロビジネスの場合、多くても5000人から1万人があなたのビジネスを信頼していれば、充分にビジネスを繁栄させることが可能だ。1000人、2000人でもビジネスを構築することが出来るくらいだ。この数は、SNSやインターネットを駆使すれば難しい数ではない。

大切なのは莫大な認知ではなく『ロイヤルカスタマーになり得るファンがどれくらいいるのか』ということ。辺り構わず不用意に認知を広げても、かえって手間が増えることもある。有名になることではなく、大切にしたい人に焦点を当て続けることをイメージしていこう。では実際に、ロイヤルカスタマーに向けて認知を獲得するためにどんな準備が必要なのか。次の5つのポイントを解説する。

 

一貫した姿勢とメッセージ

あなたの仕事は何なのかをシンプルかつ信頼のおける言葉で繰り返し伝えていく。また、多くの人に向けて発信する場合には、一度に全員が真剣にあなたの話を聞いているわけではないので、繰り返し何度も伝え続けていくことも必要になるだろう。あなたの仕事は何か?あなたのビジョンは何か?あなたのビジネスや参加する顧客がどんな風に社会に貢献し繋がっているのかを伝えていこう。あなたのビジネスの理念や社会貢献性をあなたの手元にメモしておき、相手によってわかりやすく噛み砕いて説明できるよう準備しておいたり、WEB上に表明しておくのも良い練習になるだろう。このメッセージの軸は、変わらず守り続けていくほどに顧客からの信頼は大きくなる。

WEBコンテンツ

人が何か商品やサービスを買う際には、商品についてWEBで検索する。価格が大きな買い物になるほどにその調査はより一層だろう。あなたの記事、SNSの発信、ホームページやブログ、紹介動画や取材記事、購入者の感想など、様々なWEBコンテンツで顧客が知りたいことを先んじて準備しておこう。WEBで決済が必要な商品やサービスにおいては、決済をするためのシステムやランディングページも言わずとも必要になる。

商品、サービスのコンテンツラインナップ

あなたの商品やサービスを受け取りたいという人のなかでも、商品やサービスを、ちょっとだけ試したい方もいれば、しっかりと価値を受け取りたい人など、様々な心理段階の顧客がいる。石橋を叩いて渡りたい人もいれば、その手間すら惜しい人もいる。ですので、どの程度あなたのビジネスに参加したいのか?という気持ちごとに商品やサービスを選べるように。いくつかの形態や価格で、商品・サービスのラインナップを設計しよう。例えば、1万円の商品、サービスが欲しい人もいれば、10万円の上質さや専門性が欲しい人もいる。顧客のモチベーション、欲しい気持ちを汲み取りつつ、あなたのビジネスが循環するように、参加が容易なものからプレミアモデルまで、単商品・単価格ではない。コンテンツ『ラインナップ』で商品、サービスを設計していこう。

あなた自身の情報・哲学

あなたの商品やサービスへの発信とは別に、運営しているあなた自身のこともお客さまは知りたくなる。サービス業など、関係性が近い場合にはより一層重要になるだろう。あなた自身の哲学や考えをSNS、HP、動画などで発信しよう。商品やサービスのファンになる人もいれば、人のファンになる人もいる。他にもビジョンのファン、哲学や考え方のファンと様々な興味の入り口があり、そのパターンは無限だ。もしかすると、代表者のあなたと趣味が同じだからという理由でビジネスに参加してくれるかもしれないし、同じ猫好きというきっかけから仕事に繋がるかもしれない。ビジネスの代表であるあなた自身の情報や哲学、キャラクターもマイクロビジネスにおいて大切な要素のひとつなのだ。

運営と連携ポリシー

運営をはじめて都度方針を決めていては、調子が良い時とそうでないときで、カスタマーサポートやサービスの内容にバラツキが出たり、ビジョン通りのあなたとの誤差が出てしまうこともある。例えばエスティシャンの場合では、『満月の頃に施術したお客さまには丁寧にできたのに、新月の頃に施術したお客さまでは集中できなかった』では、信頼頂けたお客さまに対して、しょうがないことだが申し訳なくも感じる。ビジョンからは外れないように、想定されることへの対応をある程度は事前に決めておくといいだろう。あなた個人としてどうしたいか?よりも、あなたのビジネスやビジョンとして、どう在るべきかを模索し、対応を準備しておくのだ。その範疇は、お客さまへのサポートからSNSでの個人的な発信やコメントやメッセージに対して、どういうものにどう反応するべきか。ということまで、あなたの発信するすべてが運営ポリシーの策定範疇だと考えよう。そうすればどんな時も一定の丁寧さを保つことが出来る。

 

<この章のまとめ>

  • マイクロビジネスの成功は独自のビジネスパーソナリティの確立にある
  • マーケットから独立するには特別なファンを生み出すこと
  • 大勢を相手にする必要はない。あなたが最高のサービスを提供できる数人から数十人の顧客がいればいい
  • 顧客をロイヤルカスタマーに絞って価値を提供すれば価格競争をする必要はない
  • お客さまのことを徹底して理解すること
  • 認知を広げるために必要な準備をしよう