体重や体脂肪を落とすためには、摂取エネルギーを消費エネルギー未満に抑えることがダイエットのセオリーとされています。しかし、「食事を我慢しなければいけない」という思考が強すぎると、精神的にストレスになります。そこで知っておきたいのが「食事誘発性熱産生」の知識です。同じ量を食べても、食事の内容や食べ方によって、エネルギー消費量が異なるのです。今回は食事誘発性熱産生について知り、ストレスフリーなダイエットを目指しましょう。

食事によるエネルギー消費を高める方法

食事をしていると、ぽかぽかと身体が温かくなる経験をしたことはありませんか?このように食事によって身体が温まり、安静にしていても代謝量が増大することを「食事誘発性熱産生」といいます。私達は食事から栄養を摂取する際にもエネルギーを消費しているのです。

1日の総エネルギー消費量は、基礎代謝量(安静時エネルギー消費量)、活動時代謝量(活動時エネルギー消費量)、食事誘発性熱産生の3つに分けられ、食事誘発性熱産生は総エネルギー消費量の10%を占めます。食べるものや食べ方で消費エネルギーが変化するのであれば、より代謝を高め、効率よく痩せたいと思いませんか?食事誘発性熱産生を最大化させるために重要なのが「タンパク質の摂取割合を増やす」ことと「よく噛む」ことです。

タンパク質の割合を増やすと痩せる

三大栄養素のなかで、もっとも食事誘発性熱生産が高いのがタンパク質です。タンパク質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%といわれています。つまり、同じ100kcalを摂取したとしても糖質で摂取した場合はそのうち6kcal、脂質の場合は4kcalほどしか消費されませんが、タンパク質で摂った場合は30kcalがエネルギーとして消費されます。

実際に「同じエネルギー摂取量である高タンパク質食と低タンパク質食を摂取した時の1日あたりの総エネルギー量を比べた場合、高タンパク質食を摂取した方が食事誘発性熱生産量が増加し、エネルギー消費が高まった」という報告があります。これらの内容から、食事におけるタンパク質の摂取割合を増やすと、食事誘発性熱生産が増加し、1日の総エネルギー消費量を高められることが考えられます。

 よく噛んで食べることで代謝量アップ

食事をよく噛まずに飲み込んだり、流動食だけを摂る場合に比べると、よく噛んで食べる方が食事誘発性熱産生は高くなるといわれています。体脂肪には2つの種類があり、一つは白色脂肪組織(細胞)といいます。白色脂肪組織は食事を摂りすぎて必要以上にエネルギー摂取量が多くなると、エネルギーを蓄えるために糖質や脂質を取り込んで肥大化します。 もう一つは褐色脂肪組織(細胞)といい、首や肩、脊柱の両側、腎臓の周りにあり、細胞内にエネルギー産生器官であるミトコンドリアが存在しています。このミトコンドリアの中にある分子によりエネルギーが熱に変換されて消費されます。つまり褐色脂肪細胞を刺激することで痩せやすくなりますが、このミトコンドリアの中にある分子を活性化させる方法が「よく噛む」ことなのです。

さらに、よく噛んでゆっくりと食べることで、あまり噛まずに早く食べるよりも内臓の血流量を増やし、この内臓血流の増加が食事誘発性熱産生を高めてエネルギー消費量を増やすとされています。

まとめ

今、食欲の乱れなどで食べすぎている場合は食事量をコントロールすることもダイエットにおいて必要です。しかし、極端な食事制限は「代謝を上げる機会を逃している」とも言えます。また、同じ摂取エネルギーでも糖質・脂質に偏った食事や早食いのようにあまり噛まないで食べていると、食事誘発性熱産生による消費エネルギーは少なくなります。

やみくもに食事を我慢するのではなくタンパク質の摂取量を増やし、よく噛んで食べることで、栄養面でも心理面でも満足度を上げながら、スリムな身体を手に入れることが出来ます。