現代は昔に比べて花粉症やアレルギーの症状が増えていると言われています。その原因の一つには「衛生の発達」があります。今回は衛生的な生活が免疫システムに与える影響を説明します。

衛生の発達による人体への影響

現代人は衛生の発達で平均寿命を大きく伸ばしてきました。古代人を悩ます多くの感染症を克服できたのは、抗生物質のような医薬品を発明し、クリーンな水道水や下水といった衛生設備を発展させたおかげです。
ただし、この発明が現代人に重大な副作用をもたらしたのも事実です。抗生物質が腸内細菌を殺し、衛生設備が菌との接触を妨げてしまうからです。

菌との接触が免疫システムを強化する

1989年の東西ドイツで観察された事例があります。この時期、東ドイツの生活水準は西ドイツよりも低く、衛生環境はかなり劣悪なものでした。ところが、いざ東西が統一された後に調べてみると、清潔な暮らしをしていた西ドイツの方が、東ドイツよりも花粉症の患者数が4倍も多かったのです。この現象は、東ドイツでは女性の就業人数が多かったため、保育所の利用率が高かったことで起こりました。衛生状態が悪い保育所に預けらた乳幼児の方が微生物にさらされやすく、その分だけ免疫システムが鍛えられたのです。

徹底した衛生管理による問題点

高度に近代化した国ではライフスタイルが大幅に変わり、環境内の微生物や寄生虫との接触が減っています。これらの生物は、人類の進化の上で免疫系の生理反応を司る重要な役割を果たしてきました。かつては身の回りに溢れていた微生物が近代化のプロセスとともに減り、その結果、免疫システムに狂いが出ているのが現状です。

まとめ

現代では新型コロナウイルスの影響もあり、徹底した衛生管理がなされていると言えるでしょう。しかし、過度な除菌や抗生剤の使用は長い目でみると菌バランスの乱れやバリア機能の低下により、免疫機能を低下させていると言えるでしょう。除菌をしすぎない、自然や土と触れ合うなど、日頃の掃除などで清潔さは保ちつつ、常在菌のバランスを保つ心がけが必要です。