CHAPTER 09 ビジネスの年間計画
「どうすればより多く売れるだろうか?」そう考える人のほとんどは、市場にどのような言い方や表現をすれば、自社の商品が売れるだろうかと考えている。しかしながら、あなたのマーケットに対して、商品やサービスを企画した時点である程度勝負は決している。表現や言い方によるところの効果はもちろんあるが、その効果範囲は小さい。そもそもあなたのマーケットが、あなたのビジネスにどれくらいの信頼を置いているのかがすべてだ。
結果は準備段階で決まる
それによって、あなたがリーチできる最大マーケットのなかでも、あなたのリリースする企画にマッチングする人がいて。そのなかであなたを信頼している人に対して、あなたの商品やサービスを買う可能性を考慮できる。表現や言い方は、そのなかでも最終段階に位置していて売上全体の数%ほどの影響力だろう。対してあなたへの信頼の効果は数十パーセントにも及ぶ。商品、サービスは企画時点で勝負のほとんどが決している。だからこそ、下準備を入念にしよう。勝負はリリースではない、下準備段階なのだ。
下準備を侮るなかれ!計画段階で結果が見えている
ビジネスのキャパシティを明確にする
マーケティングとは何からはじめて行くべきだろう。それは顧客へのアプローチでもなく、新規顧客へのアピールでもない。まずは自社のことをよく知ることからはじめよう。あなたは月に何件のクライアントまでなら飛び抜けた関係や成果を築けるだろうか?何件までなら素晴らしい商品体験をギフトできるだろうか?一日何時間までなら、最高の集中力で仕事が出来るだろうか?
うまくいかない人はこう答えるだろう「もちろん!売れただけ!買ってくれるなら、いくらでも!」。だが実際には、そうしたサービスの提供は後半になるに連れて疲れが出る。忙しいけれども終盤には、次の顧客の獲得の必要も出てきて、仕事の忙しさが最高潮のとき、マーケティングにも時間を割かなければいけなくなり、結果対応はずさんにならざるを得ない。ビジネスとはこういうものだと割り切って、いつしか仕事への情熱を失ってしまうかもしれない。それもこれも、はじめにビジネスのキャパシティと顧客の最高体験への責任領域を明確にしなかったからなのだ。
どんなビジネスにも優れた商品やサービスを提供できる限界数がある
その数を超えてクライアントの期待を裏切ってはいけない
自分のキャパシティ以上の顧客を引き受けることは、目先の売上はよくとも、長期的に考えて死路である。あなたのビジネスのキャパシティを明確にし、その数を徹底して守り、顧客にも正直に伝える方がずっといい。もちろん、日々の業務の効率化や、あなた自身の能力の向上も大切な成長であり、それに伴ってキャパシティは増加するだろう。精進は必要だが、無理はしない。顧客への最高体験を担保できるキャパシティを常に意識し、数値化しておこう。その数は成長に伴い、いつでも変更して構わない。きちんとクライアントに対応できるのが20件なら、素直にそう伝えよう。一日に対応できる人数が3人なら、素直にそう書いておこう。自分のキャパシティを知っている人は強い、それを知らずして、人気のビジネスを育てることはできない。
ビジネスのキャパシティを明確化する
あなたの商品、サービスのキャパシティはどれくらいだろうか?商品やサービスが複数の場合は、どの分布(販売割合)が理想的なのかも考えてみよう。
理想のクライアントを明確にする
次にやることは、あなたの理想のクライアント、顧客のイメージを明確にすることだ。どんな人でも、サービスを購入してくれれば良いというものではなく、ビジネスの成長には必ずクライアントの手助けが必要になる。手助けといっても直接仕事を手伝ってくれるわけではないが。先の購入者にとって、どんな人があなたの製品を購入しているのか?誰からの紹介なのか?もあなたのビジネスの付加価値になる。あなたの製品、サービスが素晴らしければ、ビジネスが繁栄するというわけではなく、あなたとあなたのクライアントとであなたのビジネスは広がっていくのだ。そのためには、あなたの顧客がどのような人であって欲しいのかを知っておかなくてはならない。
イメージしてみよう。一緒に時間を過ごすことが楽しい。期日までに素早く支払いをしてくれる。あなたのビジネスを絶賛に友人に勧めてくれる。何度も利用してくれて、利用後もあなたのビジネスのことを大切に考えてくれて、あなたを高く評価してくれる。そんな人物像はどんな人だろう?人と人にはマッチングがあり、あなたのビジネスの価値を効果的に受け取ることが出来る人でなければ、逆に不快に感じる人さえいるはずだ。あなたの理想の顧客はどんな人物でどのような生活をしているのだろうか。
理想の顧客像を明確化する
あなたの理想の顧客像を書き出してみよう。性別、年齢層、職業、どんな生活をしていて、どんな趣味を持っているのか?どんな価値観で何を大切にするのか?思いつく範囲でいくつも挙げておこう。
理想のクライアント像はマーケティング用語でペルソナと呼ばれる。仮面(ペルソナ)から由来しているが、これを期に覚えておこう。ペルソナが明確になったら、その人たちはどこにいるのだろうか?その人たちと新しく関わりを持つためにはどこにアプローチをすれば良いのかを考えてみよう。例えば、広告ひとつとっても、どの広告に掲載するのかによっても、見てくれる(リーチする)人たちは違う。主婦層に人気な広告もあれば、十代に人気な広告もある。この前提を間違うと、あなたの広告活動そのものが徒労に終わる。やみくもにアプローチするのではなく、理想のクライアントがどこにいるのかを考えてみよう。
同じ考え方で、SNSのツールとして何を選ぶべきかも検討することが出来る。Facebookを主に使っている人、Instagramを使っている人、YouTubeを見ている人。そしてそれらの「誰が」使っているのかと合わせて、「どんなつもりで使っているのか」も重要だ。例えば、Facebookをいくらこちらがビジネスツールとして活用したいと思っていても、タイムラインを見ている相手は、「友人の近況をそれとなく見て楽しみたい」と考えているかもしれない。誰が、どんな心づもりでそのツールを使っているのか?それを分析すれば、あなたのビジネスの投稿がどう在れば自然なのかも見えてくる。
理想の顧客との接点を明確化する
あなたの理想の顧客はどこにいるのだろう?そしてどんな心づもりでそこに参加しているのだろうか?顧客の生活の視点に立って思い付くことを書き出しておこう。
あなたのビジネスが繁栄するための市場は、次の3つの要件を満たしておく必要がある。1つ目は、あなたが一緒に仕事をしたいと思えること。2つ目は、あなたを高く評価してくれる人であること。3つ目は、支払い能力があること。マイクロビジネスの場合、この3つが満たされていないといけない。
あなたが心底一緒にいたいと思えるほどの人でなければ、サービス以上の付加価値を提供出来ない。あなたの人間性を尊敬してくれる人とでなければ、素晴らしい成果は築けない。あなたのことが大好きでも、充分な支払い能力がなければ、ビジネスに参加することが難しい。繰り返しになるが、あなたが相手のことが好きあり、相手もあなたが好きであり、充分なキャッシュを持っていること。この3つを理想の顧客像として設定し、その顧客がいる接点を探そう。
その場しのぎのビジネスを作るのなら、こうした厳格なペルソナ設定は必要ない。だがビジネスを繁栄させるという奇跡を自らの手中で感じたいのであれば、顧客のちからを借りなければ不可能だ。
マイクロビジネスの繁栄のためには、顧客も精鋭であること
あなたが一緒に仕事をしたいと思う人はどんな人物像だろうか?
彼らはあなたのどんなところを評価してくれるだろうか?
支払能力があるのは、どんな人だろうか?
ビジネスの価値を明確にする
ビジネスの繁栄の主要を担うのは「顧客の感動」だ。しかしながら多くの起業家が、ビジネスの繁栄のイメージを「売れること」や「自分の預金通帳の数が増えること」をイメージしている。たしかに、単回のキャンペーンで考えれば、より多く売ることが成功の秘訣だろう。だがあなたのビジネスの販売は一度キリではない。これから何度も何十年も続いていくし、続けれいかなければならない。そう考えると、「また次も購入してもらえる」これほどマーケティングにおいてありがたいことはない。売ろうとせずとも、売れていくのだ。この原理は長期戦であるほどに生きてくる。
あなたの商品やサービスにおける顧客の感動を生み出すために、あなたは商品以上の付加価値を、あなたのビジネスに見出し、ときに顧客に伝え、サービスに載せていく必要がある。軒並み並ぶ類似商品や競合他社と圧倒的な差をつけるのは、サービスへの付加価値なのだ。
安価なビジネスホテルと高級な一流ホテルとでは、「睡眠の質」に大して差はない。ベッドが良いとか、部屋が心地良いとか、そのくらいだ。しかし、価格は10倍、もしくは100倍することもある。その違いは睡眠や個室を提供すること以外での付加価値にある。あなたのビジネスにおいても、付加価値を見出してみよう。
あなたのビジネスが顧客のキャッシュを増やしたり、お金を節約することに繋がることはないだろうか?
顧客の時間を節約したり、無駄な機会をなくすることに繋がることはないだろうか?
満足感や喜び、気持ちを明るくしたり、感情的価値を与えらることは何だろうか?
困ったことや苦しみ、マイナスの感情を和らげてあげることは出来ないだろうか?
こうしてあなたの商品やサービスを別の視点から俯瞰することで、あなたの商品と顧客との精神的な繋がりに想いを馳せることが出来る。その先で、「なぜ顧客はあなたの商品を買うのか?」を真に理解できれば、次の機会で顧客にオファーする内容について悩むことは無くなるだろう。マーケティングとはつまるところ、顧客の生活や顧客の心に深く耳を傾け、まるで夫婦の話を聞くように、相手のことを理解しようとすることと同義なのだ。
あなたのビジネスが利己的でなく、真に顧客の生活を豊かにしたいと考えているのなら、あなたは顧客の心に耳をすますだけで、最高のマーケティングが出来るようになるだろう。
顧客の感動が永続的なビジネスの要
市場の調査分析からはじめる
あなたの商品やサービスがあり、顧客との関係性を築くためには、まず顧客に買ってもらうアプローチ。つまりマーケティングを考える必要がある。このとき、うまくいかない人に共通するのが「思い付くことからやってみる」という手法だ。何年もその世界で生きてきた経験豊かな会社うずまく戦場の中で、あなたのビジネスがいきなりうまくいく可能性はごくわずかだし、次回のための評価も難しい。だが、マーケティングというのは、公開してはじめて顧客の目に留まるし、逆に言えば、競合他社の戦略は常に”公開されている”のだ。
これほどありがたいことはない。自分でマーケティングのアプローチをあれこれ試す前に、まずは業界トップの人たち(売れている)人たちの動向を調査してからでも、計画を立てるのは遅くない。あなたが売り出そうとしている商品やサービス、地域、マーケットで、うまくいっている人(会社)を5人ほど挙げて、彼らが何をしているのかをリストアップしてみよう。
例えば、ブログで人気な人は、過去どんな記事を書いて「いいね!」を獲得してきたのか?フォローはメルマガなのか?お申込みはどうしているのか?一日に何記事書いて、何文字程度なのか?ファンは彼らの何を愛しているのか?先駆者のメディアやアプローチの一覧やその結果を分析することで、マーケットに対する市場感覚を試さずとも先取りすることが出来る。社会や市場があなたに合わせてくれることはない。あなたが社会に合わせて、そしてリードすることによって、あなた独自の市場ができる。マイペースではなく、成功するためのペーシングについて、考えてみるいい機会になるだろう。
まず市場のトップを調査する
あなたの業界で成功している人(会社)を挙げてみよう。彼らはどんなアプローチをしてるのだろうか?
ビジネスの計画を立てる
ビジネスの計画を立てるとき、多くの起業家は仕事の予定を考える。だがそれでは、アウトサイドイン思考なのだ。計画を立てる順番のオススメは、まずあなた自身の休暇や余暇、旅行の予定や趣味の時間、健康でいられるための睡眠時間について考えることからはじめよう。次にあなたがトレーニングを行うための時間や、勉強や能力開発に費やす時間について考えよう。
そしてその後、季節やイベントに向けたキャンペーンの計画を立てる。バレンタインの時期は何をするべきか?サマーシーズンは?クリスマスは?とシーズンごとのキャンペーンを考える。次に月ごとのキャパシティやキャンペーンに向けた行うべきタスク、コンテンツ制作スケジュールに目を向ける。
年間計画はキャンペーンとともに推進するため、いつでもあなたの商品が買える状態でないということについても、重ねて付言しておこう。例えば、コンサルタントやコーチがクライアントを募集する場合にも、いつでもカートオープしている人が人気になるのは難しい。キャンペーン月と発売日を決めたら、発売日の2周間前にお知らせをすること、その2周間前からご案内の各種メールやお申し込みページを制作すること。カートオープン後は、フォローアップメッセージを送ったり、顧客の意見を取り入れて、方向性を柔軟に調整したりする。1週間後にはカートを閉じ、関心を示してくれた方にお礼のメッセージを送る、など。事前に出来ることやフォローを含めて、タスクを計画しておこう。こうした一連のキャンペーン期間が一年に何度もあり、繁忙期と休暇期が繰り返されるようなイメージだ。
ビジネスの年間計画を立てる
あなたのビジネスのシーズンごとのキャンペーンを企画してみよう
キャンペーンを企画する
キャンペーンには必ずテーマが必要だ。クリスマスやバレンタインといった季節のイベントにちなんだ話題やメッセージを題材にしてもいいし、さらにそこから顧客の心理状態を推察して、必要なメッセージを打ち出せれば、また精度はあがるだろう。こうしたキャンペーンやイベントは、各社が同じタイミングで仕掛けてくるので、似たコピー似たメッセージ性では差別化が難しい。そこで、あなたのビジネスパーソナリティーに特化した独自の世界観を演出したり、御社のビジョンとイベントイメージとを統合し、独自のメッセージを打ち出すと良いだろう。
例えば、エステティック業界では、どの会社も「美しくなる」「美しいボディを手に入れる」といったコピーを使うだろうし、コーチング業界では、「輝く」「キラキラ」「エレガント」など、使い回されるコピーやワードがある。大切なのは、まったくもって別の表現をすることではなく、あなたのビジネスらしさがほんの少しでも混ざっていて、マーケットが親近感や羨望など感情を動かせるように配慮することだ。
マーケットのライフスタイルや、あなたのビジネスのビジョン、解決するべき問題、社会をどう変えていきたいかなど、大きな見通しをテーマとして打ち出していこう。商品について大きく叫ぶのではなく、テーマを推進し伝えること。それは、商品を売るよりも商品を売ったお客様にどう幸せになって欲しいかを伝えると爽やかなように。モノよりも本質を全面に出すことで、人は安心して好感を持つことができる。
キャンペーンにはテーマが必要
キャンペーンごとにテーマやメッセージを付加してみよう
実施するキャンペーンとテーマを決めたら、今度はひとつのキャンペーンを時間軸に沿って、どんなタスクが必要なのかを考えてみよう。
1.キャンペーンの開始日と終了日
いつからキャンペーンを開始するのか、また販売終了はいつなのか?キャンペーン期間を考える。カレンダーにキャンペーン予定とテーマについて線を引こう。
2.SNS発信
キャンペーンやテーマを好意的に受け取ってもらえるよう、心理的な下準備をメッセージとして伝える。商品やサービスは匂わないでおこう。テーマに沿ったインスピレーションのエピソードを披露してもいいし、個人の日記の延長として哲学を伝えても良いだろう。ここでの発信が最大共感幅になるので、あまり深く掘り下げずに、多くの人が共感できる内容であることが望ましい。
3.コンテンツ発信
SNS、メルマガやLINE、自社HPなどで、あなたのキャンペーンに対するコンテンツをシェアする。コーチングであれば「才能を引き出す解説」、エステティックであれば「美脚メソッド」など、見込み顧客の役に立つコンテンツ披露や、発信を行う。信頼や関心を徐々に高める段階である。
4.関連イベント
発売前のイベントや、講座やセミナー、ミーティング、プレスリリース、パーティーなど、キャンペーンの盛り上がりを演出するイベントについて考える。これは商品やサービスとの相性によって企画してもいいし、企画しなくてもいい。リアルな場でもいいし、オンラインのコンテンツでも構わない。あくまで盛り上がりを演出する「何か」だ。
5.カートオープン
キャンペーンについての盛り上がりが最高潮のタイミングでカートオープン(発売日)を決めよう。何曜日がいいのか?縁起日はどうするか?月の満ち欠けとの位置取りは?オープン時間は何時が好ましいのか?顧客のライフスタイルや心理を推察してカートオープンのタイミングを決める。また販売終了日も決めておこう。多くの場合、販売終了日に駆け込み注文があるので、LINEやメルマガなど、オウンドメディアにおいて、販売終了のタイミングはフォローしよう。
キャンペーン計画の一例
1.キャンペーン期間
「○○キャンペーン」1/1〜1/30
2.SNS発信
「○○について」1/1
「○○について」1/3・・・
3.コンテンツ発信
「○○の記事」1/10
「○○の動画」1/12・・・
4.イベント開催
募集開始:12/1
募集終了:12/10
開催日1/20
5.カートオープン
販売開始:1/24 18:00
販売終了:1/30 23:59
キャンペーンの計画を立ててみよう。慣れないうちはほんの一部でもいいし簡易的にしてもいい。出来る範囲から計画を意図する練習をはじめよう。
<この章のまとめ>
- 下準備を侮るなかれ!計画段階で結果が見えている
- どんなビジネスにも優れた商品やサービスを提供できる限界数がある
その数を超えてクライアントの期待を裏切ってはいけない - ビジネスのキャパシティを明確化する
- 理想の顧客像を明確化する
- 理想の顧客との接点を明確化する
- マイクロビジネスの繁栄のためには、顧客も精鋭であること
- 顧客の感動が永続的なビジネスの要
- まず市場のトップを調査する
- ビジネスの年間計画を立てる
- キャンペーンにはテーマが必要
- キャンペーンの計画は完全でなくてもいい