下半身の自重トレーニングについて紹介します。基本的な運動機能の習得としてスクワットが数あるトレーニングのなかでも最も基盤かつ包括的なものです。しかしながら実際に行ってみるとスクワットをして下半身が筋肉痛になるとその日はトレーニングを休むべきかと考えるかもしれません。そんな日にも今回紹介する補助種目を行うことで、下半身のトレーニングを日々行い、それに伴い各種ホルモンや血流を整える効果が期待できます。
自重スクワットが基盤である理由
数あるトレーニング種目のなかでも最初にオススメしたいのは自重スクワットです。※膝や腰が痛くなりがちな方は別の種目を優先して下さい。自重スクワットで主に狙う筋肉は大殿筋であり、次いでハムストリングスです。大殿筋は人体最大の力を発揮する筋肉であり、全身の運動機能に大きく関わっています。大きな筋肉を鍛えることで神経系やホルモンが活性化して鍛えていない部位にも効果を発揮することが期待できます。大殿筋に次いでハムストリングスも同様に大きく強い筋肉であるために、まずは自重スクワットにおいて大殿筋やハムストリングスを中心としてトレーニングすることは全身の効率的な発展に理にかなっています。また、大殿筋の機能が強くなることで、日常生活の「歩く」「座る」といった基本的な動作が安定します。それによって全身の筋肉が連動して正しく活動できるようになるために、スクワットを中心としたトレーニングで全身の身体機能が向上し発展することができます。
自分に合ったトレーニング頻度を見極める
自重スクワットと補助種目の解説において少し触れましたが、「トレーニングは毎日行うべきか」それとも「日を空けて行うべきか」という選択があります。最終的に目指すボディラインや運動経験、遺伝的筋肉の回復度、普段の生活週間などさまざまな要因があって、誰しもかくあるべきという理論は存在しません。トレーニングを行いながら自分自身の身体の反応を見て、適切なトレーニング頻度を見極めていきましょう。
基本的な考え方だけ解説しますので、頻度を考える参考にして下さい。まずは「運動」そのものは毎日行った方がいい。というのは基本的な動物の原則です。私たち動物は動くことで調子を整える生き物であり、寝たきりの状態や動かない状態が続くと身体の機能を低下させるだけでなく、体調を悪くしてしまいます。これは毎日動き、活動し、体温を上げ、血流を上げることによって、身体の組織を整えたり、電解質や水分の調整を行ったり、身体の回復に必要なホルモンの分泌を促したり、血液の循環を促したりと様々な健康要素があり、私たちは基本的に毎日運動することを前提にした身体構造をしています。
しかしながら、トレーニングにおいては「3日に1回」「2日に1回」が良いなどと見聞きしたことがあると思います。これは、健康に対する「運動」を見ているわけでなく、運動に対して「筋肉」を見たときの見解です。具体的には重度に追い込むトレーニングを行った際など「筋肉の回復には最大72時間程度必要とする」という筋肉の回復期間のことを指しています。つまり運動頻度の理想は「毎日」であるが、筋肉の回復には「3日を要す」といった具合です。よく間違われやすいポイントなので整理して覚えておきましょう。
ここで補助種目という考え方に至ります。例えば1日目に自重スクワットをして筋肉痛になった場合、2日目に運動は必要であるが、既に傷んだ大殿筋をトレーニングしても回復を阻害してしまい逆効果です。そこで腸腰筋、ふくらはぎなどの別の筋肉をトレーニングをすることによって、大殿筋を休ませたまま運動をすることが可能となり、「運動」と「筋力トレーニング」のどちらも得ることが出来ます。連続せず休めば良いと思いがちですが、基本的に運動は毎日出来るほど先述した各種ホルモンなどの理由から回復にも健康にも良いものであり、筋肉痛の回復においても運動によって血流をあげる方が回復能力が向上するため、毎日の運動が理想です。
ですが、高強度(自分の限界能力を超えた負荷)で毎日トレーニングを行ったときには回復が難しくなります。1日目、2日目、3日目とトレーニングメニューを分けたとしても、回復には最大72時間(約3日)であることを考えてみましょう。1日目の種目の回復を翌日に掛けて行い、2日目においては、1日目の部位と2日目の部位と回復時期が被り、最大で3箇所分の回復が並行して行われることとなります。筋肉の回復は食事と睡眠を基本として様々な要素で行われていくので、食事量や睡眠量が3倍等の爆発的に増えることはないことから、連日行った際には身体の回復が段々と追い付かなくなっていきます。この回復できる量とトレーニング量は、トレーニング経験と共に増大していきますが、往々にしてトレーニング量よりも回復量の方が先に頭打ちをして、だんだん身体がだるく疲れが取れにくくなっていきます。
そうしたとき、食事や栄養の量を増やしたり睡眠の時間や質を向上させたりと工夫しながらも、運動と休息のバランスはどの程度が適正かという視点で個人差が生まれ、結果的に毎日トレーニングすることが最も健康度を高める人もいれば、3日に1回が最も健康度が高い人、1週間に1回程度がベストな人と、トレーニング頻度に個人差が生まれます。経験を元に、自分自身のベストを見極めることが、周囲のトレーニング理論に合わせることより大切なことは明白なので、自分自身で試行錯誤をしながらも、運動と休養のベストサイクルを自身で調整しながら見極めていきましょう。
自重スクワットのやり方
これまでの記事にて、自重スクワットを習得する方法は「しゃがんで、立つ」のようにまずは、動作を機能としてやってみることが重要だとお話しました。ぜひ一度「しゃがんで、立つ」を連続してやってみて下さい。その上で、ここではもう少しトレーニング効果を高めるためのスクワットの方法について触れていきます。
まずは立ってみましょう。そのとき足幅を肩幅より少し広げます。つま先は自然と外に開く位置にします。
次に軽く胸を張ります。この「胸を張る」という動作をするとき、お腹を前に出してしまう人もいます。骨盤後傾タイプに多いのですが、胸椎の動きが固いために胸がうまく動かせず、動かしやすい腰椎が動いてしまうといったものです。背骨の肋骨から上の胸部を胸椎、背骨の肋骨下部から骨盤までを腰椎といいます。腰椎はあまり動かさず、胸椎を張りたいので、胸を張る際には胸部のより上部を意識して張るようにすると良いでしょう。繰り返すうち胸椎の動きは自然と良くなっていくので、最初はうまく動かなかったとしても意識だけ丁寧にしておけば問題ありません。
胸を張ったら上半身はその状態でキープしたまま踵に重心を乗せて、足の付根を軽く脱力することでお尻を床に近づけていきます。このとき、バランスの取れる範囲で出来る範囲で重心が後ろにあるまま身体を下げていきましょう。バランスを取るのが難しいと感じた方は、まず何かに掴まってやってみるのも良いでしょう。胸を張ったままお尻を下ろすという意識が大切です。上半身が傾いて頭が前に出ていくほどに、やっている本人としては視界が下がるのでしゃがんでいるようにも感じますが、極端に表現すると上半身だけくの字におっても下半身のトレーニングにはならないので、上半身は固定したままお尻を床に近付けると正確です。
お尻を床に近づけていくと、太ももが地面と水平になった局面を超えて、完全にしゃがんでしまう局面に到達します。この太ももが地面と水平になった局面と、完全にしゃがんでしまう間にしゃがむ深さのベストポイントがあります。完全にしゃがんでしまうと足のちからは脱力します。するとトレーニングの効果が落ちてしまうので、下半身のちからが抜けるよりも少し手前で折り返します。この太ももが地面と水平になる局面を超えて、下半身のちからが脱力しないお尻の高さを覚えておいて、その高さに向けてお尻を降ろします。お尻が最も下がった位置で骨盤を若干前傾方向に回転させて、お尻を突き出すようにすると、足よりもお尻で体重を支える比重が増えます。スクワットの最下部でお尻を張るのは女性に人気のトレーニングテクニックです。お尻を張ろうとすると、身体が前に傾いたり、浅いスクワットになったりしがちなので、上半身固定と下ろす高さは変わらないように注意しましょう。
スクワット最下部に到達したら、床を足で押してお尻を持ち上げていきます。その際、足の小指側により強くちからを入れるよう意識します。親指側にちからが入ってしまうと膝を痛めやすいので、スクワットで床を押す際には少し小指側を強く蹴るようイメージすると安全です。上半身がグラグラしないように、足のちからが左右均等になるように心掛けながらお尻を高い位置に押し上げます。
スクワットでお尻を高くしていくと、だんだんと足のちからが抜けて完全に直立すると脱力してしまいます。スクワット最下部と同じように下半身のちからが抜けない高さで折り返す必要があります。スクワットは最も酸素を使う種目なので、無意識にラクをしてしまいがちです。そのためスクワット上部で負荷が抜けて腰が前に出ている人は多いものです。スクワット上部の負荷が抜けない高さを確認しておきましょう。スクワット最下部からお尻を持ち上げていき、太ももが地面と水平を超えて少しずつ後ろ腿のちからが弱まっていき、次に前腿だけに負荷が乗り、最終的には直立して負荷が抜けます。スクワットの高さは後ろ腿の負荷が抜けきらない位置が最高高さです。そうすると太ももの角度が水平を超えて45度あたりで負荷が消失するため、思ったよりもお尻の位置が低い位置が最高高さになります。男性であればお尻よりも脚を優先することが多いため上げきってしまっても問題ないのですが、女性であればお尻のかたちや仕上がりは大切かと思います。お尻の位置を高くし過ぎることで後ろ腿の負荷が抜けてしまうと、前腿だけ負荷が乗り続けている状態になります。するとスクワット10回したときのトレーニング効果のイメージでは、前腿が1、2、3…10回となるのに対して、後ろ腿は1、0(抜ける)、1、0…1回と毎回休んで1回ずつ行う状態になっています。すると、お尻を美しくしようとスクワットをすると前腿ばかり発達してしまうことになるので、後ろ腿の負荷が抜けない範囲で最もお尻の高い位置がスクワットの最高高さです。
スクワットひとつ考えることは多いもので、最初はただ「しゃがんで、立つ」ようにします。慣れて来たらまず体が左右にブレないようにしたり、小指側で地面を押すようにしたりと意識出来る幅を徐々に広げていきましょう。身体を動かすことに頭を使い過ぎても本末転倒ですので、やりやすいように慣れながら進めていく姿勢を持つと楽しく続けられます。
下半身の補助種目①カーフレイズ
下半身の補助種目(別種目)として、オススメしたいのが「カーフレイズ」です。動作は非常に簡単で立った状態から、踵を上げてつま先立ちになり、次にゆっくりと踵を降ろし、完全に着地する前にまた踵をあげます。つまり踵の上げ下げを行う運動です。つま先立ちになって安定しないときは、手すりや壁に手を付いて行うと安定します。この運動は非常に簡単でどこででも出来るために、出先やちょっとした合間などで出来る点も嬉しいポイントのひとつですが安全にはご留意を。1セット20〜30回を目安に無理なく行ってみて下さい。最初のうちは20回出来なくとも、続けているうちに自然と回数が増えていくので安心して適度に行えばそれでOKです。テンポが早いとアキレス腱の収縮運動になってしまうので、ふくらはぎの収縮を意識しながらゆっくりと行いましょう。
慣れて来たら、踵を持ち上げる際には素早く行い、下げる際にはゆっくりと、そして最下部では一度動きを止めて、また素早くあげるようにしましょう。この理由は、ふくらはぎの筋肉は多羽状筋という筋繊維を持っており、多羽状筋は発揮筋力が高いが素早い収縮が苦手であるという特徴を持っています。そのため、多羽状筋が苦手な素早い動作を行うことでトレーニング効率を高めることが期待できます。またカーフレイズ最下部で一度動きを止めるのは、アキレス腱の弾性を完全に消失させて(アキレス腱が縮まるちからで動きが補助されることを防ぎ)、純粋なふくらはぎの筋運動にするためです。
更に細かな点にはなりますが、膝を伸ばした状態で行うとふくらはぎ下部のヒラメ筋中心のトレーニングとなり、膝を若干屈曲させた状態で行うとふくらはぎ上部の腓腹筋中心のトレーニングとなります。トレーニング初期では単純なカーフレイズ動作として行うものですが、だんだんと慣れてきたときには、ふくらはぎの張り感を付けて足首は細くすることで足のクビレラインを強調したいなど考えるようになり審美眼が磨かれていくものです。ふくらはぎ上部と下部の鍛え分けテクニックは足のラインをデザインする際にご活用下さい。
運動が本当に久しい方は焦らずゆっくりと進めるようにしましょう。カーフ(ふくらはぎ)は第二の心臓と呼ばれるほど、血流の改善において効果的なので健康への寄与が高いものですが、アキレス腱は久々に動かすと固くなっており炎症しやすくなっています。1ヶ月程度運動を重ねるにつれて、アキレス腱の弾性も回復しますので、運動初期においては焦らず1ヶ月程度はゆるやかな期間を設けると、腱の炎症に優しくなっています。2ヶ月程度継続して、両足30回が難なく出来るようになれば、片足ずつ行い30回を目指しましょう。片足30回出来るようになれば、健康上の基礎ラインはクリアしていると言えます。
下半身の補助種目②レッグレイズ
次に紹介する種目は「レッグレイズ」です。この種目は、仰向けに寝た状態で、足をピンと伸ばし、息を吐きながらゆっくりとつま先を持ち上げ、息を吸いながらゆっくりと足を降ろし、足の昇降をする運動です。足をあげる局面では、90度まで足をあげると負荷が抜けてしまうので、60度程度の負荷が抜けないギリギリの位置を確認してその場所に向かって足を上げていきます。下げる局面では、一気に降ろしたり、地面に付いてしまうと負荷が抜けてしまうので、地面につく直前の位置でキープします。上げ下げに転ずる局面では、勢いをつけてしまうと運動の効果が落ちてしまうため、上げた頂点と下げた水平点では速度を落とし、反動を消失させて上げ下げするようにしましょう。
運動が久しい方は、一度も上げられないことがあります。その場合は膝を曲げて行うと若干楽に出来ます。しかしながら、膝を曲げてしまうと本来この種目でトレーニングしたい腸腰筋よりも、腹筋上部の活動が高くなってしまいますので、可能なら膝は伸ばして行う方が望ましいです。どなたか補助をしてくれる方がお近くにいる場合には、膝を伸ばした状態で行い、上げ下げの際に手で持ち上げてもらうようにするとベストです。
こちら最初は、1セット8〜10回程度を目安に行い、慣れてきたら1セット30回×3セットを目指しましょう。30回連続して出来るようになれば、健康上の基礎ラインはクリアしていると言えます。
下半身の補助種目③ヒップリフト
最後に紹介する種目は「ヒップリフト」です。仰向けで寝た状態から、膝を立てて、お尻を持ち上げます。息を吸いながらお尻を持ち上げて、息を吐きながらお尻を下げていきます。上げた頂点では、背中まで持ち上げてしまうと腰に負荷が掛かってしまうので、お尻を最大限持ち上げながらも背中が反らない位置まで上げます、下げた水平点ではお尻が床につく直前で止めるよにしましょう。足の置く位置を丁寧に揃えて、動きが完全に左右対称になるようコントロールすることを注意して行いましょう。どうしても辛くなってくると、左右に身体を捻ってしまいがちですが、そうすると全身の筋力のバランスが崩れてしまうので、左右対称に一定のスピードで上げ下げをコントロールすることを意識しましょう。足幅や足の位置は実践しながら自分のやりやすいように調整すればOKです。
1セット10〜20回を目安にやってみましょう。慣れてきたら30回×3セットほど出来るようになると良いでしょう。この記事で紹介した種目のなかでは最も難易度が低いので、習得は早いかもしれません。フォームや一定の速度に気を付けて、丁寧に行うことを心掛けましょう。
まとめ
下半身のトレーニングは健康への貢献が高い
自重スクワットで全身の筋肉が発達する
実践しながら自分に合ったトレーニング頻度を見極める
カーフレイズで全身の血流が高まる
レッズレイズでへそ下のスッキリが出来る
ヒップリフトは丸いお尻をつくる