CHAPTER 04 顧客の「欲しい!」を生み出す販売戦術

 

以前、僕がチョコレートを期間限定で販売したときのこと。小ロット且つ最高品質の素材を使い、素晴らしい職人による手作りなため原価も高くなり、販売価格はなんと33000円になりました。多くの人が「そんな高価なチョコレートなんて売れない」と言うなか、僕の選んだ戦術は、『完成品ではなく、完成までのストーリーを売る』ということでした。多くのチョコレート会社のように、完成品を小売店に並べて販売するのではなく、草案段階からSNSで告知し、すべてのプロセスを共有してしまうのです。

SNSを見るユーザーは『チョコレートをつくる』という過程を共に楽しんでくれました。開発状況や進展があれば都度記事にして投稿し、苦悩や大変な部分もタイムリーに更新しました。そうして、数ヶ月間ハラハラどきどきと興奮しながら、SNSでの仲間との会話は盛り上がり、ようやく完成間近な頃には価格は問題ではなくなっていました。ある種の達成感とともに、プロセスを共有したSNSのファンたちは完成したチョコレートを予約してくれました。彼らが手にとったのは、完成品ではなく、完成までのプロセスなのです。

 

完成品よりも完成までのストーリーを売る

 

ほとんどの起業家は、自分を良く見せ過ぎています。お客さまに提供する製品やサービスは完成されている必要がありますが、プロセスまで完璧でなくとも良いのです。むしろ、『出来ないことがある』『苦労して進まない』『格好悪い面が垣間見えている』方が、人間としての信頼を得ます。大切なのは、完璧であることではなく、誠実であること。「お客さまへより良い価値を届けたい」「素晴らしい製品を作りたい」という、その情熱が人を動かし、商品に物語をつくり、自然と売れていく商品になるのです。

 

製品は完成されていても、プロセスまで完璧である必要はない

 

 

必要なのは値引きか!?価格と信頼の天秤

 

ある2人のエステティシャンが起業したとします。Aさんは、エステティシャン歴5年目で独立。個人のサロンを構え、予約が入れば施術をし、一時間あたり5000円の施術をします。広告はホットペッパーや自社のWEBサイト、チラシ等で行っており、お客さまは他社とサービスや価格を比べて、クーポンなどを使いながら予約をします。対してBさんは、個人でエスティシャンをしていて、マンションの一室をサロンとしてオープンしています。芸能人や名立たる人たちがお忍びでやって来ては、一時間あたり数万円から数十万円の料金を貰っています。

多くの人がAさんのビジネスをします。できるだけ安く展開し、クーポンや値引きを行い、他社よりもお買い得であることをアピールします。経営はギリギリで、だからこそ、より多く売らねばならないと、さらなる値引きでたくさんの顧客を獲得しようとします。様々な顧客からの要望に応えようとし、気付けば忙しいのに利益はなく、「なんでもします。売れるなら」という状態です。ですが残念なことに、Aさんが必死になればなるほど、経営は苦しくなります。Aさんの顧客は、Aさんのビジネスを選んでいるわけでなく、誰でも良いから安くサービスを提供して欲しいだけなのです。Aさんの価格があがれば、また別の人を探すでしょう。

あなたが目指すべきことは、自分の仕事に高い価値を見出し、その価値を共有できる(わかってくれる)人たちにサービスを提供することなのです。あなたがどんな顧客が望ましいのかを明確にし、条件を定めて線引し、特別な人たちだけに特別なサービスを提供することなのです。決して、価格だけを高くして一人勝ちしようとするのではなく、製品やサービスを購入してくれた顧客を、丁寧に時間をかけてケアし、最高の体験を提供するための価格設定をしましょう。顧客は、サービスに期待以上の満足をし、周囲に口込んで友人を紹介してくれます。そしてそのご友人は、あなたの理想の顧客像にマッチしているはずです。あなたが追いかけるのは利益ではなく、充実した信頼関係なのです。

 

求められているのは安さではなく、価値と信頼

 

フォーカスは誰に向けるのか?

 

多くの起業家が新規顧客にばかり目を向けています。商品を買ってくれた人よりも、まだ商品を買っていない人にどうやって売るか?と試行錯誤ばかりしている。もっと利益をあげるためには、マーケットの拡大が必要だと考え、より多く売ろうと躍起になっています。しかしながら、本来あなたが時間と思考を費やすべきなのは、「あなたの商品を買っていない人」ではなく「あなたの商品を買った人」であるはずです。

新規顧客の獲得や、クレームへの対処。つまりあなたのビジネスに賛同していない人たちに向けた思考の根幹は、「お金がなくなると困る」「人気がなくなると困る」という恐怖からはじまっています。嬉しいことよりも恐怖のほうが感情的に強く影響するので、感情にひっぱられています。これでは、この先集まるのは、あなたのビジネスに賛同しない人とその対応でしょう。フォーカスがずれていると死路なのです。

ビジネスのフォーカスは、常に「素晴らしい顧客」に向けましょう。「どうすればもっと喜んで貰えるだろうか?」「どうすればより高い価値をギフトできるだろうか?」と思考を積み重ねます。そうやって新しいサービスが生まれ、あなたのビジネスは成長するのです。

 

顧客を喜ばせることでしかビジネスは成長しない

 

あなたのサービスが価値を生み出し、顧客のライフスタイルが良くなったり、成果が出たり、喜んでもらえたときには、「私たちのサービスは素晴らしいのだ」と自らを誇示するのではなく「私たちの顧客は素晴らしい」と顧客を主役にしましょう。あなたのビジネスをCMするよりも、あなたの顧客をCMしましょう。あなたのビジネスがどれだけ成長したか?よりも、あなたのビジネスでどれだけの人が豊かに幸せになっているか?を周囲は見ています。

あなたの顧客の幸せと成功に思考と行動をフォーカスし、成果が出たのであれば顧客を後押ししましょう。あなたの武勇伝は多くの人に求められることはありませんが、顧客のサクセスストーリーは広まっていくものです。武勇伝で得られるものが、「すごいね」と誉めてくれる「聴衆」であるとすれば、顧客のサクセスストーリーがもたらしてくれるものは、「新しい顧客との機会」です。あなたが世界に要求していることが「自尊心」ではなく、「仕事の機会」であるのであれば、フォーカスするべきなのは、自分ではなく「顧客の成功」なのです。

 

自分を宣伝するのではなく、顧客を誇るだけでいい

 

必要なのものか?欲しいものか?

 

あなたがこれまでに購入してきたものやサービスを思い返してみましょう。あなたが意気揚々と買ったそのハンドバッグよりも、ずっと安く、ずっと大きく、たくさん収納が効くバッグが多々あるなかで、どうしてそのハンドバッグを購入したのでしょうか。あなたが買ったとても嬉しかったお気に入りの一着よりも、ずっと安い服はいくらでもあるのに、どうしてその服を選んだのでしょうか。答えは簡単!「それが欲しかったから」ですよね。

私たちは、欲しいものを買います。ときに、あれこれと理由をつけて、必要だからと思考を巡らせますが、必要性は実際二の次で、本当は欲しいから欲しい。欲しい理由やお金を払う理由に必要性を探しているだけなのです。シャネルのバッグも、カルティエの時計も、ベンツの車も必要かと言えば、必要ではありません。それを買うのは、それが欲しいからなのです。

ですがしばしば、ビジネスオーナーたちは、必要性をアピールしてしまいます。「あなたにはこれがなくてはならないのだ」と理論的に説明を延々と繰り返して、お客さまはあくびを噛み殺して、早く終わらないかなと夕飯のおかずに何が食べたいかを考えながら、あなたの話を聞いているフリをします。あなたが起業のスタートアップであったり、製品やサービスに自信がなかったりすると尚更に、「私は間違っていない」と必要性をアピールしたくなります。

シャネルのバッグを売るのであれば、「バッグの中にどれだけの手荷物が収納できるか」を説明する必要はありません。「シャネルのバッグを持って、颯爽と歩くお客さま自身」をイメージしてもらえれば事足りるのです。

あなたがビジネスオーナーであるのであれば、少し力を抜いて考えてみましょう。リラックスして、音楽を聞いてみても良いかもしれません。お客さまに伝えるべきことは、思っているよりもシンプルで、思っているよりも身近で、思っているよりも簡単な言葉で良いのです。ビジネスを運営する本気度は、うちに秘めて、お客さまに伝えるべきときに適度に脱力が出来たなら、あなたのビジネスは多くの人に買い求めてもらえることでしょう。

 

お客さまが欲しいものをお客さまが嬉しい言葉で伝える

必要性はほんの少し織り交ぜるだけでいい

 

 

<この章のまとめ>

  • 完成品よりも完成までのストーリーを売る
  • 製品は完成されていてもプロセスまで完璧である必要はない
  • 求められているのは安さではなく、価値と信頼
  • 顧客を喜ばせることでしかビジネスは成長しない
  • 自分を宣伝するのではなく、顧客を誇るだけでいい
  • お客さまが欲しいものをお客さまが嬉しい言葉で伝える。必要性はほんの少し織り交ぜるだけ。