CHAPTER 13 マーケティング・エンドライン
ビジネスパーソナリティー確立の最後プロセスは、成功のシェアとキャンペーンの分析だ。はじめてのキャンペーンの目的は成功よりも経験にあり、単商品で売上を考えていたものを、キャンペーンという大きく包括するビジネス運営体系を体感し慣れていくことにある。従って成果に関わらずこの分析フェーズを特に初期段階においては入念に行おう。学びをチーム全員で共有すれば、何度でも利益を生み出すことができる強固な資産が手に入る。
レスポンスを分析する
まずはこれまでのひとつひとつのステップを振り返り、レスポンスの数を集める。キャンペーンフロントに用いたSNSの投稿のいいね!の数、フリーコンテンツのダウンロード数、フロントコンテンツの販売数、WEBサイトのインサイト(アクセス数)、販売ページのインサイト、ミドルコンテンツの申込み数、インサイトに対する購入の割合、オウンドメディアの登録数と推移。数という数を計れるだけ計り記帳する。
すると、、、SNSではどこで盛り上がったのか?うまく行かなかったときはどうしてなのか?お申込みの割合はどこで伸びていて、その理由は何なのか?何がウケて何が関心がなかったのか?時系列順に全体を俯瞰して推察すれば次のキャンペーンに活かせる。この生データはどんなビジネスブックにもないあなたのビジネスに最適化された最高純度の学びだ。この経験はほんの少しも逃さず次に活かそう。
キャンペーン内の数を測定し分析すれば次に活かす学びが見える
謝辞と実績を周知する
数を測定したら、マーケットに対するレスポンスを返そう。レスポンスの内容は成果のブランディングと充分な謝辞だ。キャンペーン終了後は、市場のなかであなたのビジネスの格をあげるチャンスでもある。
最初はよく知られていないあなたのビジネスだが、「ありがとうございます。今回の◎◎キャンペーンではおかげさまで◎◎名さまにご参加頂き、◎◎もの成果を出すことが出来ました。今後とも弊社をよろしくお願いします。」と謝辞のなかに具体的な数値を織り交ぜることで、「実績があること」「人気が出たこと」「信頼できる(嘘でない)ビジネスであること」などが推察できる。今回キャンペーンを通り過ぎた人も「次回は参加してみようかな」「メディアをフォローしてみようかな」など、惹きつけることができる。
計測した数値のなかから、市場にとって歓迎される事例や数値を話に出して、お礼とともにさり気なく伝えよう。また、シェアする内容の優先としては、「謝辞」→「実績」の順位が望ましく、実績や自社のアピールが謝辞を超えて大きくなるほど品性を疑われるので、必ず謝辞のボリュームを大きく取り、そのなかで実績を織り交ぜるようにすれば、発言の立ち位置を間違えることもないだろう。
人間関係に置き換えれば、発言の優先順位を間違えることはないので、ここでも器量が試される。代表者の人格や品性は所々で必要になり、信頼を積み重ねるのか、市場をがっかりさせるのかと分かれ道になるので、改めて自己研鑽に励むこと。
成果のなかから実績になる数値を取り出し、お礼と共に伝える
ストーリーでビジネスを印象づける
NIKEのスローガン「JUST DO IT」は世界でもよく知られた理念だろう。NIKEのCMの最後にはほぼこの言葉が出てくる。CMの内容は、シューズを広告したり購入を勧めるものではない。「挑戦」をモチーフにした印象的なストーリーを展開し最後にJUST DO ITで幕を閉じる。シューズメーカーだがほとんどシューズは登場しない。挑戦のストーリーを印象付けその象徴としてNIKEが君臨するという図式だ。
CMのYouTube動画はシェアされ拡散し、ファンはそのインスピレーションに憧れやはりNIKEを選ぶ。印象的なストーリーは人を惹き付けるちからがあるのだ。もしもNIKEが一般的なCMのように商品を広告したり価格はいくらだ、ディスカウントセールなどど広告をしてはブランドイメージは迷走する。
あなたも自分のビジネスを振り返って見て欲しい。ファンのなかにあなたがそのビジネスをはじめた理由を知る人はどれだけいるだろうか?その商品やサービスが生まれたエピソードを知る人はどれだけいるだろうか?社名の由来を知っている人はどれだけいるだろうか?あなたのビジネスにもオンリーワンのストーリーがある。それは必ずしもスケールが大きかったりドラマチックな展開でなくてもいい。大切なのは真実と人間味だ。
劇的な勝利や目標を達成する様子は格好良く映るが、気持ちの通っていない大袈裟なストーリーよりも、ちょっと変わっているが真実であり、劇的でなくとも感情の起伏が見えて、あなたのビジネスらしいストーリーがファンには共感されるだろう。素晴らしさとは栄光だけではない。もしも栄光だけが愛されるのならファンあなたのビジネスよりも大企業を愛するはずだ。あなたがするべきことは、ストーリーを掘り下げ、背景を抽出し、真実を印象的な言葉で表現し、オンラインで伝えることだ。
ストーリーでビジネスを印象付ける
キャンペーンチームの運営
キャンペーンには想像も付かないような大きな富を生み出すちからがある。素晴らしい顧客を惹きつけたり、一年分の顧客を獲得してビジネスに安定をもたらすこともある。私(筆者)が手がけたキャンペーンでは、クライアント企業の収入10年分をたった1ヶ月で生み出した例もある。
その大きさ故にキャンペーンそのものを優先しがちになるが、最大の資産は人であることを改めて付言しておこう。優先順位の最高位は「あなた自身」であり、次いで「チーム」、そして「キャンペーン」と続く。この優先順位を心に深く刻んでおこう。
まずはあなた自身を労い大切にしなければ、次のプロジェクトは生まれない。あなたよりもあなたのチームやチームメイトを優先してしまったら、そのチームはいつか崩壊する。あなたの存在よりも、あなたのチームよりもキャンペーンを優先したら、あなた自身も疲弊しチームのメンバーは脱退しビジネスの存続そのものが難しくなる。
まだ私が若い頃、何度もこの失敗をした。キャンペーンは大成功し、大きな富をもたらし、自社のブランド価値は高まったが、チームメイトは疲弊し仕事を共にすることが難しくなった。どれだけ成功したとしても、一年間の間に納税によってキャッシュはある程度リセットされる。経営において最も大切なのは、成功よりも存続させることなのだ。
自分を優先することが仲間を大切にすることになる
アフターパーティー
大きなキャンペーンのあとは、あなた自身とチームメンバーを労おう。パーティーをしてもいいし、オシャレなレストランに行ってもいい、旅行に行くのも良いだろう。すぐさま次のキャンペーンをはじめるのではなく、あなたとチームを労い、ファンにお礼を伝え、ひとときの休息を入れることも計画に含んでおくことだ。もしもコンテンツの提供まで自身で行う場合には、マーケティング後に小休止を含み、コンテンツ提供後に休暇期間を設けるようにすると良いだろう。
過度に集中して仕事を行うと、「働き続けなくてはいけない」という軽度の強迫観念に囚われることはしばしばある。必要以上にメールボックスを覗いたり、仕事に抜けはないかチェックをしたりしてしまう。この期間が長くなると健康上良くないので、適度に休暇を挟むことやキャンペーン終了後の余暇を設けることで、感覚を健全にリセットするようにしておこう。
素晴らしいキャンペーンを展開するためには、終わった後の楽しみも用意しておく
キャンペーンの分析と改善
キャンペーン全体が終了したら、チーム全員で改善点を洗い出そう。うまくいったことやうまくいかったかったこと、次回への学びなどを文書で残しておく。インサイトや数を参考にしたり、これまでのことを振り返ったりしながら、次回に向けてキャンペーンの改善点を洗い出しておこう。そのなかには、働き方や余暇などワークライフバランスも改善点に含まれる。
このプロセスは自社で行ってもいいし、例えばチームでの旅行先で行ってもいい。実際に、開放的な気分で反省会をしているときに、気分は高揚し次のキャンペーンの素晴らしいインスピレーションを感じることもあるものだ。
マイクロビジネスの利点であるクイックネスは仕事のみに留まらない。余暇の調整や働く場所、はたらきかたに至るまで、あなた自身やチームメイトの資質や性格に合わせて最適化できる点にもメリットがある。必ずしもずっとデスクに向かっていることが最大才能ではないのだ。大きな企業では全体最適のために規律を強いるが、マイクロビジネスの強みは柔軟さにある。次回のキャンペーンに向けてコンテンツやチームの最大才能点を目指していこう。
キャンペーン終了後には改善点をリストアップする
<この章のまとめ>
- キャンペーン内の数を測定し分析すれば次に活かす学びが見える
- 成果のなかから実績になる数値を取り出し、お礼と共に伝える
- ストーリーでビジネスを印象付ける
- 素晴らしいキャンペーンを展開するためには、終わった後の楽しみも用意しておく
- キャンペーン終了後には改善点をリストアップする