CHAPTER 14 チームビルディング

 

ここまでのプロセスを経てあなたの手元には、充分な顧客と充分な富、そして余暇が生まれたはずだ。一年分の顧客をすべて前払いで契約を結んだならば、本来1年中続けていたマーケティング活動の時間がどっさりと不要になる。代わりに必要なのは生まれた余暇をどのように有意義に過ごし、さらなるキャンペーンや企画に向けて足場を固めるかを考えることだろう。

つまりは働くことの意義が生活からビジネスブランドを築くことにナチュラルにシフトする。本来、ビジネスとはビジネスブランドをどのように築くかを考えるのが王道だが、マイクロビジネスの特にスタートアップ期には、資本的な余裕がないために長期的な視点を持ちにくい。それを本書では、集客期間を限定するという方法に特化することで解決している。ビジネスオーナーとして自然な感覚を手に入れたところで、これから目指すべきは真のオーナー視点であり、リーダーやカリスマとして素晴らしいチームの運営に取り掛かっていこう。

 

ライフスタイルのフェーズ

ビジネスの初期段階においては、必要な人材や必要なスキルを揃えながらの運営にならざるを得ない。反対にスキルを得てからビジネスをスタートしようとしても、実践のなかでしか本当に必要なものは結局わからないものだ。そうして知識の習得とサービスの提供を並行していく中で、徐々にスキルが身についてきてビジネスが安定する。

成果を出して時間を得たビジネスオーナーは一旦ビジネスから距離を起き、自分のライフスタイルについて見直すことになるだろう。生活していくために充分な時間と充分なキャッシュを手に入れたら人生の充実を考えるはずだ。多くの起業家やリーダを見るとそれらのステップは3段階に分かれている。

 

スキルアップ・能力充填期

ビジネスの運営や業界内知識の習得に邁進している。欠如しているスキルと向き合いながらも出来ることをはじめる。ここで停滞するビジネスオーナーがビジネス全体の8割を占める。ここで停滞する理由のほとんどは、運営やキャッシュフローが常に緊迫するがゆえに、スキルアップや自己研鑽に時間とお金が投じられないからだ。能力向上に務めるビジネスオーナーには次のステップが見えていて、反対に現状維持で気力が残っていなければ存続は難しくなっていく。誰しもが必ず通る道だが、充分なスキルと業界内知識の習得は早めに習得して次のステップに向かいたい。そのため通常業務をこなしながらも、現状に満足せず学ぶ気力と情熱を持ち続けることが重要だ。

ライフスタイル構築期

充分なスキルと業界内知識を持ち、キャンペーンでの運営に成功している。10人以下程度のチームを構成していて、好調なビジネスを運営して充分な収入を得ている。(チームのメンバーは雇用形態を問わず、ビジネスの仲間や助言をくれる友人、支えてくれる家族を含んで考えて構わない。)1ヶ月の3分の1ほどは人生を楽しむことに費やし、趣味や勉学など個人の可能性を追求したりする。世界中のどこにいてもビジネスを運営することができて、実際にそうしている人も多い。ビジネスとライフスタイルの距離感を模索するときだ。

成長・成績追求期

自分の人生を意義深いものにしようと使命感を感じ、ビジネスで好成績を出すことに情意を燃やす。自ら進んで長時間働き、自己管理やメンテナンスも怠らない。自己実現とビジネスの成功を結びつけて仕事に心血を注ぐ。大きなキャンペーンをしたあとには休暇を取り、英気を養ったらまたビジネスへと戻っていく。また、この成長・成績追求期に入る前には、必ずライフスタイル構築期を経て、人生と仕事との距離感をちょうどよくなるように自己調整しておく必要がある。

 

能力を習得しビジネスで成果を出そう。その暁には人生を充実させること。人生の充実なくして、ビジネスでの好成績に本当の心血を注ぐことは出来ない。

 

 

ビジネス運営に必要なスキル

本書を通じてお気付きだろうが、ビジネスの運営とは「商品・サービスの提供」だけに限らない。例えば「HPを制作しなければお客様は仕事の依頼が出来ない」ように、施術をするためには施術を運営するためのその他のビジネススキルも必要なのだ。至極当たり前のことだが、真面目でスキルのある施術者ほど、素晴らしい製品を生み出す人ほど、「素晴らしい商品とサービスがあれば顧客は集まるはずだ」とビジネス側に回った時に「待ち」を選んで待ちぼうけている起業家は実際多い。

ではどんなスキルがあればいいのか?ビジネスの運営に最低限必要なスキルや人材を下に列挙する。スタートアップ時期には、資金や人材の観点からビジネスオーナーが様々なポストを兼務せざるを得ないケースも多いが、ビジネスの成長とともにチームを構成し、長期的にはあなた自身の実働を減らしても問題ないように運営していこう。

 

影響力のあるキーパーソン

業界内で名前が知られていて、関係者への交渉力があり、本物の判断力を持っていてビジネス運営中核を理解している人物。メンターでも良いし、信頼できるコンサルタントでも良い。ビジネス的な判断力に優れている人物の助言を仰ぐ必要がある。事業の成長と成功に、この人物の存在が大きく影響する。

シナリオデザイン

マーケットの心情を理解し、キャンペーンに向けてファンの気持ちを先導する全体的なシナリオをデザインする能力が必要になる。例えば、発売日はいつか?何を発信するのか?何を伝えていくのか?それぞれの発信でファンはどんな気持ちに変化していくのか。などフリーコンテンツからバックコンテンツまでの内容、順番、日時などを計画立てる。

ITシステム

SNSやHPなどのフロントメディアやLINE@やメルマガなどのオウンドメディア、LPなどのクロージングページ、自社で運営するシステム等々、様々なITシステムへの理解が必要になる。もしも制作を依頼する場合にも概要をわかっていなければ成功は難しい。

セールスライティング

セールライティング(コピーライティング)と呼ばれる、言葉を選ぶ技術。JR東海が京都への旅行を促すために選んだ言葉は、ぜひ京都に旅行に来て下さいではなく、「そうだ 京都、行こう」だった。言葉には、喋ったときに映える言葉使いと、文面にしたときに映える言葉遣いがある。WEBで多くの発信をしていくには、すべての言葉がセールス・コピーライテイングの対象だ。言葉を洗練させ、どう表現すればファンの気持を動かせるかの洞察を深めよう。

商品・サービス(UI)

商品やサービスを企画・制作・提供をする。エステであれば施術であり、レストランであれば料理の提供にあたる。メインコンテンツであり、このプロセスが抜けていることはまず無いし、あなたが専門家なので、私(筆者)からあなたへ付言することはほとんどない。価値の向上に努め続け、より素晴らしい商品やサービスを開発、提供していこう。

商品・サービス提供と価値向上(UX)

商品やサービスの提供にあたり、顧客の心地良さを向上させたり、気持ちを安らげたり、感動を与えたりと、精神的価値の向上に務める能力。他社や別の業界のサービスを参考にしたり、広い世界観と心の教養が求められる。この部分は自身ではじめて、少しずつチームのメンバーに浸透させていくことになるだろう。旅行やバケーションの経験がサービス向上のヒントに繋がるケースも少なくない。そのためビジネスオーナーは様々な世界を見て回ることや、心の充実も仕事への影響範疇になる。

財務・法務・物流・諸管理

あなたのビジネスの諸管理を行う能力。税務や会計を行ったり、領収書や請求書を発行したりする会計士。新たなビジネスの際の法令や契約書の助言を求める法律家。社内の手続きを行う社労士、物流や在庫を管理する管理部門なども必要に応じて導入する。スタートアップ時には兼務する場合も多いがこの時間は売上を伸ばさないので早めに導入したい部分でもある。

 

大まかに言うならば、「商品・サービスの提供」以外に、「メンター」「システム・マーケティングへの理解」「会計や庶務を行う人材か能力」が必要だということだ。

「メンター」は一度でもあなたがビジネスで成功すれば必要ないが、はじめてのビジネスの場合は助言を仰ぐ人物がいた方が不要な失敗と時間を費やすことを回避できる。「システム・マーケティングへの理解」に本書が役立てばという気持ちでこの文章を書いているが、実際の現場での細かな経営判断やシステム構築は難しい局面もある。もしも身近に信頼できるマーケターがいれば助言を仰ぐのも良いだろう。だが最終判断はビジネスオーナーであるあなた自身で行いマーケティングも自身で運営できることを目指そう。「会計や庶務」は固定した一定の時間が必要になる。クリエイティビティは必要ないので事務的なことが得意な方や専門家に任せるようにしていこう。

 

成長には自分ひとりいれば充分だが成功にはチームが必要だ。

 

素晴らしいチームを運営する

素晴らしい成功を手にしたいならば、自分ひとりで何でもしようとするのではなく、チームで協力してプロジェクトの成功を目指していかなくてはならない。しかし、実際にチームを運営してみると、例えばチームの主要なメンバーが前日旦那と喧嘩をして機嫌が悪いとか、前夜にスポーツを頑張りすぎていて会議が眠いらしい、といった。至極個人的なことで、ビジネス全体の成績が影響を受けてしまうことになる。大きな企業では、これらをルールによって平均化し統率を取るが、マイクロビジネスのように個人によるところが大きいとき、結局は本人の機嫌が良くならないと仕事は進まない。

社長であるあなたにも気分の上下があるから、チームメンバーの感情の振れを否定してもしょうがない。マイクロビジネスの場合、必要なのはルールではなく文化だ。規律を強いるのではなく、やる気やモチベーションを高めること。それが結果的に、ビジネスの成果を高めるリーダーシップになる。高い成績を出すためのチーム運営の心掛けについて付言する。

 

明確なビジョンを共有する

ビジネス活動の意義を文章化して、チームで共有しよう。社会的にどんなことを成そうとしているのか?成績を追求することが誰のどんな役に立つのか?を説明する。そしてビジネスオーナーの理念がチームメンバーのひどく個人的な理由と結びついていて、チームメンバーが進んでビジネスを繁栄させたいと願っていて、モチベーションの核をメンバーそれぞれが持っていなければいけない。

事実にこだわる

ビジネスオーナーがチームメンバーの働き方に口を出していたら、いい成果は生まれない。やる気が見えないだとか、オーナーの感情的な評価がメンバーの才能の最高点を見出せなくするからだ。事実にこだわること。各セクションの結果の数値を分析して、対策を立てるようにしよう。どこがネックでどこが優れているのかは数値や具体的成果で判断する。また、機嫌や調子が悪くなったメンバーを罰するのではなく、調子が悪くなったらいつでも、オーナーがそのポストを兼任できるようにしておこう。働き方はメンバーの裁量であり、成果を担保するのはオーナーの責任なのだ。領域を曖昧にすると、不要な衝突を生む。メンバーへは口出しをするのではなく、モチベーションを高めて行動を促そう。いざというときには、兼務すれば良い。

キャッシュより資産を積み上げる

ビジネスの成果は、単回キャンペーンの売上だけでは測れるものではない。ビジネスの経験が浅い人ほど、例えば3ケ月間一生懸命に準備をしたからと、望んだ売上に到達していないことで落ち込んだりするが、成果とは売上だけではない。少人数でもキャンペーンで製品を購入してくれた人は次回のキャンペーンでも製品を購入してくれるかもしれない。購入に至らなかった人たちでも、LINE@やメルマガに登録した人たちが多数いれば、次回のキャンペーンでも購入の可能性がある。キャンペーンで制作したコンテンツも、HPで閲覧できるようにしたり、WordPressでまとめたりしておけば、ずっとオウンドメディアへの登録リストを増やし続けてくれるかもしれない。生み出した、資料、リーフレット、WEBサイト、動画コンテンツ、すべてが資産であり、最大限活かしていくこと。

必要なのはチームとクライアントの成功

ビジネスのファンは、ビジネスオーナーの個人的成功を願ってはいない。ファンはただサービスを受けて素晴らしい気持ちになったり、豊かになりたいだけだ。間違えやすいのだが、ビジネスオーナーがスポットライトを浴びる必要はないのだ。クライアントとチームのメンバーの成功に全力を尽くそう。そして彼らにスポットライトを当てて成功をサポートしよう。ビジネスオーナーが自身を誇示するよりも、メンバーをサポートしていたり、クライアントに尽くしているそのスタンスが愛されビジネスへの信頼に繋がる。

ビジネスに接した人は全員がパートナー

コンタクトを取ったすべての人に気遣いと、深い敬意を抱き、接していこう。あなたのビジネスの売上を成しているのは、「購入者」だが、その基盤を成しているのはたくさんのファンであり、好意的な接点を持ったすべての人たちだ。短期的な視点しか持てない経営者は購入者だけしか大切に出来ないが、優秀な経営者はファンがいなければ購入者もいないのだと理解している。購入に至った人も、購入に至らなかった人も、同様に敬意を持ち、全員があなたのビジネスと個人的成功の手助けをしてくれていることを忘れないようにしよう。

イノベーションに終わりはない

完璧な会社や完璧なシステムなどない。あなたのビジネス運営のすべてをより素晴らしいものになるように改善を続けよう。そしてあなた自身も成長やゴールなどない。研鑽を続けよう。素晴らしい商品とサービスを生み出し続けよう。時代は日々前に進む。他社も日々進化している。ビジネスにとって、停滞するということは現状維持ではない。止まっていることは、時代に相対して退化している。進化し続けて、普通であり。特別な成果を出してフォーカスされる。人とは元来成長し続けるものであり、会社もまた同様であることを理解しよう。

自社投資からはじめる

一流企業じゃ収入の5〜15%を社員のトレーニングや商品開発などに投資する。この法則はマイクロビジネスにおいても当てはまり、それが個人でも同様に当てはまる。長期的な視点を持つと、成長と能力向上が最優先なのだ。それをキャッシュにおいて表現したとき、資本の5〜15%を優先して学びや自身のチームのトレーニング、チームの打ち上げや研修など「成長のための費用」に当てて貯めておき、必要に応じてその投資口座から使うことだ。運営がギリギリだったり、自転車操業なビジネスからは「そんなことをしたら、来月の支払いが足りなくなる」と声が上がりそうだが、「たった5%で困るのなら、それが無くともどうせ足りないじゃないか」。自己・自社・チームへの投資からはじめるようにしよう。

 

リーダーの役割は関わるすべての人のモチベーションを高めること

 

プロジェクトの本質

SNSやスマートフォン、様々なIT技術の進化で、以前は複雑だったことが簡単に素早くできるようになり、たった一人でも会社の運営が出来てしまうほどに個人の領域と可能性は広がっている。そしてこの流れはこれからも加速するだろう。

そうすると以前は社員、顧客、サプライヤーと別れていた区画もその境界は曖昧になってくる。あなたの会社の営業担当は今月成約が0件だったとしても、あなたの製品の大ファンの主婦が1000人の友人に勧めるかもしれない。あなたチームのメンバーが別に推進しているプロジェクトが大成功すれば、あなたのビジネスのファンも増えるかもしれない。クライアントが秘書になってくれるかもしれないし、反対にこちらがクライアントになることもある。チームという概念は多様化している。社員だけがチームだというには少し古い。

キャンペーンやプロジェクトが難航したり規模が大きくなってくると、チーム内の雰囲気が厳しくなってくることもある。もしも難しい場面に遭遇しても、チームのメンバーを痛めつけたり、厳しくあたったり、ないがしろにしたりしないようにして欲しい。ビジネスを運営していれば、難しい局面のひとつやふたつは経験したことがあるだろうし、もしかしたらこれからそんな場面に出くわすこともあるかもしれない。だがそんな時、あなたのビジネスの成功を助けてきたのもファンであれば、あなたのビジネスの難局を救ものまたファンであり、チームのメンバーも明日にはファンかもしれないし、カスタマーになっているかもしれないのだ。

チームもカスタマーもファンも当然だが人間で、彼らには大切な家族があり、友人があり、あなたと同様に守りたい仕事もある。至極個人的なかけがえのない想い出も持っている。プロジェクトの大義はおおいに推進しよう。だがそれを成すのはひとりひとりの「人」であることを忘れてはいけない。

 

どんなプロジェクトも本質は「人」である

 

<この章のまとめ>

  • 能力を習得しビジネスで成果を出そう。その暁には人生を充実させること。人生の充実なくして、ビジネスでの好成績に本当の心血を注ぐことは出来ない。
  • 成長には自分ひとりいれば充分だが成功にはチームが必要だ。
  • リーダーの役割は関わるすべての人のモチベーションを高めること
  • どんなプロジェクトも本質は「人」である