ランニングをするというのは、誰に教えられるわけでなく、子供の頃から自然と出来る動きのひとつですが、大人になって再度ランニングをはじめようとすると、どうやって走れば良いのだろうかと感じることも、実際起こり得るものです。今回の記事では、「走る」という機能を効率的に復習するために、意識するポイントを紹介します。ぜひ、体感と合わせて活用頂けると効果の深いものになると思います。

ランニングはフォームを丁寧につくることから

私達は大人になって、早く走る機会が全くと言えるほどありません。トレーニングやスポーツを志さない限り日常生活で軽くジョギングをすることはあっても、ランニングやましてダッシュ、スプリントをする機会はない方がほとんどです。子供の頃は意識せずとも100m走が出来ていたのに、何故知性の高い私達大人の方が走るのが難しいのでしょうか。それは、日常生活において、しゃがんだり、しゃがんで立ったり、しゃがんだところから走ったりと、様々な動きをする機会がないために、関節の柔軟性や筋肉の反応が著しく落ちているからなのです。そのため、稼働する筋肉と稼働しにくい筋肉が生まれて、走るという機能をするにあたって、本来稼働するべき筋肉の反応が悪く、その働きを別の動かしやすい筋肉が兼ねる(代償動作)することによって走るので、ロスが大きく非常に疲れます。

例えば、大人になると、太ももの後ろ側にあるハムストリングスに比べて、太ももの前側にある大腿四頭筋が弱くなりがちです。すると、前に進む際に活用されるハムストリングスに対して、着足時にブレーキかける大腿四頭筋が充分に体重を支えられないために、この機能をハムストリングスでも兼ねようとします。すると、外から見て、慎重に走る人のように見える格好となっていて、無理に早く走ろうとすると、膝を痛める原因になってしまいます。ですので、ランニング初期の段階においては、ゆっくりでも構わないので、フォームを綺麗に丁寧に走るということが重要です。ゆっくり丁寧に動こうとすると、本来活動するべき筋肉が動くための時間が長く取れるので、刺激が行き渡りやすくなります。刺激が行き渡ると、段々と筋肉や神経の活動が活発になり、対象の筋肉を働かせる感覚が分かるとともに、日常生活の動きのなかから筋力が復活し、走るという機能を取り戻すことが出来ます。フォームを意識せず、筋肉の代償動作が大きいままにランニングをすると怪我のリスクが高くなるので、重ねてフォームの大切さを念押しさせて下さい。このフォームを丁寧につくり運動を行うというプロセスは、あらゆるトレーニングで出てくることなので、少しずつ慣れていきましょう。

早く走ろうとすると全身の筋肉が硬直してしまいがちです。身体が適切に動く際には、筋肉が伸び縮みする動きが不可欠で、適切なタイミングで伸び、適切なタイミングで縮むことが必要です。これに対して筋肉が硬直してしまうとうまく動けなくなるため、ランニング初期に特に大切なのは脱力の意識です。全身にちからが入っている状態から適切な部位を残してちからを抜いていくことは難しくまず無理なのですが、反対に脱力した状態から適切な箇所を意識して、ちからを入れていくことは可能です。早く走ろうとすると、この脱力と緊張の順が反対になってしまいうまく走れないので、ランニング初期では脱力して走ろうとすると習得が早いでしょう。また、その際のイメージとしてランニングをするという行為は、早く走ろうとするよりも、軽い連続ジャンプをする運動とイメージすると良いかもしれません。地面を強く蹴るのでなく、身体を軽く前傾させながら片足ずつ交互にジャンプをした結果前に進んでいると捉えてみて下さい。そうすると、適度にちからが抜けたまま、腕が自然と振れてくるので、理想的です。

また、ランニングをはじめる際に多くの方が「外を走る」ことからはじめますが、外のアスファルトは硬く関節に厳しいので、最初の頃は特にジムでのランニングマシンでのトレーニングをオススメします。慣れてくると感じることなのですが、地面からの反力をもらって活用する感覚はとても大切で、地面のコンディションが良いとそれだけで快調に走ることが出来たり、逆に硬いとトレーニングを積んでいてもうまく走れなかったりします。ここではさらにとした解説に留めますが、地面の反発は重要で、初期時にはジムでのランニングが身体に良いと覚えておいて下さい。一度怪我をしてしまうと、数ヶ月はランニングをストップする必要も出てくるので、運動初期には少し慎重なくらいが良いと思います。無理をして身体に悪いことはあっても、負荷が軽過ぎて困ることは何もありません。

上半身のブレを小さくする

ここからはフォームを作っていきましょう。まずは軽く走りながら、左右のブレを小さくします。ランニングという運動は、一瞬ですが着足の際に片足で体重を支えており、このとき身体の重心よりも外側に着足があるために、体重を上手に支えられない分だけ外側に上半身が倒れ、振り戻す際にはより大きなちからを必要とします。この左右の動きが大きいとロスが大きく、チカラが前に伝わらないので左右のブレを小さくする必要があるわけです。その練習のためには、走りながら「頭頂部」「鼻」「胸部中心」が一直線にキープされていることを確認しながら走ります。疲れて来ると上半身のブレに伴って頭頂部と鼻が傾いていくので、この垂直を一定に保ちながら走ります。

また、走るために腕を振ろうとするあまり、肩が上がってしまう方もいますので、走りながらも肩は適度に脱力して下げたままでいることも大切です。人間は驚いたり緊張したりすると、自然と肩があがります。つまり、余計なちからが入っていると肩があがりやすいので、頭頂部からの垂直キープをしたまま、足を動かして走りつつも、上半身は脱力するイメージが大切です。

どうしても上半身の左右のブレが大きいときには、腹筋と背筋の筋力が耐えきれていない可能性があるので、ご家庭でプランクやレッグレイズなどを取り入れると左右のブレが小さく安定していきます。

下半身のフォームを整える

次に下半身のフォームを考えます。まずは膝をあげる練習からやってみましょう。前腿が床と平行になるくらいまで膝をあげてみて下さい。この膝をあげるという動作は、主に腸腰筋の収縮と大腿四頭筋の収縮によって行われますが、大人になると腸腰筋の活動が弱まっている方も多く、ほとんど大腿直筋で膝を上にあげる方が初心者に多く見られます。このとき膝をあげようとすると意識は自然と膝の先端にあります。それに対して理想的な膝の上げ方としては、腸腰筋が優位にはたらいている状態で、このとき膝をあげようとすると意識は自然と股関節あたりの足の付根にあります。腸腰筋の関与をより大きく筋肉を収縮させた結果、膝が引き上がるイメージです。意識せずとも膝の先端から足の付根で膝を引き上げようとするには、繰り返し練習も必要なのですぐにどうこう効果が現れるものではありません。初期時にはあくまで意識だけですが、心掛けを続けていれば、自然とその部位の神経伝達が滑らかになり、感覚が分かるようになります。

次に少しランニングをしてみましょう。両方の膝はまっすぐと正面を向いて走れているでしょうか。どちらかの膝が一瞬外を向いて膝をねじるように走っていたり、左右で膝の高さが違っていたりしないでしょうか。これらは股関節の柔軟性や左右の可動域の違いによって、片方の膝が適切に動かせなくなっていると左右差となって現れ、その状態のままトレーニング負荷をあげていくと片側にだけ強い負荷がかかり怪我の原因になります。これらは股関節の柔軟トレーニングや、骨盤の歪みを整体等で調整することで改善することができるので、過去記事ストレッチと柔軟運動の記事を参考にして、股関節の可動域や柔軟性の向上につとめましょう。

着足についてはあなたがごく自然なように行うのが良いでしょう。それと言いますのも、人間の足はその構造上、足先が自然と逆ハの字で開いているために、着足を完全に正面に向けて一歩踏み出し着足させると、足を若干内にねじることになるからです。ですので、僕の場合足の中央は中指にくるのでなく、親指と人差し指のちょうど中心あたりを正面として着足させていますが、このあたりの繊細さは個人差があり、股関節の可動域のレベルによっても変わってくるので、一概にどの指を正面にと言えず、個人のフィーリングに合わせて考えるのが現実的です。また、着足の最初が踵着地か、足裏全体着地か、足先端着地か、どれがベストかも人それぞれなのですが、足先を先に着足させるのだけは膝に負担が大きいためおすすめしません。踵着地か足裏全体着地かのどちらかにすると良いでしょう。

また、ランニングをする際には必ずランニング用のシューズで行うようにしましょう。お手持ちの運動用の靴でランニングをされる方も多いのですが、ランニングというのは、一歩踏み出すごとに全身の体重を片足で受け続けることになるので、足裏で適切に体重を受けていないと身体の歪みが大きくなっていき、怪我の原因になったり、普段の姿勢が悪くなったりします。私たちは、ほとんどの活動を地面に立って行い、重力に対して適切にちからを受けることで、骨のバランスを美しく保っています。足裏のシューズの安定性はそのバランスに直結しているために、とても重要な美のポイントです。私(筆者)自身は、ランニングの際には、NIKEのインフィニティランシリーズを使っています。特にデザイン等にこだわりが無い場合や、最初にどれを選べばいいかと感じた際には、一度店頭で履いてみると良いでしょう。ランニングシューズにも、短距離のスピードを重視する軽量で幅の狭いタイプや、長距離を怪我なく走るためのクッション性が高く幅の広いタイプなど様々あって、この幅の狭いタイプを最初から選んでしまうと、初心者の方は捻挫をしてしまうことがしばしばあります。ランニング用のシューズのなかでも適正があるくらいなので、なんとない運動シューズでのランニングはあまり良いものでないと感覚を覚えておいて下さいませ。余談ですがNIKEのシューズは一年前のモデルだと定期的に半分程度の価格で売り出されています。トレーニングシューズはある程度、消耗品として考え、クッションが傷んできたり、表面の縫製が荒れてきたときには、無理に履き続けず買い替えたほうが安全なので、あまり長期的に考えずにある程度で交換することを考えて購入すると気楽です。

うまく走れないときには?

ゆっくりと走るとある程度、理想的なフォームで走ることが出来るので、まずはゆっくりと走ることから練習することをオススメしますが、それでもなんだか違和感があったり、過度に疲れていたり、うまく走れない感覚がある際には、何か別の原因がある可能性があります。ここではよくあるパターンと対処法をいくつかご紹介するので、もし当てはまるようでしたらご参考下さい。

すぐに行き苦しくなる。とても辛く感じる

首が前に出ていたり、肩が内旋していたり、普段の姿勢が猫背気味になりがちな方は、脊柱のアーチが強い傾向にあって、その場合胸部の肋骨あたりの開閉の動きがスムーズに行われにくくなり、すぐに息苦しくなることがあります。これは体力の問題でなく、普段の姿勢が関与しているので、ストレッチや柔軟運動をより濃く行ってみましょう。特にそういった場合には、肩が凝りやすかったり、肩甲骨周りが硬くなりがちなので、最終的には全身行いますが、特に上半身の柔軟運動を重点的に行うと体感としてもかなり楽になるはずです。

足が重く、足がついて来ない感覚がある

体感よりも足の回転が遅れてやって来る方は、アキレス腱の弾性力が弱くなっている可能性があります。アキレス腱は人体最大の腱でありゴムのように反発して伸び縮みすることで、私たちの走る動作を大きく支えています。このアキレス腱は使うほどに強くなり、使わなければ弱くなっていくので、久しく運動をされた方ではアキレス腱の弾性が弱くなっている可能性があります。この弾性を復活させるには、小ジャンプトレーニングが有効です。立っている状態から軽く膝を曲げて、主に足首をちからを使って縄跳びを飛ぶように連続ジャンプします。最初は無理のない範囲で10回3セット程度行いましょう。要するに、縄跳びを10回飛ぶ動作をするだけなので、ほんの数秒で終わってしまうのですが、最初はそのくらいで充分です。一日最大でも3セットまでとして、慣れてきたら20回、30回と増やしていき、100回出来る頃には、アキレス腱の弾性はかなり戻っているでしょう。また、この小ジャンプトレーニングをしたあとには、軽く食事をしたりバナナを食べたりして、使用したアキレス腱に栄養を送ってあげて下さい。トレーニングをしたあとは食事をしてより強くなるための栄養を送ること、それまでが1セットであることが大切で、食事を疎かにすると疲労や小さな痛みが蓄積して怪我の原因になるので、食事のケアはお忘れなきように。

膝や足首など、関節が心配になる

私たちの人体はとても精密にできていて、関節に耐えうる以上の負荷がかかる動きをしようとすると、怖いと感じたり、嫌な感じを覚えるように出来ています。この感覚はとても重要なので大切にされて下さい。走りに不安がある場合には、走るという動きを分解して考えると良いでしょう。まずは、片足を膝と床が平行になるくらいまであげてみて下さい。このとき、スムーズにバランスが取れているでしょうか。そしてそのとき、軸足になっている足は本来、ふくらはぎから内側広筋、内転筋と本来足の主に内側半分で体重を支えています。このとき内側で支えきれないと、外側のちからを必要として、関節への負荷が大きくなります。

膝に不安を感じる方は、ヒップアブダクションなどの内転筋のトレーニングやレッグエクステンションなどの内側広筋のトレーニングをすると良いでしょう。足首に不安を感じる方は、カーフレイズなどのふくらはぎのトレーニングをすると、動作が安定して走ることが出来るようになります。

トレーニングをすると太くならないか心配

よく言われる悩みですが、トレーニングによって身体が太くなることは心配しなくても大丈夫です。トレーニングをすると、脂肪が燃焼されて筋肉へと変換されますが、脂肪と筋肉では体積が1:0.8と筋肉のほうが小さいため、トレーニングをして体脂肪が20%前後まで減少するにつれて身体は細く引き締まっていきます。逆に言えば、その体積比を超えて大きくするためには、オーバーカロリーを心掛けて体重を増やし、並々ならぬ食事とトレーニングを経てようやくほんの1ミリか1ミリ以下程度ずつ大きくなるよう努力が必要です。

まとめ

ランニングはフォームをつくることから

ランニングは適度な脱力が大切

ランニング時に上半身のブレを小さくする

ランニング時の下半身を有効に使うには少しずつ練習を

上手く出来ないときには、動作を分解して考える

最終的に自分のフィーリングも大切にする